人口が減るなら、市役所の職員も同じ割合で減らせば行政コストを下げられる。

数字だけを見るとそう考えやすい。

横手市は実際、市町村合併後から長期間にわたって職員数を減らしてきた。

第4次定員適正化計画では、消防・病院を除く対象職員が2006年度の1,381人から2025年度の840人へ減少したとしている。541人、約39%の減少になる。

ところが、新しい2026年度から2030年度の計画では、840人から835人への5人減だけを目標にした。

これまでと比べると、削減幅はかなり小さい。

市は「単なる削減を目的」とする運用から、業務量に見合う必要人員の確保・配分を重視する方針へ移している。

合併後、対象職員は1,381人から840人へ減った

横手市の定員適正化計画で対象となる職員数は、消防・病院部門を除く一般職の常勤職員を中心に集計されている。

計画上の実績は次のように減ってきた。

時点対象職員数
2006年度1,381人
2014年度1,083人
2015年度1,041人
2020年度910人
2021年度893人
2025年度840人

第1次計画で298人、第2次で131人、第3次で53人を削減した。

手法には、組織再編だけでなく、保育所民営化、施設譲渡、指定管理、退職者補充の抑制、RPA、再任用・会計年度任用職員の活用などが含まれている。

「公務員が減った」という数字の中には、業務自体が消えた場合だけでなく、民間や別の雇用形態へ担い手が移った場合もある。

第4次計画は5年間で840人から835人

2026年3月に策定された第4次定員適正化計画は、2026年度から2030年度までを対象とする。

基準職員数は2025年4月1日の840人。

2030年4月1日の目標は835人。

5年間で5人、約0.6%の減少にとどまる。

第3次計画では2021年度893人から2025年度840人まで53人減ったので、削減ペースは大きく変わる。

市は、財政面から会計年度任用職員を含む人員増加は困難としつつも、これまでのように職員削減そのものへ重点を置かず、業務量に見合った必要人員を確保・配分するとしている。

人口減少だけを理由に職員数を機械的に減らす段階ではないという判断が読み取れる。

人口が減っても行政需要は同じ割合で減らない

市が挙げている行政環境は、むしろ複雑になっている。

  • 少子高齢化
  • 生産年齢人口減少
  • 自然災害
  • 感染症
  • 制度改正
  • デジタル化
  • 市民ニーズの多様化
  • 専門人材確保

人口が1割減ったから申請書の種類も1割減る、道路点検も1割減る、災害対応も1割減る、という関係ではない。

このサイトで見てきた道路、水道、除雪などと同じ構造が行政組織にもある。

住民数は減っても、自治体として処理しなければならない制度や地理的な管理対象がそのまま残ることがある。

横手市は類似団体より職員が多いが、市自身も単純比較を否定している

第4次計画では、2024年4月1日時点の人口1万人あたり職員数を類似団体と比較している。

普通会計では、類似団体平均87.10人に対し横手市107.33人。

一般行政部門では、平均67.57人に対し横手市74.22人だった。

数字だけなら「横手市は職員が多すぎる」と読める。

しかし市の計画自身が、豪雪、面積、出先機関、直営施設の割合、民間委託の範囲など前提条件が異なるため、人口当たり職員数だけで適正人数を判断できないとしている。

横手市は消防を単独運営していることも、普通会計の職員数・人件費が高く見える一因になる。

この考え方は地方の行政コストを見るときに重要だ。

人口密度や地理条件を無視して「住民1万人あたり何人」だけで効率性を決めることはできない。

正規職員を減らしても、仕事をする人が同じだけ減ったとは限らない

第4次計画では、会計年度任用職員も市の業務量を実質的に支える人的資源として扱っている。

2025年度の会計年度任用職員は1,080人。

対象常勤職員840人より多い。

ただし、両者を単純に足して「市役所には1,920人いる」と評価するのも適切ではない。

会計年度任用職員は全てパートタイム運用とされ、勤務時間や業務内容が常勤職員とは異なるためだ。

重要なのは、正規職員数だけでは行政を支える実際の労働投入を把握できないことだ。

市は、これまで正規職員数を増やさず、増加する事務量を会計年度任用職員で対応してきた結果、その比率が高くなったと説明している。

今後は委託やデジタル化を進め、長期的には会計年度任用職員比率も下げる方針としている。

市役所自身も高齢化している

2025年度の対象職員840人のうち、50〜54歳は203人、55〜59歳は151人、60歳以上は57人だった。

50歳以上だけで411人、ほぼ半数になる。

一方、20歳未満〜34歳の構成比は2006年度28.1%から2025年度19.3%へ低下した。

横手市は、採用を急激に抑えると年齢構成の歪みや知識・技術継承の断絶を招くと明記している。

これは地場企業と同じ問題だ。

人を減らせるかだけでなく、次の世代へ仕事を引き継げるかが制約になる。

地元就職者には、市役所も一つの地場雇用市場になる

地方で働く場所を考えるとき、公務員は民間企業とは別枠に見えやすい。

しかし地域の若年労働力という意味では同じ母集団から人を採る。

横手市自身が、職員採用試験の応募者減少、内定辞退増加、専門人材確保の難しさを課題として挙げている。

市役所、医療、介護、建設、製造、小売などが、減少する若年層を同時に採用しようとすることになる。

地元就職者にとっては、人手不足による採用機会が増える側面がある一方、入った後の職場で人員が十分補充されるとは限らない。

求人があることと、余裕のある人員配置で働けることは別だ。

地場企業には行政の外部化が仕事になる可能性がある

第4次計画は、限られた人員・財源で行政需要に対応するため、民間事業者等への業務委託を進める方針も示している。

行政職員を増やせない場合、専門性や作業能力を地域企業へ外部化する余地が出る。

一方で、委託なら何でも安くなるとは限らない。

市も、住民サービスの継続性、情報管理、直営側の基礎対応力を維持する必要があるとしている。

地場企業にとっては、行政DX、施設管理、調査、窓口支援などが市場になる可能性があるが、市に発注能力と予算がなければ成立しない。

行政の縮小は、民間市場への単純な移転ではない。

AI・デジタル化は「職員をゼロにする」計画ではない

第4次計画はデジタル技術による手続・審査・内部事務の見直し、定型作業削減を掲げている。

目的は、職員がより付加価値の高い業務へ力を使えるようにすることとされている。

現時点の公式計画から「AIで市職員を大量削減する」と読む根拠はない。

むしろ2030年度までの常勤目標が840人から835人とほぼ横ばいであることから、少なくとも第4次計画期間では、デジタル化を大幅な人員削減の前提にはしていない。

将来AIが行政事務をどこまで代替するかは、実際に導入された業務と効果を追う。

2070年人口2.9万人でも835人必要とは限らない

第4次計画は2030年度までの計画であり、2070年の職員数を示していない。

現在の835人という目標を50年先へ固定することもしない。

逆に、人口減少率と同じ比率で職員を減らす推計もしない。

50年先まで追うべきなのは、次の変数だ。

  • 常勤職員数
  • 会計年度任用職員数と勤務量
  • 年齢構成
  • 採用応募者・採用者・辞退
  • 専門職の欠員
  • 業務委託範囲
  • デジタル化で削減された作業時間
  • 地域局など拠点数
  • 人件費
  • 市民サービスの処理時間・アクセス

職員数を減らせたかではなく、少ない人口と財源で必要な機能を維持できているかを見る。

現時点で分からないこと

840人という職員数には消防・病院部門が含まれず、会計年度任用職員も含まれない。

行政全体の人的コストを評価するには、部門別人件費、委託費、会計年度任用職員の勤務時間まで合わせて見る必要がある。

また類似団体比較は行政効率を直接測る指標ではない。

次は、採用応募者数、専門職採用、行政DXの実績、地域局再編を追う。

Sources

  • yokote-staffing-plan-r8-r12: 横手市「第4次横手市定員適正化計画」
  • yokote-staffing-transition-r7: 横手市「職員数の推移について」
  • yokote-population-vision: 横手市「横手市人口ビジョン」