横手市の人口は減っている。
それでも、介護を必要とする人が人口と同じ速度で減るとは限らない。
横手市の第9期介護保険事業計画では、総人口と65歳以上人口はいずれも長期的に減少する一方、85歳以上人口は2040年まで増加傾向で推移する見込みとされている。
2023年の要介護認定者6,967人のうち、85歳以上は4,450人。全体の63.9%を占めた。
人口減少と介護需要は、同じ曲線では動かない。
2040年、高齢者1人に対する生産年齢人口は1.0人の見通し
第9期計画に掲載された将来推計では、横手市の人口は2025年78,878人、2030年72,129人、2040年59,708人と減る。
同じ推計で、生産年齢人口は2025年38,649人から2040年27,466人まで減る。
65歳以上人口も33,191人から27,937人へ減る見通しだが、人口構造はより高齢側へ移る。
市の計画は、2040年には高齢者1人を支える生産年齢人口が1.0人になる見通しとしている。
ここでいう「支える」は、1人の現役世代が1人の高齢者を直接介護するという意味ではない。人口構成を示す比率であり、家族介護や介護職員数を直接表すものではない。
それでも、働く世代が減る一方で高齢者向けサービスを維持する地域構造を考える基準にはなる。
85歳以上人口は2040年まで増える見込み
人口全体が減る中で特に重要なのが85歳以上人口だ。
第9期計画では次のように推計している。
| 年 | 65歳以上人口 | 85歳以上人口 | 85歳以上割合 |
|---|---|---|---|
| 2025 | 33,191人 | 7,360人 | 9.3% |
| 2030 | 31,548人 | 6,822人 | 9.5% |
| 2035 | 29,499人 | 7,689人 | 11.7% |
| 2040 | 27,937人 | 8,585人 | 14.4% |
65歳以上人口全体は減っても、85歳以上は2040年に8,585人まで増える見込みになっている。
年齢が高くなるほど全員が介護を必要とするわけではない。
ただ、2023年の要介護認定者を見ると、認定者の約64%が85歳以上だった。
したがって「高齢者人口も減るから介護需要もすぐ減る」とは置けない。
2023年の要介護認定者は6,967人
第9期計画では、第1号被保険者の要介護認定者数を次のように整理している。
2018年以降は増加傾向で、2021年に7,011人、2022年に6,959人、2023年に6,967人だった。
2023年の認定率は20.8%。
計画は今後も推移を注視し、サービス利用の動向を分析する必要があるとしている。
人口8万人弱の市で約7千人が要介護認定を受けているという数字は、介護が一部の家庭だけの問題ではないことを示す。
地元就職者には「自分が介護職になるか」以外にも関係する
介護の問題は、介護業界へ就職する人だけの話ではない。
2026年に25歳の人は2040年に39歳、2050年に49歳になる。
この時期には、自分の親や配偶者の親に介護が必要になる人も増える。
横手市は事業主向けの案内で、少子高齢化と労働人口減少に直面する中、仕事と家族介護を両立する人が増え、介護離職は企業活動の継続にもリスクになると説明している。
特に地元の中小企業では、一人の中核社員が介護で勤務時間を減らしたり退職したりする影響が大きくなりやすい。
会社選びでは給与や休日だけでなく、将来的には次も労働条件になる。
- 介護休業・介護休暇を実際に使えるか
- 時間単位の休暇や短時間勤務があるか
- 突発的な通院・介護へ対応できるか
- 転勤や長時間通勤を必要としないか
- 在宅勤務できる業務か
制度が就業規則にあることと、実際に利用しやすいことも別に確認する必要がある。
介護は「需要が残る仕事」だが、人手不足も同時にある
地元就職の観点では、介護・福祉は人口減少下でも需要が残りやすい分野に見える。
横手市は2026年時点でも多数の介護保険サービス事業所を一覧で管理しており、休止事業所を除いた現行の供給体制を公開している。
一方、市は介護現場の生産性向上施策について、人材不足解消と労働負担軽減のために必要不可欠と説明している。
つまり「高齢者がいるから介護職は安泰」と単純には言えない。
仕事が必要でも、職員を確保できなければ一人あたりの負担が重くなる。人手不足への対応として、業務分担、ICT、介護機器、職場環境改善などが必要になる。
地元就職者が介護職を選ぶなら、求人の有無だけでなく、次を見る必要がある。
- 職員配置
- 夜勤回数
- 離職
- 資格取得支援
- ICT・介護機器
- 処遇改善
- 法人内での異動・昇進先
- 周辺地域にも転職先があるか
経営者には、従業員の介護も人材戦略になる
地場経営者にとって介護は、介護事業者だけの経営課題ではない。
従業員の年齢が上がれば、親の介護を抱える社員も増える。
人口減少で採用が難しい地域では、中核社員が介護離職した後に同じ人材を採り直せるとは限らない。
介護休暇や柔軟勤務を「福利厚生」としてだけ見るより、既存社員を失わないための事業継続策として見る必要がある。
横手市自身も事業主向け案内で、ワーキングケアラーの問題を企業活動のリスクとして扱っている。
移住者は「施設数」より、自分が使えるサービスの組み合わせを見る
横手へ移住するとき、病院や介護施設の数だけを調べても老後の生活は分からない。
介護は、在宅サービス、施設サービス、家族支援、医療、交通を組み合わせて使う。
第9期計画でも、可能な限り住み慣れた地域で自立した日常生活を続けるための地域包括ケアシステムを中心に置いている。
高齢期に確認すべきなのは、例えば次だ。
- 訪問介護・訪問看護が自宅地域まで来られるか
- 通所サービスへ送迎できるか
- 医療機関へ通えるか
- ケアマネジャーを確保できるか
- 施設入所が必要な場合に選択肢があるか
- 家族が近くにいなくても生活を維持できるか
同じ横手市でも、中心部と周辺地域ではサービスへの距離が異なる可能性がある。
50年先では、介護施設の名前ではなく供給能力を追う
2070年に現在の事業所名が残っているかを予測することはしない。
また、2040年以降の介護需要を第9期計画だけから直線的に延長しない。
追うべきなのは、次のような変数だ。
- 75歳以上・85歳以上人口
- 要介護認定者数・認定率
- 介護サービス利用者数
- 介護事業所数
- 介護職員数
- 求人・離職
- 介護保険料
- 在宅と施設の利用構成
- 医療・介護連携
- ICT・省人化の導入
特に2040年までは、人口全体の減少と85歳以上人口の増加が同時に進む見込みなので、人口総数だけでは需要を判断しない。
現時点で分からないこと
この記事で使う将来人口は第9期計画策定時の推計であり、その後の実績や次期計画で更新される可能性がある。
2026年現在の介護職員総数、離職率、職種別の不足人数はこの記事では確認できていない。
また「介護事業所が存在する」ことと「必要な時に希望するサービスを利用できる」ことは同じではない。
次は、介護職の求人・賃金、事業所の増減、第10期計画への更新、医療機関の担い手を追う。
Sources
yokote-care-plan-r6-r8: 横手市「第9期介護保険事業計画・高齢者福祉計画」yokote-care-providers-r8-07: 横手市「介護保険のサービス事業所一覧」yokote-care-productivity-r8: 横手市「介護保険サービス事業所等の生産性向上の取り組み」yokote-working-carers: 横手市「事業主の方へ 介護休暇制度の整備について」yokote-population-vision: 横手市「横手市人口ビジョン」