人口が減れば、公共サービスの費用も自然に同じ割合で減る。

そう考えると、横手市の将来をかなり見誤る。

人は減っても、道路の距離、水道管、下水道管、橋、トンネルはすぐには消えないからだ。

横手市の財産経営推進計画の進捗資料を見ると、この違いがかなりはっきり出ている。

建物系の公共施設は減らしている。一方で、道路延長はほとんど変わらず、上水道・下水道の管路延長はむしろ増えている。

地元で50年暮らすことを考えるなら、人口だけでなく「維持しなければならない面積と距離」を見る必要がある。

建物系公共施設は909施設から738施設へ減った

横手市FM計画の進捗資料では、計画当初の建物系公共施設は909施設だった。

2024年度末は738施設。

171施設、約19%減っている。

総延床面積も71.3万平方メートルから57.9万平方メートルへ減っている。

横手市は、人口が減る中で公共施設をそのまま全て維持するのではなく、統合、廃止、譲渡、解体などを既に進めている。

これは将来の話ではない。

FM計画は毎年度ローリングされ、施設ごとの方針も更新されている。

学校、保育所、集会施設は実際に減っている

同じ進捗資料では、施設分類ごとの変化も確認できる。

例えば計画当初から2024年度末までで、次のように変わっている。

分類計画当初2024年度末
学校26施設20施設
保育所14施設2施設
高齢福祉施設19施設12施設
集会施設123施設85施設
スポーツ施設42施設36施設
図書館5施設4施設

施設数が減ったことだけでは、サービスが同じ割合で低下したとは言えない。

統合先の施設が大型化したり、民間施設へ役割が移ったり、同じ機能を別の方式で提供したりする場合がある。

ただし、利用者にとって「近くに同じ施設があるか」は変わり得る。

移住や住宅購入では、市全体の施設数だけでなく、自分が住む地域からどこへ行くことになるかを見る必要がある。

道路は2,210kmから2,206km。ほとんど減っていない

建物と違って、道路は簡単には減らない。

FM計画進捗資料では、道路延長は計画当初2,210km、2024年度末2,206km。

ほぼ同じ長さが残っている。

橋梁の延長も11,495mから11,371mで、大幅には減っていない。

トンネルは5か所のままだ。

人口が減っても、そこに住宅、農地、事業所があり、道路として供用されている限り、除雪、舗装、橋梁点検、修繕などの対象になる。

人口が半分になったから道路も半分にできる、とはならない。

水道と下水道は、むしろ延びている

さらに分かりやすいのが管路だ。

FM計画進捗資料では、上水道管路延長は計画当初938kmから2024年度末954kmへ増えている。

下水道管路は327kmから350kmへ増えている。

集落排水の管路も80kmから82kmになっている。

利用者が減る時代でも、過去に整備した管路は残る。

管路を維持する費用は、利用者数に完全比例して下がるわけではない。

これは将来の水道料金や下水道使用料を考える上で重要になる。

ただし、管路延長が長いことだけから料金上昇を断定することはできない。

実際には更新費、企業債、国庫補助、施設統廃合、漏水率、料金体系などを企業会計と経営戦略で確認する必要がある。

人口減少で難しいのは「一人あたりの維持対象」が残ること

横手市の人口は2025年以降も大幅に減ると推計されている。

一方で、道路や管路を人口と同じ比率で短くすることは現実的ではない。

この構造では、将来的に一人あたりが支えるインフラ量が相対的に大きくなる可能性がある。

支え方は税金や料金だけではない。

  • 作業する職員
  • 委託業者
  • 建設会社
  • 除雪オペレーター
  • 水道技術者
  • 点検事業者

といった人的資源も必要になる。

人口減少と人手不足が同時に進む地域では、「お金があるか」だけでなく「作業する人がいるか」が制約になる。

地元就職者には、むしろ仕事が残る分野でもある

この問題は、地元就職を考える人から見ると別の顔を持つ。

道路、水道、下水道、建物管理、除雪、廃棄物などは、人口減少下でも完全にはなくならない。

そのため、維持管理の仕事は地域で長く必要になる可能性がある。

ただし、需要が残ることと待遇が良いことは同じではない。

人員削減や広域化で一人あたりの担当範囲が増えることもあり得るし、自治体発注に依存する事業では予算・入札制度の影響も大きい。

地元就職の候補として見るなら、単に「インフラはなくならない」で終わらせず、次を確認する必要がある。

  • どの企業が維持管理を担っているか
  • 従業者の年齢
  • 必要資格
  • 発注額と契約方式
  • 民間需要と公共需要の割合
  • 機械化・遠隔監視で必要人数がどう変わるか

地場企業には、商圏縮小と維持需要が同時に来る

建設、設備、廃棄物、除雪などの地域企業にとって、人口減少は顧客減少だけではない。

一方では住宅新築や民間需要が減る可能性がある。

他方では、既存インフラと建物を維持・更新・解体する需要が残る。

新しく作る仕事から、直す、減らす、統合する、解体する仕事へ比重が変わる可能性がある。

50年先の地場企業を考えるなら、成長市場だけでなく「縮小を実装する市場」も見る必要がある。

2030年、2050年、2070年で見るべきもの

今後は人口推計とFM計画を同じ時間軸で追う。

2030年前後

現在のFM計画や個別施設計画で決まっている統合・長寿命化が、実際にどこまで進んだかを見る。

2050年前後

社人研推計では人口5万人を下回る。道路、上下水道、公共施設の総量がどこまで減ったか、人口減少との速度差を見る。

2070年前後

人口約2.9万人という推計に近づいた場合、市全域で現在と同程度のインフラ密度を維持するのか、居住・サービス拠点をより集約するのかが大きな論点になる。

ここまで先の具体的な施設配置は現在の資料から予測しない。

観測すべき変数だけを残す。

現時点で分からないこと

この記事は施設数、延床面積、道路・管路延長を見ただけで、維持管理費そのものを比較していない。

また、施設数が減った理由も全件を個別確認していない。

次に必要なのは、予算・決算と施設カルテを使って、何にいくらかかっているのかを見ることだ。

特に道路除雪、水道・下水道、公共施設維持について、人口減少と費用の関係を個別に追う。

Sources

  • yokote-public-assets-plan: 横手市「横手市財産経営推進計画」
  • yokote-public-facility-individual-plan: 横手市「横手市公共施設個別施設計画」
  • yokote-facility-cards: 横手市「施設カルテ」
  • yokote-public-assets-actions: 横手市「財産経営推進計画策定後の取り組み」
  • yokote-population-vision: 横手市「横手市人口ビジョン」