横手で暮らすなら車があれば何とかなる。
20代、30代ではそう考えやすい。
しかし2026年に25歳なら、2070年には69歳になる。50年近く同じ地域に住むなら、住宅を選ぶときに「今、自分で運転できるか」だけを見るのは足りない。
横手市はデマンド交通、循環バス、路線バス、代替交通、タクシーなどを組み合わせているが、市の公共交通計画自体が利用者減少を前提に再編を進めている。
車を手放した後の横手は、現在の自家用車生活とは別の条件で考える必要がある。
横手市は東西約45km、南北約35kmある
横手市地域公共交通計画では、市域は692.80km²、東西約45km、南北約35kmとされている。
市内の人口は一か所に集まっているわけではなく、8地域に分散している。
この広さでは、自家用車があれば移動できる場所でも、徒歩や一般的な路線バスだけでは生活しにくい地域がある。
人口が減っても市の面積は小さくならない。
高齢化が進む地域では、移動手段の確保そのものが生活インフラになる。
横手デマンド交通は、市内全域を面的にカバーする
2026年9月時点の横手デマンド交通は、横手地域中心部のバスゾーンを除く横手市内全域を運行範囲としている。
午前7時から午後6時まで、土日祝日も運行し、利用者が乗る場所と降りる場所を予約する乗合型交通である。
誰でも利用でき、市民以外も対象になる。
一方で、普通のタクシーとは違う。
- 利用の1時間以上前までに予約する
- 予約状況によって他の利用者と乗り合う
- 目的地まで遠回りする場合がある
- 経由地やルートを指定できない
- 横手地域中心部では乗降できない区域がある
という条件がある。
「市内全域に交通がある」と「自家用車と同じ自由度で移動できる」は別である。
中心部は循環バスで病院・商業施設・公共施設を結ぶ
横手市循環バスは、横手地域中心部の病院、商業施設、公共施設などを結ぶ。
2026年10月1日からは南ルートと北ルートへ再編され、各10便を運行する予定になっている。
通常運賃は大人1乗車200円、1日乗り放題は400円。
中心部に住む人にとっては、車を手放した後も生活拠点へアクセスする選択肢になる。
ただし、この路線・便数が2070年まで同じ形で続くという意味ではない。
公共交通計画は2028年度までの計画であり、今後も利用者数や運転手、人件費などに応じて再編される可能性がある。
市自身が、免許返納後の移動を支援している
横手市地域公共交通活性化協議会は、自主的に運転免許を返納した市民に公共交通利用回数券12,000円分を1人1回支給している。
対象の回数券は、
- 路線バス・循環バス
- タクシー・デマンド交通
- 代替交通
- 一部の介護タクシー
などで使える。
制度があること自体、免許返納後の交通確保が現実の行政課題になっていることを示す。
ただし12,000円は継続的な移動費を恒久的に賄う制度ではない。
返納時の支援と、その後10年、20年の生活交通は分けて考える必要がある。
公共交通は利用者増加を前提にしていない
横手市地域公共交通計画では、2022年度実績と2028年度目標を比較すると、主要な交通モードの年間利用者目標は増加ではなく減少幅を抑える設定になっている。
計画策定時の数値では、
| 交通 | 2022年度実績 | 2028年度目標 |
|---|---|---|
| 民間路線バス | 347,443人 | 211,997人 |
| 循環バス | 41,505人 | 30,288人 |
| デマンド交通 | 34,874人 | 30,647人 |
となっていた。
これらは2024年策定時の計画値であり、2026年改訂版で個別数値が変更されている可能性があるため、公開前には改訂版の該当表を再確認する。
重要なのは、市の公共交通政策が「利用者が今後どんどん増える」ことを前提にしていない点である。
利用者が減る中で交通をどう維持するかが課題になっている。
車を手放した後に必要なのは、交通手段だけではない
老後に生活できるかは「バスがあるか」だけでは決まらない。
自宅から、
- 食料品店
- 病院・診療所
- 薬局
- 金融機関
- 行政窓口
- 介護サービス
へ何回乗り継ぎ、どのくらい時間がかかるかを見る必要がある。
デマンド交通が市内全域をカバーしていても、予約、待ち時間、料金、乗合という条件がある。
徒歩圏に生活機能が残る場所と、すべての外出で交通サービスを予約する必要がある場所では、同じ「公共交通利用可能」でも生活の負担が違う。
家を買うときに、70歳の自分で場所を見る
25歳で住宅を買う場所を考えるなら、一度だけ次の条件で見てみる価値がある。
自分は70歳で、雪があり、今日は車を運転できない。ここから病院とスーパーへ行けるか。
見るものは、
- 徒歩圏の生活機能
- 循環バス・路線バスの停留所
- デマンド交通の利用条件
- タクシー事業者
- 冬季の歩道・道路
- 坂や除雪状況
- 医療機関までの距離
になる。
土地価格が安い郊外や集落部には魅力がある一方、50年間の移動コストは現在の土地価格にはそのまま表れない。
地元就職者には親の移動問題が先に来る可能性がある
自分が免許を返納するより前に、親が運転できなくなる可能性がある。
地元に残る人は、
- 通院送迎
- 買い物
- 行政手続き
- 介護施設への移動
を家族が担う場面が出るかもしれない。
公共交通が薄い地域では、親の移動が子世代の時間コストになる。
地元就職を考えるとき、通勤時間だけでなく、将来の家族送迎まで含めると住む場所の意味が変わる。
地場企業には「移動できない顧客」が増える市場でもある
高齢化と免許返納が進めば、顧客が自分で店舗へ来る前提の事業は影響を受ける。
一方、
- 訪問サービス
- 配送
- 送迎
- 移動販売
- 訪問介護・看護
- 出張修理
など、事業者側が顧客の場所へ行くサービスの重要性は高まる可能性がある。
ただし、その場合も人口密度が下がれば移動時間が増える。
「需要がある」ことと「採算が合う」ことは別になる。
地場経営者には、顧客数だけでなく1件あたり移動距離を見る必要がある。
自動運転を前提に住宅を買わない
50年の未来を考えると、自動運転やオンデマンド交通の高度化が横手の移動問題を軽くする可能性はある。
一方、普及時期、料金、積雪地での運用、事業採算を現時点で確定できない。
「老後には自動運転があるから大丈夫」を住宅立地の前提には置かない。
実装・導入が確認された技術は、その時点でシナリオを更新する。
50年先まで追う変数
このサイトでは、車を使えない生活について次を更新する。
- 免許保有・返納者数
- 路線バス路線・便数
- 循環バス路線・便数
- デマンド交通利用者数
- タクシー事業者数
- 運転手数
- 運賃
- 医療・商業施設の配置
- 地域別人口
- 高齢者人口
- 交通空白対策
人口だけでなく、車なしで主要な生活機能へ到達できるかを追う。
現時点の答え
2026年の横手市には、車を運転しない人のための交通手段が複数ある。
したがって「車を手放した瞬間に横手では生活できない」とは言えない。
一方、公共交通は自家用車と同じ自由度ではなく、利用者減少を前提に再編を続ける段階にある。
50年間横手に住むなら、車を持てる今の便利さだけで住宅を選ばない方がいい。
見るべきなのは、自分が運転できなくなった後も生活機能へ届く場所かである。
Sources
yokote-public-transport-plan-r6-r10: 横手市「横手市地域公共交通計画」yokote-public-transport-council-r8: 横手市「横手市地域公共交通活性化協議会 令和8年度」yokote-demand-and-loop-bus-r8: 横手市「横手デマンド交通・横手市循環バス」yokote-license-return-support-r8: 横手市「運転免許証自主返納サポート制度」yokote-loop-bus-202610: 横手市「令和8年10月1日からの横手市循環バス」yokote-population-vision: 横手市「横手市人口ビジョン」yokote-population-history: 横手市「横手市の人口(過去データ)」