人口が減れば、新しく家を建てる人も減る。

長期ではその方向を考える必要がある。

ただし住宅産業全体が、人口と同じ速度でなくなるわけではない。

横手には既に大量の住宅があり、そこへ人が住み続ける限り、修繕、設備更新、雪対策、空き家管理、解体などの仕事が残る。

人口減少期の住宅産業は「何戸新築するか」だけでは見えない。

新設住宅着工は10年で305戸から251戸へ減った

横手市の第2次商工業振興計画に掲載された経済指標では、新設住宅着工戸数は2014年の305戸から2024年の251戸へ減っている。

10年間で54戸、約17.7%の減少になる。

同じ表では、総人口は2014年の93,111人から2024年の78,916人へ減っている。

約15.2%の減少で、新設住宅着工も同程度の方向で減っている。

この10年だけを見ると、人口減少と新築需要の縮小はかなり接続している。

ただし年ごとの住宅着工は金利、建築費、補助制度、世帯形成、災害などでも変わるため、10年間の2点だけから将来の減少率を決めることはしない。

人口より世帯数の減少は遅い

同じ市の表では、世帯数は2014年の31,972世帯から2024年の30,736世帯へ減っている。

10年間で約3.9%の減少にとどまる。

人口は約15.2%減っているため、世帯数は人口ほど速く減っていない。

これは住宅需要を見る上で重要だ。

住宅は人単位ではなく、世帯単位で使われることが多い。

一人暮らし、高齢者のみ世帯、核家族化などで一世帯あたり人数が減れば、人口が減っても必要住宅数は同じ割合では減らない。

だから「人口が半分になれば家も半分でよい」とは言えない。

一方、長期には世帯数も減る可能性が高く、既存住宅の余剰は増えやすい。

住宅ストックは既に余り始めている

横手市は2025年3月末時点で1,500棟を超える空き家を把握している。

別定義の2023年住宅・土地統計調査では4,590戸の空き家が推計されている。

空き家の定義が違うため、二つを直接比較はしない。

ただし人口減少と住宅余剰が既に行政課題になっていることは確認できる。

住宅産業にとっては、新築市場の外側に大量の既存住宅があるということでもある。

この住宅を、

  • 使い続ける
  • 改修する
  • 売る
  • 貸す
  • 管理する
  • 壊す

仕事が必要になる。

市の補助制度も「建てる」だけを対象にしていない

2026年度の若年世帯住まい応援事業は、新築だけでなく住宅購入、増改築、リフォームも対象にしている。

空き家バンク活用推進補助では家財処分や清掃を支援する。

空家等除却費補助では、条件を満たす空き家の解体も対象になる。

行政の住宅政策自体が、

新築

だけではなく、

取得 → 改修 → 利用 → 管理 → 除却

まで広がっている。

人口減少地域の住宅産業も、この住宅ライフサイクル全体へ広がる可能性がある。

新築が減ると、施工会社がそのまま減るとは限らない

新築戸数が減れば、新築専門の需要は厳しくなりやすい。

しかし住宅が古くなれば修繕需要は発生する。

横手では雪と寒さもある。

  • 屋根
  • 外壁
  • 断熱
  • 暖房
  • 給湯
  • 水回り
  • 雪処理

は住宅を使う限り維持が必要になる。

人口が減っても住宅ストックがすぐ減らなければ、施工需要は「新築から既存住宅」へ移る。

企業側にとっては、新築受注件数だけでなく既存顧客の住宅年齢を持つことが重要になる。

空き家が増えるほど「壊す市場」も増える可能性がある

人口増加期の住宅産業では、家を建てることが成長になる。

人口減少期には、不要になった住宅を安全に減らすことも地域維持になる。

空き家を放置すれば、倒壊、雪、衛生、景観など周辺へ問題が広がる場合がある。

市が除却補助を用意しているのも、その対応が必要だからだ。

住宅解体には、

  • 解体工事
  • 廃棄物処理
  • アスベスト等の事前調査
  • 電気・水道等の切離し
  • 家財処分
  • 跡地整備

など複数業種が関わる。

新築市場が縮む一方で、除却市場の比重が上がる可能性がある。

これは住宅産業が「増やす産業」から「総量を管理する産業」へ変わるということでもある。

地元の建設会社は、顧客の生涯を取れるか

新築は一度の大型受注になりやすい。

人口が減るなら、一件の顧客と長く関係を持つ方が重要になる可能性がある。

例えば、

  1. 住宅取得
  2. 10年単位の点検・修繕
  3. 断熱・設備更新
  4. 親世代の空き家整理
  5. 高齢化に伴う改修
  6. 最終的な売却・解体

まで扱える会社なら、新築戸数だけに売上が依存しにくい。

すべてを自社施工する必要はない。

不動産、設備、廃棄物、解体、金融など地域事業者と連携する方法もある。

人口減少下では、一軒の住宅から発生する仕事を長期で見る必要がある。

2030年は、新築と改修の比率を見る

2026年から2030年の間に住宅市場が急変するとは限らない。

まず追うのは次になる。

  • 新設住宅着工戸数
  • リフォーム補助利用
  • 空き家バンク登録・成約
  • 解体補助件数
  • 世帯数
  • 建築事業所数

新築が減っても改修が増えているなら、住宅産業全体の仕事量は別の形へ移っている可能性がある。

2040年は、親世代の住宅が市場へ出始める可能性がある

2026年に25歳の人は2040年に39歳になる。

この世代は自宅を持ちながら、親世代の住宅を相続・管理する時期へ入る可能性がある。

人口減少地域では「自分の家を建てる市場」だけでなく、「実家をどうするか」という市場が大きくなる可能性がある。

  • 売却
  • 改修して住む
  • 賃貸
  • 空き家管理
  • 家財整理
  • 解体

が住宅産業の仕事になる。

2050年以降は、建物を残す地域と減らす地域が分かれる可能性がある

地域別人口の減少速度には既に差がある。

中心部と周辺部で住宅需要が同じ動きをするとは限らない。

人口、交通、学校、医療、上下水道等の再編が進めば、住宅を維持しやすい地域と維持コストが高い地域の差が広がる可能性がある。

住宅会社にとっても、市全体の着工戸数より地区別の住宅ストックを見る必要が出てくる。

全市一律で営業するより、

  • 新築需要が残る場所
  • 改修需要が多い場所
  • 空き家処理が増える場所

で事業を分ける可能性がある。

地元就職者が住宅会社へ入るなら「新築だけの技能か」を見る

人口減少地域の住宅業へ就職するなら、会社の売上だけでなく、自分が身につける技能も見る。

新築施工だけでなく、

  • 既存住宅診断
  • 改修
  • 断熱
  • 設備
  • 解体
  • 施工管理
  • 不動産
  • 省エネ

へ広げられる技能なら、住宅市場の構成が変わっても対応しやすい。

住宅そのものがなくなるわけではない。

新しく作る住宅より、既にある住宅を扱う比率が増える可能性を前提にした方がいい。

人口減少で住宅産業が消えるのではなく、仕事の向きが反転する

人口増加期には、住宅を増やす仕事が中心になる。

人口減少期には、既存住宅を長く使い、余った住宅を減らす仕事が増える。

横手では既に新設住宅着工が減り、空き家対策と改修・除却支援が同時に存在する。

だから住宅産業の50年を考えるなら、新築戸数だけを見ない。

建てる・直す・流通させる・管理する・壊す。

この5つのどこへ需要が移っているかを追う方が、地場企業と就職者には使いやすい。

現時点で分からないこと

新設住宅着工戸数251戸という2024年値から、2030年・2050年の着工戸数を直線で推計することはしない。

また横手市内のリフォーム市場規模、民間解体市場規模、住宅の平均築年数をこの記事では把握できていない。

今後、建築着工統計、空き家バンク、除却実績、住宅ストック、建設事業所数を継続して確認する。

Sources

  • yokote-commerce-industry-plan-r8-r12: 横手市「第2次横手市商工業振興計画」
  • yokote-population-vision: 横手市「横手市人口ビジョン」
  • yokote-vacant-house-plan-r8: 横手市「第3期横手市空家等対策計画」
  • yokote-young-household-housing-support-r8: 横手市「横手市若年世帯住まい応援事業補助金」
  • yokote-vacant-house-bank-support-r8: 横手市「空き家バンク活用推進補助事業」
  • yokote-vacant-house-demolition-r8: 横手市「令和8年度空家等除却費補助事業」