「横手で働く」と「横手市内の会社だけで働く」は同じではない。

これから地元就職する人にとって、最初の会社より重要になるかもしれないのが、10年後に転職できる範囲である。

横手市の第2次商工業振興計画が引用する2020年国勢調査では、市外から横手市へ働きに来る流入者が8,227人、市内から市外へ働きに出る流出者が6,420人だった。

少なくとも2020年時点の横手の労働市場は、市境の内側だけで閉じていない。

横手市へ働きに来る人の方が多かった

2020年の通勤流動は、

  • 流入者: 8,227人
  • 流出者: 6,420人
  • 差: 1,807人の流入超過

だった。

市は、横手市が周辺地域に対する中心市としての機能を持っていると整理している。

特に製造業、卸売・小売業、医療・福祉で流入超過が大きいとしている。

これは「横手市内なら仕事が豊富」という意味ではない。

職種別求人倍率には大きな差があり、一般事務のように求職者が多い職種もある。

ただ、周辺市町村を含む人の移動がある以上、仕事の選択肢を自治体境界だけで数えるのは実態に合いにくい。

地元就職で怖いのは、最初の会社より2社目がないこと

20代で地元企業に入るときは、内定先の条件に目が向く。

50年近い職業人生で考えるなら、会社を辞めたときに次があるかも同じくらい重要になる。

地方で転職の選択肢が薄いと、

  • 給与が上がらなくても辞めにくい
  • 人間関係が悪くても残りやすい
  • 身につけた技能を高く買う会社へ移りにくい
  • 業界自体が縮んだとき逃げにくい

という問題が起きる。

そのため「横手市内に同職種の会社が何社あるか」だけでなく、現実に通勤できる範囲に何社あるかを見る必要がある。

通勤圏を広げれば選択肢は増えるが、無料ではない

市外へ通勤できれば転職先候補は増える。

その代わり、横手では自動車移動が中心になりやすく、

  • 車両購入
  • 燃料
  • タイヤ
  • 車検・整備
  • 冬季の移動時間
  • 降雪時の事故リスク

を負担する。

片道30分と片道60分では、年間の拘束時間もかなり違う。

給与が高い市外求人でも、交通費と時間を含めた実質条件は別に計算した方がいい。

「横手に住み、横手以外で働く」は普通に選択肢になる

地元に残ることを、横手市内企業への就職と同義にする必要はない。

住宅や家族事情から横手に住みながら、通勤可能な周辺地域へ働きに行く形もある。

逆に周辺自治体に住み、横手へ働きに来る人も多い。

人口減少下では、自治体ごとに完全な労働市場を維持するより、県南部の複数自治体を一つの通勤圏として使う方が現実的になる可能性がある。

ただし、2020年の流動データから「今後必ず広域化が進む」とまでは言わない。

会社選びでは「次の会社でも使える技能」を見る

最初の会社に定年までいる前提を置かないなら、仕事内容を見る基準も変わる。

例えば、

  • 施工管理
  • 見積り・原価管理
  • 営業・顧客折衝
  • CAD
  • 経理・労務
  • IT
  • 設備保全
  • 品質管理
  • 生産管理
  • 法令・許認可対応

のように、複数企業や周辺地域でも使われる技能は転職市場を広げやすい。

逆に、社内だけで通じる作業や一社固有の手順しか経験できない場合、その会社を辞めたときの選択肢が狭くなる可能性がある。

地方ほど「会社が安定しているか」だけでなく「自分が会社を出ても使えるものが残るか」を見る意味が大きい。

地場経営者には、採用対象を市民だけに限定しないという話になる

2020年時点で8千人以上が市外から横手へ働きに来ていたことは、企業側にも意味がある。

採用市場は横手市人口7.8万人だけではない。

勤務地、勤務時間、駐車場、冬季通勤、賃金が許せば周辺地域から採用できる。

一方、競合企業も同じ通勤圏から人を採る。

採用難を「横手市の若者が少ない」で終わらせず、周辺から通ってもらえる条件になっているかを見る必要がある。

50年先では、通勤可能距離そのものが変わる可能性がある

今後、道路整備、公共交通、自動運転、勤務形態、燃料費などが変われば通勤圏も変わる。

しかし、具体的な技術普及時期を予言することはしない。

このサイトでは、

  • 市外流入者数
  • 市外流出者数
  • 流入超過する産業
  • 周辺ハローワークの求人
  • 通勤時間
  • 公共交通
  • 自動車維持費

を更新し、「横手に住む人が実際にアクセスできる労働市場」を追う。

2020年データであることには注意が必要

8,227人、6,420人という数字は2020年国勢調査によるもので、2026年現在の通勤人数ではない。

第2次商工業振興計画が現在の地域経済を整理する資料としてこの値を掲載しているためbaselineとして使うが、2025年国勢調査の詳細な通勤データが利用可能になれば更新する。

古い数字を現在値として扱わない。

地元就職の判断は「1社」から「通勤圏」に広げる

地元就職を考えるとき、最初の勤務先が良さそうかだけを見れば短期判断はできる。

20年、30年働くことまで考えるなら、

その会社を辞めても、住み続けながら次の仕事へ移れるか

を見た方がいい。

横手市は少なくとも2020年時点で周辺から労働者を吸収する側でもあり、市外へ働きに行く人も6千人以上いた。

横手で生きることと、横手市内企業に固定されることは分けて考えられる。

Sources

  • yokote-commerce-industry-plan-r8-r12: 横手市「第2次横手市商工業振興計画」
  • yokote-public-transport-plan-r6-r10: 横手市「横手市地域公共交通計画」