人口が減れば、公共工事も同じ割合で減る。
地場の建設・設備会社から見ると、そう考えたくなる。
しかし横手市の発注を追うと、もう少し複雑だ。
新しい人口増加を前提にした施設整備は減っていく可能性がある一方、すでに存在する道路、橋、上下水道、衛生施設、学校、消防施設などは維持しなければならない。
人口が減っても、既存ストックは突然消えない。
公共需要は「新しく作る仕事」から「止めない・直す・減らす・つなぎ替える仕事」へ移る。
2023年、2024年、2025年、2026年でも維持更新の発注が続く
横手市の入札結果を年度をまたいで見ると、既存施設を維持するための仕事が繰り返し出てくる。
例として、
- 2023年度: 横手衛生センター汚泥焼却炉ファン設備補修工事
- 2024年度: 横手衛生センタートラックスケール設備更新工事
- 2025年度: 横手市道路橋定期点検業務委託
- 2026年度: 横手市道路橋定期点検業務委託
などが確認できる。
これらは人口を増やすための新規施設ではない。
すでにある生活基盤を使い続けるための仕事だ。
橋は人口が減ったから点検しなくてよくなるわけではない
道路橋の定期点検は象徴的だ。
住民が減っても、その橋を使う道路が供用されている限り、安全確認が必要になる。
しかも橋、道路、上下水道などは、建物のように一施設を廃止して終わりにしにくい。
道路網の途中だけを簡単に消せないからだ。
横手市では建物系公共施設が2015年度当初909施設から2024年度末738施設へ減っている一方、道路延長はほぼ変わっていない。
人口減少下で公共需要を考えるとき、この違いは大きい。
衛生センターも、使い続ける限り更新が発生する
横手衛生センターでは、年度をまたいで設備補修・更新の発注が確認できる。
焼却炉のファン、トラックスケールなど、施設全体を新設するほど目立たない設備でも、壊れれば処理業務へ影響する。
人口が減れば、ごみやし尿などの総量が減る可能性はある。
しかし施設が稼働している限り、設備更新をゼロにはできない。
むしろ処理量が減る中で、
- いつまで今の施設を更新するか
- 別施設へ集約するか
- 広域化するか
- 既存設備を延命するか
という判断が重要になる。
下水道処理場の統合と同じ構造だ。
発注予定は一つの部局だけではない
2026年度の発注予定は、建設部だけに並んでいるわけではない。
市の公表では、総務企画、まちづくり、市民生活、農林、建設、教育、上下水道、消防など複数部局に工事・建設コンサルタント業務がまたがっている。
公共インフラ関連の仕事を「土木工事」だけで見ると狭すぎる。
実際には、
- 道路
- 橋梁
- 建築
- 電気
- 機械
- 水道
- 下水道
- 消防
- 学校
- 衛生
- 測量
- 設計
- 地質調査
- 点検
などへ分かれる。
地元で技術職として働く人にとっても、公共需要がどの技能へ残るかを見る必要がある。
公共施設を減らすこと自体にも仕事がある
横手市は公共施設を実際に減らしている。
しかし施設削減は、仕事がゼロになることではない。
施設を一つなくす場合でも、
- 現況調査
- アスベスト等の調査
- 解体設計
- 解体工事
- 設備撤去
- 跡地整備
- 機能移転
- 複合化
- 代替施設改修
が発生する。
施設統合なら、残す施設側の増築・改修が必要になることもある。
人口減少期の建設市場では、「新築が減る」と「仕事がなくなる」を同じ意味にしない方がいい。
ただし、公共需要があるから地場企業は安泰とは言えない
維持更新需要が残ることと、個々の会社の売上が維持されることは別だ。
公共発注には、
- 市の財政
- 国・県補助
- 起債
- 予定価格
- 入札制度
- 技術者要件
- 施工実績
- 競争参加資格
が関わる。
仕事が大型化すれば、小規模企業では受注しにくくなることもある。
逆に、小規模な維持補修や緊急対応では地元企業の地理的な強みが残る場合もある。
だから地場企業は「公共工事総額」だけでなく、案件サイズと必要資格を見る必要がある。
施設統合は発注を大型化させる可能性がある
人口減少下では、小さな施設を各地域に一つずつ持つより、拠点へまとめる方向が出てくる。
学校、下水処理、公共施設ですでに統合の例がある。
その場合、
小規模施設を多数維持
↓
統合工事・接続工事
↓
大規模拠点を少数維持
という変化が起こり得る。
発注件数が減っても、一件あたり規模が大きくなる可能性がある。
これは企業集約ともつながる。
大型案件を受けられる企業へ仕事が寄れば、地場企業の数は減っても一社あたり受注範囲が広がることがある。
人手不足が公共インフラ維持の制約になる
発注する予算があっても、工事する人がいなければ維持できない。
横手の職業別求人では、建設関連で求人超過が強い。
人口減少期には、公共需要の減少より先に施工能力が減る可能性もある。
その場合、問題は「仕事がない」ではなく、
必要な工事を誰がやるのか
になる。
自治体側では発注時期の平準化、工事集約、包括委託などが必要になるかもしれない。
企業側では省人化、機械化、技能者育成、事業承継が重要になる。
地元就職者には、維持管理技能が長期キャリアになる可能性がある
25歳で横手の建設・設備分野へ入るなら、50年後まで新築件数が増え続ける前提には立てない。
一方、現在あるインフラは2050年、2070年へ向けてさらに古くなる。
長期的に価値が残りやすいのは、
- 点検
- 診断
- 補修
- 更新
- 施工管理
- 設備保全
- 統合設計
- 維持管理計画
のような、既存ストックを扱う技能かもしれない。
これは「公共工事に就職すれば安泰」という話ではない。
市外でも使える資格・経験へ変換できるかが重要になる。
発注予定だけを数えても需要は分からない
横手市は発注予定表を公開している。
2026年度からは四半期ごとの公表へ変更した。
ただし予定案件は変更・取消・時期変更があり得る。
実際の市場を見るには、
発注予定
↓
入札公告
↓
入札結果
↓
契約額
↓
変更契約
↓
完成
まで追う必要がある。
さらに、同じ橋梁点検が毎年・周期的に出るのか、新規建設が減って維持管理比率が上がっているのかを数年単位で見る必要がある。
このサイトでは公共需要を時系列データにする
今後は少なくとも2023年度以降について、公開されている発注・入札情報から次を蓄積したい。
- 年度
- 部局
- 工種
- 新設 / 更新 / 補修 / 点検 / 解体 / 統合
- 発注方式
- 予定時期
- 契約時期
- 契約額
- 受注者所在地
これが貯まれば、
- 新設から維持更新へ本当に比重が移っているか
- どの業種に公共需要が残っているか
- 市内企業への発注がどう変わっているか
- 案件が大型化しているか
を確認できる。
人口減少下の地場企業を見るには、人口だけでなく自治体が何を直すために金を使い続けているかを見る必要がある。
現時点の結論
横手の公共需要は、人口減少と同じ割合では消えない。
道路、橋、衛生施設、上下水道、学校など既存ストックが残る限り、点検、補修、更新、統合、解体の仕事が発生する。
ただし、その需要が現在と同じ企業数・同じ工種・同じ案件規模で続くとは限らない。
50年先へ向けて見るべきなのは公共工事が「減るか」より、
新設・維持・更新・統合・撤去のどこへ仕事が移っているか
になる。
Sources
yokote-procurement-index: 横手市「入札発注情報・入札結果」yokote-procurement-schedule-r8: 横手市「令和8年度発注予定表」yokote-procurement-schedule-r7: 横手市「令和7年度発注予定表」yokote-procurement-results-r8: 横手市「令和8年度入札結果」yokote-procurement-results-r7: 横手市「令和7年度入札結果」yokote-procurement-results-r6: 横手市「令和6年度入札結果」yokote-procurement-results-r5: 横手市「令和5年度入札結果」yokote-budget-construction-r8: 横手市「令和8年度当初予算の概要」yokote-public-assets-actions: 横手市「財産経営推進計画策定後の取り組み」