横手市には自主防災組織がある。

それだけでは地域防災の実態は分からない。

2025年4月時点の横手市地域防災計画資料編を見ると、自主防災組織、火災予防組合、その他の地域防災組織がカバーする世帯の割合は、市全体で46.5%だった。

しかも8地域の差が大きい。

山内は100%、平鹿は88.9%なのに対し、横手地域は13.0%、大雄は9.7%。

同じ市内でも、地域防災を支える組織構造はかなり違う。

市全体では33,763世帯のうち15,650世帯

横手市地域防災計画資料編の「自主防災組織の状況」では、2025年4月現在について次のように整理されている。

  • 市全体の世帯数: 33,763世帯
  • 自主防災組織: 26組織、2,347世帯
  • 火災予防組合: 89組織、13,288世帯
  • その他: 1組織、96世帯
  • 合計: 15,650世帯
  • 組織率: 46.5%

ここで46.5%を「自主防災組織率」とだけ呼ぶと不正確になる。

自主防災組織だけでなく、火災予防組合等を合算した地域防災組織の世帯カバー率だからだ。

8地域で差が大きい

同じ資料の地域別組織率は次のとおり。

地域組織率
横手13.0%
増田81.2%
平鹿88.9%
雄物川88.3%
大森86.8%
十文字55.5%
山内100%
大雄9.7%

大森・山内には自主防災組織と火災予防組合の重複があるという注記もある。

そのため、この表から単純に「山内が最も防災力が高い」「大雄が最も弱い」とは言えない。

組織の活動頻度、人数、訓練、資機材、年齢構成、消防団との役割分担まで見なければ実力は分からない。

ただし、制度上のカバー構造に大きな地域差があることは分かる。

横手地域の13%を「無防備な87%」とは読まない

地域防災は自主防災組織等だけで行うものではない。

消防本部、消防団、市、警察、家族、町内会、事業所なども関わる。

地域防災組織へ入っていない世帯が防災活動を全くしていないとも言えない。

したがって、13.0%という数字から「横手地域の87%は防災できない」と結論づけない。

重要なのは、地域ごとに防災の担い方が違う理由を追うことである。

小さな地域ほど組織化しやすいとは限らない

山内は1,129世帯で組織率100%。

一方、大雄は1,530世帯で9.7%。

単純に「人口が少ない地域ほど結束が強く組織率が高い」という説明もできない。

歴史的な火災予防組合の有無、町内会構造、消防団、地域の制度運用などが影響している可能性がある。

この原因は現時点の記事では断定しない。

今後、各地域の組織数の推移や地区会議との関係を確認する必要がある。

防災計画は住民参加を前提にしている

2026年3月修正の横手市地域防災計画は、行政や消防だけでなく、自主防災組織等の地域コミュニティ、企業、市民の連携を防災の前提にしている。

災害時の初期消火、避難、安否確認などでは、行政が全世帯へ同時に到達することは難しい。

特に豪雪、洪水、土砂災害、地震などで道路が寸断されれば、近隣住民による初動の意味は大きくなる。

人口減少下では、その初動を担う人の数そのものが減る。

高齢者の避難支援にも地域組織が入る

横手市の避難行動要支援者名簿は、情報共有先として自主防災組織、組織がない町内会等、消防団、民生委員などを位置付けている。

つまり地域防災組織は、消火や避難訓練だけの話ではない。

高齢者や障害者など、自力避難が難しい住民の支援にも関係する。

一方、市は支援が必ず実施されることを保証するものではないとも明記する。

支える側の人数や安全にも限界があるからだ。

2050年は「組織率100%」を目標にすれば済む話ではない

人口が減る地域で、すべての町内会に独立した防災組織を置き続けることが合理的とは限らない。

役員や訓練参加者を確保できなければ、名目だけの組織になる可能性もある。

将来は、

  • 複数町内会の共同組織
  • 地区会議単位の広域化
  • 消防団との統合的運用
  • 企業・福祉事業者との連携
  • デジタル連絡網

などへ変わる可能性がある。

制度名称を予測するのではなく、必要な初動機能を何人で担えるかを見る必要がある。

地元就職者には居住地域選びの材料になる

住宅を選ぶとき、ハザードマップは見る。

しかし、災害時に近隣で誰が動くのかまでは不動産情報に出にくい。

長く住むなら、

  • 自主防災組織・火災予防組合の有無
  • 防災訓練の頻度
  • 消防団との関係
  • 高齢者世帯の比率
  • 避難所までの距離
  • 冬季の避難経路

なども生活条件になる。

地場経営者にはBCPの外側で効く

企業がBCPを作っていても、従業員の自宅地域が被災すれば出勤できない。

社員が消防団や自主防災へ参加していれば、災害時には会社より地域活動を優先する場面もある。

地域防災力は企業の操業継続とも切り離せない。

会社単体の備蓄や発電機だけでなく、従業員が住む地域の復旧力も見る必要がある。

まずは組織率の時系列を取りたい

2025年4月の断面は取れた。

次に必要なのは、

  • 過去10年の組織率
  • 組織数
  • カバー世帯数
  • 地域別変化
  • 実際の訓練数
  • 組織の統合・解散

である。

人口が減る中で組織率が上がっているのか、下がっているのか。

世帯数が減ったことで見かけ上の率が変わっていないか。

ここまで追って初めて、防災の担い手再編が見える。

Sources

  • yokote-community-disaster-org-r7-04: 横手市「横手市地域防災計画 資料編 自主防災組織の状況」
  • yokote-disaster-plan-r8: 横手市「横手市地域防災計画」
  • yokote-disaster-support-list-r8: 横手市「避難行動要支援者名簿」
  • yokote-population-history: 横手市「横手市の人口(過去データ)」