横手の人口が減れば、農家も減る。

では農家が辞めたら、その人が耕していた田畑も一緒になくなるのか。

当然、そうはならない。

土地は残る。

誰かが耕す、草を刈る、貸す、集約する、別の用途へ変える。何もしなければ荒れる。

横手の農業を50年先まで考えるとき、重要なのは農家数そのものより、減っていく農業者から残る農地を誰へ移すかになる。

販売農家等は20年で半分以下になった

第3次横手市農業振興計画に掲載された農林業センサスの系列では、農家数は次のように減っている。

農家数等
200010,649
20059,403
20107,176
20155,898
20204,603

2000年から2020年までに6,046減り、単純計算では約57%減る。

ただし2020年から調査項目や定義に変更があるため、この20年間を完全に同一条件の時系列として扱わない。

それでも、市の農業振興計画が農家数・農業従事者数の「大幅な減少」を明確な課題としていることは変わらない。

農業就業人口の約76%が60歳以上だった

同計画に掲載された2020年農林業センサスでは、自営農業に主として従事した世帯員は7,026人。

年齢構成は次のようになっている。

年齢人数
15〜19歳2人
20〜29歳70人
30〜39歳266人
40〜49歳463人
50〜59歳891人
60〜69歳2,668人
70〜74歳1,263人
75歳以上1,403人

60歳以上は合計5,334人で、全体の約76%になる。

40歳未満は338人、約5%しかいない。

これは2026年現在の人数ではなく、2020年調査時点の数字だ。

それでも、今後10年、20年で大量の世代交代が必要になる構造は読み取れる。

農業は小さな周辺産業ではない

担い手が高齢化しているからといって、横手の農業がすでに小さな産業になっているわけではない。

第3次農業振興計画では、横手市の農業産出額は2014年から10年連続で県内1位とされ、農業を市の基幹産業と位置付けている。

経営耕地の約9割は水田。

2024年度時点では30a以上に整備された水田の割合も85%を超えるとされる。

つまり横手には、かなりの面積の農地と、生産のために整備してきた基盤が存在する。

人が減ったから簡単に放棄できる対象ではない。

農家が辞めれば、残った農家へ農地が集まる

国と横手市は、担い手へ農地を集積・集約する方向を進めている。

人・農地プランでは、5年後、10年後に誰がどの農地を利用するかを地域で話し合い、中心となる経営体へ農地を集める。

考え方としては分かりやすい。

小規模農家が多数いる

高齢化・離農

農地を担い手へ貸す

少数の農家・法人が大きな面積を経営する

実際、水田の大区画化や農業法人化も進められている。

人口減少下の農業は「農地が消える」より先に、「経営する人の数が減り、一人・一法人あたりの面積が増える」方向へ進みやすい。

ただし、集めれば集めるほど楽になるわけでもない

横手市自身の人・農地プランの説明には、かなり重要な記述がある。

高齢化・後継者不足で農地を任せたい人が増える一方、受け手側も、これまで分散した農地をやみくもに集積してきた結果、新たな農地を借りることが難しくなりつつあるという。

面積だけ増えても、農地が離れた場所へ点在していれば効率は上がりにくい。

  • トラクターを移動する
  • 水管理へ回る
  • 草刈りする
  • 資材を運ぶ
  • 収穫物を運ぶ

時間が増える。

必要なのは単なる「集積」ではなく、まとまった場所へ寄せる面的集約になる。

農地は道路と似ている

人口が減っても道路が簡単には短くならないのと、農業にも似た問題がある。

農家が減っても、農地の面積は翌年から同じ比率で減らない。

むしろ残る担い手が広い面積を維持する必要が出る。

違うのは、道路が行政インフラなのに対し、農地は基本的に私有財産・事業資産であることだ。

しかし地域全体から見ると、

  • 草刈り
  • 用排水路
  • 農道
  • ため池
  • 水管理
  • 鳥獣対策

など共同で維持する要素も多い。

一人の離農が、その人の田だけの問題で終わらないことがある。

中山間地域では「誰かが引き受ける」だけでは成立しにくい

横手市は中山間地域での耕作放棄地対策と営農継続支援を行っている。

平地の大区画水田と、傾斜・小区画・遠隔地の農地では条件が違う。

農地を引き受けても、

  • 作業効率が悪い
  • 機械が入りにくい
  • 移動が長い
  • 収量に対して維持費が高い

なら、受け手が見つかりにくい。

人口減少下では、すべての農地を同じ優先度で維持できるとは限らない。

将来的には、維持する農地、集約する農地、別利用へ移す土地をより明確に選ぶ必要が出る可能性がある。

地元就職者には「農家になるか」以外の仕事がある

横手の農業雇用を考えるとき、個人農家になるかどうかだけを見ると狭い。

農地が少数の大規模経営体へ集まれば、農業は家族経営から雇用型産業へ寄る可能性がある。

必要になる仕事は、

  • 農業法人の従業員
  • 農業機械オペレーター
  • 整備
  • ドローン・センシング
  • 水管理
  • 施設園芸
  • 選果・加工
  • 物流
  • 営業
  • 経理・労務

などへ広がる。

市の総合計画も、雇用就農の受け皿となる経営体の育成やスマート農業による省力化を掲げている。

「農家が減る」は、「農業の仕事が同じ割合で減る」と同じではない。

地場経営者には、農業法人の大型化が別市場を作る

少数の経営体が広い面積を担当するなら、一経営体あたりが必要とする設備・外部サービスは大きくなる可能性がある。

  • 大型農機
  • 修理・保守
  • GPS・自動操舵
  • ドローン
  • 倉庫
  • 乾燥調製
  • 人材派遣
  • 会計
  • 労務管理
  • IT
  • 運送

個人農家1万戸を相手にする市場と、数百〜数千の大規模経営体を相手にする市場では売り方が変わる。

地域企業は「農家数が減る」だけで需要減と判断しない方がいい。

顧客数は減っても、一顧客あたりの経営規模は大きくなる可能性がある。

新規就農者を増やすだけでは世代交代を埋め切れない可能性がある

2020年時点で60歳以上の農業就業者が5,334人いた。

この人数を、若い新規就農者だけで一対一に置き換えるのは現実的ではない可能性が高い。

必要なのは、人を同数補充することより、一人あたりの作業能力を上げることになる。

  • 大区画化
  • 集約
  • 法人化
  • 機械大型化
  • 自動化
  • 作業受託
  • 共同利用

が重要になる理由はここにある。

農業の人口減少対策は「若者を呼ぶ」だけでは足りない。

2025年農林業センサスで、次の変化が見える

2025年2月1日を基準日に、新しい農林業センサスが実施されている。

横手市の詳細集計が公表されれば、2020年から5年間で、

  • 経営体数
  • 農業労働力
  • 経営耕地
  • 法人化
  • 経営規模

がどう変わったか更新できる。

この記事は2020年値をbaselineとして、その結果公表後に更新する。

2050年では「農地を誰が持つか」より「誰が作業できるか」

2026年に25歳の人は2050年に49歳になる。

その頃、現在60歳以上の農業就業者の多くは現役を退いている可能性が高い。

土地の所有者と、実際に耕す経営体がさらに分離していても不思議ではない。

所有者が多数いても、作業は少数の法人・大規模農家が担う形だ。

重要なのは所有権の数ではなく、

  • 誰が農地を集められるか
  • 誰が機械を持てるか
  • 誰が人を雇えるか
  • 誰が水路・農道を維持できるか

になる。

2070年に人口3万人弱でも、田んぼが3分の1になるとは限らない

社人研推計では2070年の横手市人口は28,508人。

だからといって、現在の農地面積を単純に3分の1へ縮めることはできない。

食料需要は市内人口だけで決まらず、農産物は域外へ販売できる。

横手農業は市民だけを顧客にする産業ではない。

一方、担い手がいなければ、需要があっても耕せない。

50年先の農業を左右するのは横手市人口より、

  • 担い手数
  • 一経営体あたり面積
  • 農地の集約度
  • 機械化・自動化
  • 水利維持
  • 販売先

になる可能性が高い。

このサイトで追う数字

  • 農業経営体数
  • 農業就業人口・年齢
  • 経営耕地面積
  • 1経営体あたり面積
  • 認定農業者・法人
  • 新規就農者
  • 農地集積率
  • 遊休農地
  • 中山間地域の耕作面積
  • 農業産出額
  • スマート農業導入
  • 作業受託

農業は横手の50年シナリオに欠かせない。

人が減るのに、広い土地と生産基盤が残るという意味で、人口減少社会の問題が最も分かりやすく出る産業の一つだからだ。

現時点の結論

横手では、農家と農業従事者はすでに大幅に減り、2020年時点の農業就業人口は60歳以上が約76%を占めていた。

一方、農地、生産基盤、農産物需要は人と同じ速度では消えない。

だから今後の農業は、農家を同じ人数だけ補充するより、残る担い手へ農地をまとまった形で移し、少ない人数で広い面積を管理できる構造へ変えられるかが重要になる。

横手の農業の未来を考える問いは、

農家はあと何人残るか

より、

残る農地を、誰が、何人で、どの機械と組織で耕すのか

になる。

Sources

  • yokote-agriculture-plan-r8-r17: 横手市「第3次横手市農業振興計画」
  • yokote-agriculture-plan-r8-r17-current-state: 横手市「第3次横手市農業振興計画 第1章〜第3章」
  • yokote-agriculture-census-2025: 横手市「2025年農林業センサス」
  • yokote-people-farmland-plan: 横手市「人・農地プラン」
  • yokote-farmland-optimization-guideline-r8: 横手市農業委員会「農地等の利用の最適化の推進に関する指針」
  • yokote-agriculture-regeneration-council-r8: 横手市「横手市農業再生協議会」
  • yokote-mountain-farmland-support-r8: 横手市「中山間地域の農地維持を支援します」