横手の人手不足を考えるとき、「若者が少ない」という説明だけでは足りない。
2020年国勢調査をもとに横手市が整理した就業者44,009人のうち、60歳以上は14,890人だった。
構成比は33.8%。約3人に1人になる。
一方、15〜29歳は3,889人、8.8%だった。
この年齢差は、今後10年、20年で大量の仕事を誰かへ引き継ぐ必要があることを示している。
2020年時点で60歳以上が14,890人
年齢別の就業者構成は次のとおり。
| 年齢 | 就業者数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 15〜29歳 | 3,889人 | 8.8% |
| 30〜39歳 | 6,930人 | 15.7% |
| 40〜49歳 | 9,227人 | 21.0% |
| 50〜59歳 | 9,073人 | 20.6% |
| 60歳以上 | 14,890人 | 33.8% |
この数字は2020年時点であり、2026年の現在値ではない。
ただ、2020年に60歳だった人は2026年には66歳、65歳だった人は71歳になっている。
同じ人が全員退職したわけではないが、当時60歳以上だった大きな層が今後も同じ人数で働き続ける前提は置けない。
問題は人数だけでなく、その人しかできない仕事があること
地域企業では、仕事が職務記述書どおりに分解されていないことがある。
例えば一人のベテランが、
- 顧客との関係
- 見積り
- 原価感覚
- 現場判断
- 機械の癖
- 行政との手続き
- 有資格者としての配置
- 若手への指示
をまとめて担っている場合がある。
この人が退職したとき、1人採用すれば元に戻るとは限らない。
人数不足と技能継承不足は別の問題である。
地元就職する若手には、かなり重い機会でもある
20代で横手の会社に入ると、年齢構成によっては数年で中堅側へ移る。
これは、
- 早く責任ある仕事を任される
- 顧客を引き継ぐ
- 資格取得後すぐ配置上重要になる
- 管理職候補になる
- 事業承継候補になる
という機会につながる可能性がある。
一方で、
- 教える人が退職する
- 若手が補充されない
- 一人あたりの仕事が増える
- 役職だけ上がって権限や給与が伴わない
というリスクもある。
「若手が少ない会社だから出世しやすい」と単純には言えない。
就職前に年齢構成を聞いていい
求人票には会社の年齢構成がほとんど出ない。
しかし地方で10年以上働く前提なら、面接や会社説明会で、
- 従業員の平均年齢
- 20代・30代は何人いるか
- 50代・60代は何人いるか
- 管理職の年齢
- 有資格者の年齢
- 定年後再雇用者への依存度
- 5年以内に退職予定の人が多い部署
を確認する意味は大きい。
会社側が答えられない、または年齢構成を把握していないこと自体も一つの情報になる。
「ベテランが多い」は安心材料にも危険信号にもなる
経験者が多い会社には技術蓄積がある。
一方、その技術が文書化・標準化されておらず、若手が横で見て覚えるだけなら、退職と同時に消える可能性がある。
見るべきなのはベテラン人数より、
- 作業手順を標準化しているか
- 写真・図面・履歴を残しているか
- 見積り根拠を共有しているか
- 顧客情報を個人だけが持っていないか
- 複数人が同じ資格を持っているか
- 若手が実際に担当を持っているか
になる。
技能継承の仕組みがある会社なら、高齢化は世代交代の機会になる。
仕組みがなければ、退職者が出るたびに事業能力が落ちる。
地場経営者は「採用人数」だけでは足りない
人口減少下で採用が難しいと、経営者は求人を出すことに意識が向きやすい。
しかし本当に必要なのは、今後10年で失われる役割を棚卸しすることになる。
例えば、
| 役割 | 現在担当 | 10年後 | 引継ぎ候補 |
|---|---|---|---|
| 現場責任者 | 58歳 | 68歳 | 未定 |
| 見積り | 社長のみ | 引退予定 | 未定 |
| 資格A | 62歳1名 | 72歳 | 30代1名育成中 |
| 顧客対応 | 55歳 | 65歳 | 40代へ移管 |
のように置く。
これをすると、「3人採用したい」より具体的に、何をいつ引き継ぐ必要があるか分かる。
事業承継は社長だけの話ではない
横手市は事業承継の相談対象として、親族内承継、役員・従業員承継、第三者承継、M&Aなどを扱っている。
会社の代表者が交代しても、現場の中核人材まで同時に退職すれば事業は維持しにくい。
逆に、経営者に後継者がいなくても、社内に仕事を理解する人が育っていれば従業員承継や第三者承継の可能性を作りやすい。
経営承継と技能承継は別々に設計する必要がある。
インフラ系では「人が減っても仕事が残る」ため、継承失敗の影響が大きい
横手では道路、除雪、水道、下水道、ごみ収集など、人口が減っても一定量を維持しなければならない仕事がある。
こうした業種で熟練者が減り、若手が育っていなければ、需要がなくなる前に供給能力がなくなる可能性がある。
これは地元就職者には仕事需要が残る可能性であり、地域側にはサービス供給リスクでもある。
同じ現象を立場によって違って見る必要がある。
AIやDXは「人がいらなくなる」より、継承できる形にする用途が先に効く
人口減少下の企業でデジタル化を考えるとき、最初から完全自動化を目指す必要はない。
例えば、
- 点検履歴を紙から検索可能にする
- 過去見積りを再利用できるようにする
- 顧客対応履歴を共有する
- 写真から設備状態を追えるようにする
- 手順書を更新しやすくする
- 配車や日程調整を標準化する
だけでも、特定のベテランに閉じていた知識を次の人へ渡しやすくなる。
AIはその蓄積を検索・要約する補助に使える。
ただし、現場判断や資格責任までAIが代替できると先に決めない。
2030年代には「退職者数」より「引継ぎ済み役割」を追いたい
このサイトでは今後、地域全体で次を追う。
- 就業者年齢構成
- 産業別就業者年齢
- 60歳以上就業者比率
- 新規学卒者の地元就職
- 求人・求職
- 事業所数
- 休廃業
- 事業承継支援
- 有資格者不足
企業単位では公開情報が少ないため、個社の年齢構成を推測して掲載しない。
その代わり、業種単位で「どの仕事に若手が入っていないか」を見たい。
2020年の数字を2026年の現在値とは言わない
33.8%という比率は2020年国勢調査ベースである。
2026年時点では6年たっているため、現在の就業者年齢構成は変わっている。
2025年国勢調査の詳細結果が利用できるようになったら更新する。
ただし、2020年に就業者の3分の1が60歳以上だったという事実だけでも、2020年代後半から2030年代に技能継承が重要になることを考える十分な理由にはなる。
地元就職の判断で見るもの
会社を選ぶとき、「平均年齢が若い方がいい」「高齢者が多い会社は危険」という単純な採点はしない。
見るべきなのは、
今いる人が退職した後、自分に何が引き継がれ、その仕事を続けられる会社になっているか。
横手で長く働くなら、この問いは給与表と同じくらい重要になる。
Sources
yokote-commerce-industry-plan-r8-r12: 横手市「第2次横手市商工業振興計画」yokote-business-succession-desk-r8: 横手市「事業承継の相談窓口」yokote-commerce-policy-r7-result: 横手市「令和7年度 商工観光部商工労働課の方針書」akita-labor-employment-r8-07: 秋田労働局「秋田県内の雇用情勢(令和8年7月)」