横手では人口が減っている。
森林は人口と一緒には減らない。
横手市森林整備計画の参考資料では、森林面積は37,623ha。そのうち私有林が29,442haを占める。
一方、令和5年度の林業関係就業状況として掲載されているのは18組織、従事者92人、うち作業員76人である。
この76人が市内森林すべてを直接管理している、という意味ではない。
森林所有者自身の作業、別地域からの事業者、個別委託などもあり得る。
それでも、森林という巨大な土地資産に対し、専門的に作業できる人員が限られていることは分かる。
横手市の半分以上は森林
参考資料上の森林面積37,623haは、横手市総面積約69,280haの半分以上にあたる。
内訳は、
- 国有林: 1,788ha
- 民有林: 35,835ha
- うち私有林: 29,442ha
となっている。
私有林だけで森林全体の78.3%を占める。
つまり横手の森林管理は、行政が自分の土地を管理すれば済む話ではない。
多数の民間所有者と林業事業者をどうつなぐかが前提になる。
市外に住む森林所有者の割合が増えている
私有林について、所有者が横手市内に住んでいるか、市外に住んでいるかを見た資料もある。
2000年は私有林24,910haのうち、市外所有者の面積が4,537haで18.2%。
2023年は私有林29,442haのうち、市外所有者分が8,381haで28.5%になっている。
統計の作成方法や基礎資料が2000年と2023年で異なるため、単純な完全同条件比較ではない。
それでも、現在の私有林の相当部分を横手市外の所有者が持っていることは確認できる。
所有者が遠方に住めば、
- 現地の状態を見ない
- 境界が分からない
- 伐採・間伐の判断をしにくい
- 相続後に土地自体を認識していない
といった管理上の問題が起きやすくなる。
森林は相続しても、管理能力まで相続されるわけではない
森林を相続すると所有権は移る。
しかし、新しい所有者が林業の知識を持っているとは限らない。
横手市は林地台帳で所有者や境界情報を管理し、森林土地の所有者となった人には届出を求めている。
これは森林管理の入口が「木を切る技術」より前に、誰がどこを持っているかを把握するところから始まることを示している。
人口減少・相続増加が続けば、所有関係の把握自体が行政業務として重くなる可能性がある。
自分で管理できない森林を市へ預ける制度がある
森林経営管理制度では、森林所有者が自ら管理できない森林について、市が意向を確認して経営管理権を集約できる。
流れは大きく、
- 市が所有者へ今後の管理意向を確認
- 所有者が希望すれば市へ経営管理を委託
- 林業経営に適した森林は林業経営者へ再委託
- 経営に適さない森林は市が管理
となる。
所有権そのものを市へ移す制度ではない。
管理する権利と責任を整理して、放置される森林を減らす仕組みである。
2024年度には森林経営管理事業へ約6,200万円
横手市の2024年度主要施策成果では、森林経営管理事業の決算額は62,185千円。
内容には、
- 経営管理権集積計画作成2件
- 森林GIS
- 森林資源解析
- 森林境界推定図作成
- 集積計画地の巡視
などが含まれる。
森林管理はチェーンソーで木を切る現場作業だけではない。
所有者調査、地図、境界、資源量解析、計画、委託といった情報管理が大量に必要になる。
ここは地方DXと相性がいいが、現場は消えない
横手市は森林GISを使い、2025年にも民有林約60か所で植生・立木材積の現地調査を行っている。
衛星、航空測量、ドローン、GIS、AIなどで森林状態を把握しやすくなる余地は大きい。
しかし、
- 境界確認
- 下刈り
- 間伐
- 伐採
- 搬出
- 作業路整備
- 災害後の確認
などは物理作業として残る。
森林DXで見るべきなのは「地図をデジタル化したか」ではなく、現場調査や計画作成を何時間減らし、限られた作業員を本当に必要な現場へ回せたかである。
林業関係作業員76人という数字をどう読むか
令和5年度資料では、林業関係の18組織に従事者92人、うち作業員76人とある。
森林組合は1組織25人、うち作業員11人。
その他林業事業体は7組織53人で、53人全員が作業員として掲載されている。
木材加工業等も含む集計なので、数字の意味は分けて読む必要がある。
また、市外事業者による施業等はこの表だけでは分からない。
したがって「37,623ha÷76人」で一人あたり管理面積を出すのは不適切である。
ただ、50年先を見るうえではこの作業員数の時系列が重要になる。
森林が放置されると、林業だけの問題ではない
適切な森林管理は木材生産だけに関係するわけではない。
森林には、
- 水源涵養
- 土砂災害防止
- 景観
- 野生動物との境界
- 林野火災
などの機能がある。
森林管理が弱くなれば、鳥獣被害、防災、道路、住宅地にも影響が出る可能性がある。
実際、鳥獣被害対策では緩衝帯整備や里山管理が出没抑制策として使われている。
森林を単独テーマにせず、鳥獣、防災、農地とつなげて見る必要がある。
地元就職者には「林業求人」以上の市場がある
森林管理の仕事には、伐採作業員だけでなく、
- 測量
- GIS
- ドローン
- 林道整備
- 土木
- 機械整備
- 木材運搬
- 行政・所有者調整
などが関わる。
人口減少下でも森林面積が大きく変わらないなら、管理需要そのものは残りやすい。
一方で木材価格や補助制度、採算性に左右されるため「林業なら将来安泰」とは言えない。
仕事量と事業採算を別に見る必要がある。
地場経営者には、管理不能な土地が仕事へ変わる可能性がある
森林所有者が自ら作業できなくなれば、外部事業者へ委託される範囲が広がる可能性がある。
林業そのものに参入しなくても、
- 測量
- 境界推定
- GIS運用
- 作業道
- 重機
- 伐採後処理
- 遠隔監視
など周辺需要がある。
農地、水路、空き家と同じように、「自分で管理していた資産を有償サービスへ移す」市場が生まれ得る。
2050年・2070年に見るべきなのは森林面積だけではない
森林面積が現在と大きく変わらなくても、管理構造は変わり得る。
今後追いたいのは、
- 林業作業員数
- 年齢構成
- 林業事業体数
- 市外所有者の森林面積
- 所有者不明森林
- 経営管理権集積面積
- 林業経営者への再委託面積
- 市が直接管理する森林面積
- 間伐・再造林面積
である。
人口が減る横手では、森林の所有権が細かく残ったまま、管理だけが少数の事業者と行政へ集約されるシナリオも考えられる。
横手の50年問題は「使わない土地を誰が管理するか」へ広がる
農地、空き家、森林には共通点がある。
利用する人が減っても土地そのものは消えない。
その結果、所有者、近隣住民、事業者、行政の誰かが最低限の管理を引き受ける必要が出る。
横手の人口減少を考えるとき、住民数だけでなく、一人あたりが管理しなければならない土地・設備・地域機能の量を追う必要がある。
Sources
yokote-forest-plan-r7-r16: 横手市「横手市森林整備計画」yokote-forest-plan-reference-r5: 横手市「横手市森林整備計画 参考資料」yokote-forest-environment-tax-management: 横手市「森林環境譲与税を活用した取組」yokote-forest-results-r6: 横手市「令和6年度主要な施策の成果」yokote-forest-field-survey-r7: 横手市「森林の現地調査の実施について」yokote-forest-land-registry: 横手市「林地台帳情報の閲覧と提供」