横手市にはいくら「貯金」があり、いくら「借金」があるのか。
地方財政で基金を貯金、市債を借金と呼ぶと分かりやすいが、その二つだけで健全性を判定することはできない。
横手市の最新財政計画を見ると、今後数年間は基金を取り崩しながら、地方債残高も減らしていく計画になっている。
同時に、借金返済の負担感を示す実質公債費比率は上昇する見込みである。
2024年度決算では、財政調整基金と減債基金が136.5億円
2024年度決算では、
- 財政調整基金: 87億6,677.9万円
- 減債基金: 48億8,319.4万円
- 合計: 136億4,997.3万円
だった。
横手市の資料では、この合計額は標準財政規模の44.1%に相当する。
財政調整基金は年度間の財源不足や不時の支出増加に対応するための基金、減債基金は地方債の償還を計画的に行うための基金である。
この136.5億円全部が自由に好きな用途へ使える現金という意味ではない。
最新計画では、2基金合計を2030年度に45.9億円まで使う見込み
2026年2月に策定された横手市財政計画では、財政調整基金と減債基金の年度末残高を次のように見込んでいる。
| 年度 | 財政調整基金 | 減債基金 | 2基金合計 |
|---|---|---|---|
| 2024年度決算 | 87.67億円 | 48.83億円 | 136.50億円 |
| 2025年度見込 | 76.05億円 | 41.06億円 | 117.11億円 |
| 2026年度当初 | 64.30億円 | 32.63億円 | 96.93億円 |
| 2027年度計画 | 54.03億円 | 25.70億円 | 79.73億円 |
| 2028年度計画 | 42.60億円 | 18.75億円 | 61.35億円 |
| 2029年度計画 | 47.16億円 | 11.79億円 | 58.95億円 |
| 2030年度計画 | 41.09億円 | 4.81億円 | 45.90億円 |
2024年度決算から2030年度計画までで、2基金合計は約90.6億円減る計算になる。
ただし、これは将来の確定残高ではない。
2024年度は決算、2025年度は3月補正後見込、2026年度は当初予算、2027~2030年度は計画額であり、性質が違う。
市は2基金合計に「標準財政規模の10%」という下限目標を置く
財政計画では、財政調整基金と減債基金の合計について、標準財政規模の10%を下限維持目標額としている。
2026年度なら約31.93億円、2030年度なら約31.82億円が目標額になる。
2030年度の計画残高45.90億円は、この下限目標を上回る。
したがって、市の現在の計画をそのまま読む限り、「2030年度までに基金を使い切る」計画ではない。
一方、2024年度の136.5億円からはかなり小さくなる。
今後の大型事業、物価・人件費、災害、税収などが計画からずれれば、余力の意味も変わる。
地方債は2025年度見込を山に減らす計画
地方債の年度末残高は、財政計画では次のように見込まれている。
| 年度 | 地方債残高 |
|---|---|
| 2024年度決算 | 619.69億円 |
| 2025年度見込 | 652.39億円 |
| 2026年度当初 | 615.62億円 |
| 2027年度計画 | 580.74億円 |
| 2028年度計画 | 577.83億円 |
| 2029年度計画 | 556.04億円 |
| 2030年度計画 | 515.76億円 |
2025年度は借入額が元金償還額を上回る見込みだが、その後は全体として残高を減らす計画になっている。
「横手市の借金は今後ずっと増え続ける」と読むのは現在の計画と合わない。
ただし、残高が減っても返済負担比率は上がる
地方債残高が減る計画なのに、実質公債費比率は上がる見込みになっている。
| 年度 | 実質公債費比率 |
|---|---|
| 2024年度 | 8.6% |
| 2025年度見込 | 9.1% |
| 2026年度 | 9.5% |
| 2027年度 | 9.9% |
| 2028年度 | 10.4% |
| 2029年度 | 10.7% |
| 2030年度 | 11.1% |
実質公債費比率は、地方債の元利償還などの実質的な返済負担を標準財政規模に対する割合で表す指標である。
市町村では18%以上になると起債に許可が必要になるなど制度上の節目がある。2030年度11.1%はその18%を下回る。
それでも、2024年度より負担比率が高くなる方向であることは確認しておく必要がある。
なぜ残高を減らしているのに負担感が上がるのか
借金残高と、毎年の返済負担は同じものではない。
過去に発行した地方債の償還時期、大型公共施設や市街地再開発等の事業、標準財政規模などによって、残高が減る期間でも返済負担比率が上がることがある。
横手市の2024年度決算資料でも、公債費は2020年度約63.8億円から2024年度約70.8億円へ増えており、市は今後も大型公共施設整備や大規模改修等により増加を見込むとしている。
地方債620億円を、そのまま住民が返す借金とは読まない
地方債には種類があり、元利償還金の一部または全部が普通交付税の基準財政需要額へ算入されるものがある。
横手市の財政計画では、主なものとして、
- 合併特例債: 元利償還金の70%を算入
- 過疎対策事業債: 元利償還金の70%を算入
- 臨時財政対策債: 元利償還金相当額全額を算入
と説明している。
したがって、地方債残高を人口で割って「一人○万円の借金」とだけ表現すると、実質負担を誤解させる可能性がある。
2024年度決算資料には住民1人当たり地方債現在高775千円という指標もあるが、これを個人に請求される債務のようには扱わない。
地元就職者には、自治体の余力が暮らしの変化として出る
25歳で横手に残る人にとって、基金残高や実質公債費比率そのものを毎日意識する必要はない。
ただし財政余力が小さくなる時期には、
- 公共施設の統廃合
- 道路・橋梁の更新順位
- 除雪
- 学校
- 公共交通
- 福祉
- 上下水道への繰出し
などで「全部を今まで通り維持する」ことが難しくなりやすい。
問題は市役所に貯金が何億円あるかだけではなく、その金を何の維持に使う必要があるかである。
地場企業は公共投資の波を固定売上として見ない方がいい
大型公共施設や再開発は建設・設備関連の需要を生む。
しかし一時的な大型事業と、毎年続く維持管理需要は分けて見る必要がある。
2025年度の地方債借入見込が大きくても、その発注規模が50年間続くわけではない。
地場企業が自治体案件を経営の柱にするなら、
- 新設
- 大規模改修
- 維持補修
- 災害復旧
- 除雪
- 上下水道
のどれに売上が依存しているかを分けた方がいい。
2030年以降は「参考見込」として読む
最新財政計画の正式な計画期間は2026年度から2030年度。
2031年度以降の数値も掲載されているが、市は参考見込額としている。
50年シナリオのために、この参考見込をそのまま2070年まで延長しない。
財政計画は毎年度更新されるため、基金・市債・返済負担については新しい計画が出るたび差分を記録する方が意味がある。
現時点の読み方
横手市は2024年度時点で、財政調整基金と減債基金を合わせて136.5億円持ち、地方債残高は619.7億円ある。
最新計画では、2030年度へ向けて基金をかなり使いながら地方債残高を減らす。
制度上の健全化基準に直ちに迫っているという数字ではない一方、基金残高と実質公債費比率を見ると、何もしなくても余力が増えていく計画でもない。
人口減少下の横手を見るなら、「破綻するか、しないか」の二択より、どの程度の余力を何に使いながら縮むのかを追う方が実態に近い。
Sources
yokote-financial-plan-r8-r12: 横手市「横手市財政計画(令和8年度~令和12年度)」yokote-fiscal-results-r6: 横手市「令和6年度における主要な施策の成果を説明する書類」yokote-financial-health-r6: 横手市「財政健全化判断比率および資金不足比率」