横手では人手不足だと言われる。

横手市の商工業振興計画も、ハローワーク横手管内で慢性的な人手不足が続いていると整理している。

しかし、地元就職を考える人から見ると「人手不足だから仕事は選び放題」にはならない。

2026年4月のハローワーク横手の職業別求人・求職バランスを見ると、職業計の有効求人倍率は0.93倍だった。

さらに職種ごとに見ると、一般事務は0.24倍、建設・採掘は4.71倍だった。

同じ地域の同じ月でも、仕事を探す側の競争環境は全く違う。

職業計では求人1,495件、求職者1,606人

2026年4月のハローワーク横手では、常用の有効求人数が1,495、有効求職者数が1,606、有効求人倍率は0.93倍だった。

ここでいう有効求人倍率は、求人の人数を仕事を探している人の人数で割ったものだ。

1倍を超えれば求人の方が多く、1倍を下回れば求職者の方が多い。

ただし、この全体倍率だけを見ても就職のしやすさは分からない。

会社が募集している仕事と、求職者が希望する仕事が一致しないからだ。

一般事務は0.24倍

一般事務従事者では、有効求人74に対して有効求職者312。有効求人倍率は0.24倍だった。

フルタイムに限ると、求人41に対して求職者182で0.23倍。

単純には、求人1人分に対して4人以上の求職者がいる計算になる。

これは選考倍率そのものではない。同じ求職者が複数求人へ応募でき、求人票ごとの条件も違う。

それでも「横手は人手不足だから事務職も不足している」とは言えないことは分かる。

地元で事務職だけを希望する場合、地域全体の求人倍率が高くても選択肢は狭くなることがある。

建設・採掘は4.71倍

建設・採掘従事者は、有効求人146に対して有効求職者31。倍率は4.71倍だった。

フルタイムでは146求人に対して24求職者で6.08倍。

さらに内訳を見ると、建設従事者は5.56倍、電気工事従事者4.25倍、土木作業従事者3.53倍だった。

この数字は、建設系に人手需要が強いことを示す。

ただし「倍率が高いから条件が良い」とは限らない。

必要資格、体力、屋外作業、早朝、季節変動、賃金、休日、経験要件などが求職者側の希望と合わなければ、求人は残る。

高倍率の理由を待遇の良さだけで説明しない。

介護も求人超過、一般事務は求職超過

2026年4月の主な職種を並べると差が見える。

職種有効求人数有効求職者数有効求人倍率
一般事務743120.24
情報処理・通信技術者6100.60
社会福祉専門職46500.92
介護サービス102531.92
商品販売96561.71
自動車運転74302.47
建設・採掘146314.71
運搬・清掃・包装等772540.30

この表だけでも、「横手の仕事」という一つの市場は存在しないことが分かる。

職種ごとに需給が違う。

ITも一枚岩ではない

バランスシートでは「IT関連計」は求人63、求職33で1.91倍だった。

一方、その中の情報処理・通信技術者だけを見ると求人6、求職10で0.60倍。

IT関連計には複数の職業分類が含まれるため、「IT求人倍率1.91倍だから横手にSE求人が多い」と読むことはできない。

地方就職を考えるときは、集計区分の名前だけで判断せず、自分が実際に応募できる職種まで下りる必要がある。

「求人がある」と「30年キャリアを作れる」は別

25歳で就職する人にとって、今月の求人倍率は入口にすぎない。

例えば建設職で最初の就職が容易でも、次に確認したいことは多い。

  • 5年後に転職できる会社が何社あるか
  • 施工管理など上位職種へ移れるか
  • 資格で賃金が上がるか
  • 県外でも同じ技能を使えるか
  • 50代まで現場作業を続けられるか

一般事務なら逆に、地域内競争が強い前提で、経理、労務、IT、法務、営業支援など専門性を持てるかが重要になる。

「地元企業へ入る」だけでなく、職種として次へ移れるかを見る。

地場企業には、採用難と求職者余りが同時に存在する

経営者から見ると、この表は「横手には人がいない」という一言で済まないことを示す。

一般事務には多くの求職者がいる一方、建設、運転、介護などでは求人が求職者を上回る。

採用できない職種で必要になるのは、単純な求人広告の追加だけではない。

  • 賃金を上げる
  • 勤務時間を変える
  • 資格取得を会社で支援する
  • 未経験者ができるよう仕事を分解する
  • 機械・ITで必要人数を減らす
  • 他地域から通えるようにする
  • 高齢者や外国人など採用母集団を広げる

どの方法が合理的かは業種によって違う。

人手不足だから賃金が必ず上がるわけでもない

労働市場では、求職者が少なければ企業は賃金を上げて採用しようとする圧力が生じる。

しかし地域企業側にも支払える賃金の上限がある。

売上が地域人口に依存し、価格転嫁できず、人件費だけを上げられない企業では、求人を埋められないまま事業量を縮小する可能性もある。

最低賃金の上昇も、低賃金求人の底上げにはなるが、地域内の中間所得層や専門職の賃金が同じ割合で上がることを意味しない。

賃金については求人倍率と別の記事で扱う。

月次データなので、1か月だけで構造を断定しない

この記事は2026年4月という1か月のスナップショットを使っている。

求人は季節、企業の採用時期、公共工事、観光、農業などで動く。

したがって0.24倍や4.71倍が横手の恒久的な値だとは扱わない。

重要なのは、職種間に大きな差があるという構造が複数月・複数年でも続くかを見ることだ。

Source Registryでは秋田労働局の月次時系列への入口も持ち、今後同じ職種を定期的に比較する。

50年先を見るなら、求人倍率より職種の役割を見る

2070年の求人倍率を現在から予測することはできない。

それより、人口減少で需要がどう変わる職種かを分類する方が有用だ。

  • 人口総数に近く需要が減りやすい仕事
  • 高齢化で一時的に需要が残る仕事
  • 道路・水道・雪など維持対象が残る仕事
  • 企業数が減ると集約される仕事
  • 全国・海外へ売れるため地域人口への依存が小さい仕事
  • 自動化で必要人数が変わりやすい仕事

地元就職を考える人には、「今採用されやすいか」と「30年後も職業として選択肢があるか」の二つが必要になる。

Sources

  • akita-labor-balance-yokote-r8-04: 秋田労働局「令和8年4月の職業別求人・求職バランスシート(ハローワーク横手)」
  • akita-labor-hw-timeseries: 秋田労働局「ハローワーク別求人・求職状況」
  • yokote-commerce-industry-plan-r8-r12: 横手市「第2次横手市商工業振興計画」