横手で働くことを考えるとき、求人票には載らない仕事がある。

消防団もその一つだ。

横手市の第3次総合計画によると、消防団員数は2021年度の2,242人から2025年度の1,952人へ減った。

4年間で290人、約13%の減少になる。

人口が減れば消防団員も減ること自体は不思議ではない。

ただし、火災、豪雨、地震、行方不明者捜索などの地域防災需要が、人口と同じ割合で自動的に消えるわけではない。

このため横手の地域防災を考えるときは、「消防団員が何人いるか」だけでなく、残った住民と企業がどこまで地域防災を担えるかを見る必要がある。

消防団員は4年間で290人減った

市の総合計画に掲載された消防団員数は次のとおり。

年度消防団員数
2021年度2,242人
2022年度2,154人
2023年度2,084人
2024年度2,065人
2025年度1,952人

2021年度から2025年度までに290人減っている。

ここで注意したいのは、この人数を「消防力が13%低下した」とそのまま読むことはできない点だ。

部隊配置、車両、常備消防との役割分担、団員一人あたりの活動、災害種別などは別に見る必要がある。

ただし、地域で動員できる人の母数が減っていること自体は確認できる。

条例上の定員も2,400人から2,200人へ下げられた

2024年9月定例会の条例改正案では、消防団員の定員を2,400人から2,200人へ変更する内容が示された。

定員は実際の団員数とは違う。

それでも、制度上想定する消防団の規模自体を人口や加入状況に合わせて見直していることは分かる。

人口減少地域では、「昔の人数へ戻す」ことだけを前提に制度を考え続けるのが難しくなる。

必要な消防力を保ちながら、何人で、どの配置で、どこまで活動するかを組み替える必要が出てくる。

約7割がサラリーマン等

横手市の消防団協力事業所表示制度では、市消防団員の約7割がサラリーマン等だと説明している。

これは地元就職者にとって重要な数字になる。

消防団を地域の専業的な人たちだけが担っているわけではない。

地域の会社で働く人が、仕事とは別に消防団員として活動している。

そのため消防団の持続性は、消防本部や団員本人だけではなく、勤務先の労務管理にも関係する。

市が消防団協力事業所制度を設けているのも、従業員が入団しやすく、災害時や訓練時に活動しやすい環境を企業側にも求めるためである。

地元企業にとって消防団は「社外活動」では終わらない

従業員が消防団員なら、企業側にも現実的な調整が発生する。

例えば、

  • 災害時の出動
  • 訓練
  • 行事
  • 勤務シフトとの調整
  • 活動後の休息

などである。

社員数の多い会社なら吸収しやすいかもしれない。

数人規模の事業所では、一人抜ける影響が大きい。

人口減少で企業側も採用難になれば、「地域防災へ人を出したいが、会社の現場も人が足りない」という競合が起こり得る。

地場経営者にとって消防団員確保は、地域貢献の話だけでなく、自社の人員配置とBCPの話でもある。

会社員にとっては、給与以外の地域負担も見る必要がある

横手で働くかを判断するとき、通常は次を見る。

  • 給与
  • 休日
  • 残業
  • 通勤
  • 住宅費
  • キャリア

しかし人口減少地域で長く暮らすなら、それだけでは足りない場合がある。

地域によっては、

  • 消防団
  • 町内会
  • 自主防災
  • 地域行事
  • 水路や農道の保全
  • 草刈り
  • 雪に関する共同作業

などが生活の外側に存在する。

参加の形や負担は地域ごと、人ごとに違うため「横手に住めば必ずこれだけ負担する」とは言えない。

ただし、地域を維持している労働の一部が行政職員でも企業の従業員でもない住民によって担われていることは、移住・地元就職の判断材料になる。

人口が半分になれば、防災需要も半分になるのか

社人研推計では横手市の人口は2050年47,879人、2070年28,508人とされている。

人口だけ見れば現在より大幅に少ない。

しかし地域防災の負荷は単純比例しない。

住宅、道路、河川、山間部、農地、空き家などの地理的な対象が人口と同じ速度で縮むとは限らないからだ。

人口が少ない地区ほど一件の火災や災害に必要な初動人員まで小さくできるとも限らない。

このため将来を見るときは、

  • 団員数
  • 分団・部の配置
  • 消防施設
  • 常備消防との役割分担
  • 企業勤務者比率
  • 昼間人口と夜間人口
  • 地域別人口

を一緒に追う必要がある。

「自助・共助」で済ませるほど単純ではない

地域防災では自助・共助がよく使われる。

ただ、人口減少下では「共助を増やせば解決する」とも言いにくい。

共助を担う人そのものが減るからだ。

同じ一人が、仕事、家族介護、消防団、町内会、農地管理など複数の役割を抱えれば、制度上は維持できても個人負担は増える。

したがって今後は、消防団員数を増やす施策だけでなく、

  • 必要活動そのものの見直し
  • デジタル連絡や省力化
  • 事業所との連携
  • 地域を越えた応援
  • 常備消防との機能分担

がどこまで進むかを見る必要がある。

地元就職者が確認したいこと

勤務先を選ぶとき、消防団参加の有無だけで会社を評価する必要はない。

ただ、地域との関係が強い企業なら次を聞いてもいい。

  • 消防団員が何人いるか
  • 災害出動時の勤務扱い
  • 訓練参加への配慮
  • 地域活動と本業が重なった場合の調整
  • 防災面で会社自身が担っている役割

これらは地方企業で働く実態を知る材料になる。

50年先に見るべきなのは、消防団制度が残るかではない

2070年に消防団が現在と同じ制度・人数・名称で残っているかは分からない。

予測しても意味が薄い。

見るべきなのは、地域に必要な防災機能を誰が担っているかである。

行政なのか。

消防団なのか。

企業なのか。

住民なのか。

複数地域をまとめた組織なのか。

人口が減る横手では、制度名より「必要な機能と担い手の組み合わせ」を追う方が重要になる。

Sources

  • yokote-general-plan-disaster-r8-r17: 横手市「第3次横手市総合計画 施策3-3 災害に強い体制の整備」
  • yokote-fire-brigade-cooperation-r7: 横手市「消防団協力事業所表示制度」
  • yokote-fire-brigade-capacity-r6: 横手市「令和6年9月定例会議案 消防団員定員条例改正」
  • yokote-depopulation-plan-r8-community: 横手市「横手市過疎地域持続的発展計画」