横手の建設、設備、測量、維持管理、廃棄物、除雪などでは、行政発注が大きな市場になる。
人口が減れば、市の予算も公共工事もすぐ同じ割合で減るように見える。
しかし実際はそれほど単純ではない。
人口が減っても、道路、橋、水道、下水道、消防、学校、公共施設、除雪対象は翌年に同じ割合で消えない。
一方で、市の財政には限界があり、施設統合や事業見直しも進む。
地場企業にとって重要なのは「公共工事は将来なくなるか」ではなく、自治体から発注される仕事の種類と資金源がどう変わるかを見ることだ。
横手市の2026年度予算は全会計で1000億円を超える
2026年度の横手市当初予算は、一般会計が576億7,100万円、全会計では1,011億8,890万円となっている。
この全額が民間企業へ発注されるわけではない。
人件費、扶助費、繰出金、公債費なども含むため、予算総額をそのまま地場企業の市場規模として扱ってはいけない。
それでも、市が地域内で非常に大きな資金配分主体であることは変わらない。
道路、水道、建築、農林、廃棄物、消防、システム、調査、施設管理など、自治体の業務は多くの民間事業者と接続している。
発注は建設部だけではない
横手市は2026年度から、建設工事と建設コンサルタント等業務の発注予定を四半期ごとに公表している。
7月公表分を見ると、発注予定は次の部局にまたがっている。
- 総務企画部
- まちづくり推進部
- 市民生活部
- 農林部
- 建設部
- 教育総務部
- 上下水道部
- 消防本部
4月公表分では財務部、健康福祉部、商工観光部、教育指導部なども含まれていた。
つまり、公共需要は「道路工事だけ」ではない。
公共施設の修繕、上下水道、農業基盤、消防、学校、設備、調査、設計など、市役所の複数部門が発注者になる。
地場企業の事業領域を考えるとき、担当部署の数は市場の分散度を見る一つの指標になる。
2026年度だけでも、維持・更新系の大きな事業がある
2026年度一般会計の主な普通建設事業では、過疎対策事業債を活用する事業として13億3,130万3千円が計上されている。
その中には、例えば次が含まれる。
- 浄化槽整備助成事業 9,022万円
- くらしのインフラ整備事業 1億3,920万円
- 社会資本整備総合交付金等事業(道路)7,800万円
- 除雪機械購入事業 1億7,302万3千円
- 常備消防施設等整備事業 2億4,290万6千円
これらを見ると、人口減少下の公共投資がすべて「新しいものを作る」需要ではないことが分かる。
既存インフラを維持する、機械を更新する、生活排水を処理する、安全設備を更新するといった仕事が含まれる。
人口が減るほど、新設より維持・更新・統合の比重が高まる可能性がある。
人口が減っても、公共需要は比例して減らない
横手市では人口が減る一方、道路延長や上下水道管路は人口と同じ速度では減っていない。
除雪対象も広い。
こうした地理的なインフラは、住民が残る限り一定の維持が必要になる。
そのため、人口が20%減ったから道路維持費も20%減る、という関係にはならない。
むしろ一人あたりで支えるインフラ量が増えることもあり得る。
この点だけを見ると、建設、設備、点検、除雪などは人口減少下でも仕事が残りやすい。
ただし「仕事が残る」と「企業が儲かる」は別である。
発注量、単価、人件費、資材費、競争参加者、入札制度、技術者配置などで採算は変わる。
公共需要が残るほど、自治体財政の制約が重要になる
公共インフラは必要だからといって、無制限に維持できるわけではない。
横手市の2026年度一般会計歳入では、自主財源より依存財源の割合が高く、地方交付税も大きな割合を占める。
地方債も公共投資の資金源になる。
市の財政計画では、基金と地方債残高を管理しながら将来の事業を進める前提になっている。
地場企業が自治体発注に依存する場合、自社の売上は市内人口だけでなく、次にも左右される。
- 国の交付税制度
- 国・県の補助制度
- 過疎対策事業債など地方債制度
- 市の基金
- 大型施設整備
- 災害・豪雪
- インフラ更新時期
- 市の施設統廃合方針
民間需要より制度依存度が高い市場になる。
「公共工事が多い会社」は一種類ではない
自治体売上比率が高い会社でも、事業構造は違う。
例えば次のように分けられる。
新設型
新しい道路、建物、施設など大型整備の比重が高い。
大型案件の有無で年度ごとの売上が動きやすい。
維持型
道路補修、除雪、管路、施設設備、保守点検など既存資産の維持が中心になる。
人口減少下でも需要が残る可能性がある一方、人手不足で現場を回せないリスクがある。
制度型
浄化槽、廃棄物、福祉、指定管理、委託業務など行政制度と強く結びつく。
制度変更や広域化で市場構造が変わる可能性がある。
専門型
測量、設計、橋梁点検、システム、調査など専門資格・設備・知識を必要とする。
案件数が少なくても競争者が限定される場合がある。
自社がどれに近いかで、人口減少の影響は違う。
地場経営者が見るべきは「公共売上比率」だけではない
自治体依存を測るなら、単純に売上の何割が公共かを見るだけでは足りない。
少なくとも次に分けた方がいい。
- 横手市発注
- 秋田県発注
- 国発注
- 他自治体発注
- 民間法人
- 個人
さらに公共売上の中でも、
- 新設
- 維持管理
- 災害対応
- 除雪
- 設計・点検
- 長期委託
を分ける。
横手市の大型施設整備が終わっても、県や他市町村へ営業できる会社なら売上経路は残る。
逆に「横手市の特定部署の特定事業」に売上が集中していれば、その事業終了の影響が大きい。
2030年までは、発注の中身が変わるかを見る
2026年に事業を経営しているなら、2030年は遠くない。
この期間では人口そのものより、現在の計画と予算の変化を追う方が重要になる。
見るものは次になる。
- 毎年度の発注予定件数
- 工種別の予定
- 契約結果
- 普通建設事業費
- 維持補修費
- 除雪関連費
- 上下水道の投資
- 公共施設の統廃合
発注予定と契約結果を分けて保存すれば、「市が何をしようとしたか」と「実際に誰がいくらで受注したか」を後から比較できる。
このサイトでは今後、発注予定の時系列化も検討する。
2040年には「作る会社」から「減らす会社」への転換もあり得る
人口減少と公共施設再編が進めば、仕事の内容は変わる可能性がある。
例えば、
- 新築
- 拡張
よりも、
- 長寿命化
- 統合
- 解体
- 省エネ改修
- 遠隔監視
- 点検
- 管路更新
- 除雪省人化
の比重が高まる可能性がある。
これは公共投資が消えるという意味ではない。
人口増加期に作った資産を、人口減少期にどう維持し、どう減らすかという市場へ変わるということだ。
地場企業が設備、人材、資格をどちらへ寄せるかは経営判断になる。
2050年以降は、発注者側も人が足りない
自治体は発注するだけの存在ではない。
設計、積算、監督、検査、施設管理、住民調整を行う職員も必要になる。
横手市は長期に職員数を減らしてきた一方、現在の定員適正化計画では削減一辺倒ではなく必要人員の確保を重視している。
将来、行政側の技術職・事務職が不足すれば、民間委託の範囲が広がる可能性もある。
反対に、広域化や共同発注で業務自体をまとめる可能性もある。
ここでも方向は一つではない。
民間事業者にとっては、「市が発注する工事量」だけでなく「市がどこまで自前で業務を持つか」も市場になる。
地元就職者には、公共需要が職種の安定性と接続する
建設、設備、廃棄物、上下水道、測量などへ就職する人にとって、自治体需要は会社の売上構造に関係する。
人口が減る地域で働くなら、会社を見るときに次を確認する価値がある。
- 公共と民間の売上構成
- 維持管理と新設の比率
- 横手市以外でも受注しているか
- 必要資格を会社任せにせず自分も取得できるか
- 元請か下請か
- 入札参加資格や格付け
- 技術者の年齢構成
公共需要があるから安泰、とも、人口減少だから公共工事は終わる、とも言えない。
会社がどの需要へ適応しているかを見る。
公共需要は「残る仕事」だが、同じ形では残らない
人口が減っても、道路、雪、水、廃棄物、消防、学校、公共施設をすぐなくすことはできない。
だから自治体需要には一定の粘着性がある。
一方で、施設は実際に減っている。財政制約もある。発注方法や広域化も変わり得る。
地場企業にとって長期で重要なのは、公共工事の総量を当てることではない。
人口減少期に行政が何を維持し、何を統合し、何を外注するかを追うことだ。
そこに次の仕事が現れる。
現時点で分からないこと
この記事では、横手市内の各企業について公共売上比率を把握していない。
また、発注予定表の全案件を金額集計し、市内建設市場全体に占める横手市発注の割合を算出していない。
主要普通建設事業の数字も、市の全公共調達額を示すものではない。
今後、発注予定、契約結果、決算、県・国発注を時系列で整理し、公共需要の規模と構成を確認する。
Sources
yokote-budget-overview-r8: 横手市「令和8年度 横手市当初予算の概要」yokote-budget-r8: 横手市「横手市の予算 令和8年度」yokote-procurement-schedule-r8: 横手市「令和8年度発注予定表」yokote-procurement-results-r8: 横手市「令和8年度入札結果」yokote-budget-construction-r8: 横手市「令和8年度 横手市一般会計予算の主な普通建設事業一覧」yokote-financial-plan-r8-r12: 横手市「横手市財政計画」