人口が減っているのに、横手市は公共施設をそのまま残しているのか。
答えは違う。
横手市の財産経営推進計画(FM計画)の進捗を見ると、建物系公共施設は2015年度当初の909施設から2024年度末には738施設へ減っている。
171施設、18.8%の減少になる。
一方、道路や上下水道などの線状インフラはほとんど縮んでいない。むしろ延長が増えたものもある。
この差が、人口減少下の横手を考えるうえで重要になる。
909施設から738施設へ
FM計画進捗資料の施設数は次のように推移している。
| 時点 | 建物系公共施設数 |
|---|---|
| 2015年度当初 | 909 |
| 2016年度末 | 844 |
| 2017年度末 | 837 |
| 2018年度末 | 823 |
| 2019年度末 | 814 |
| 2020年度末 | 803 |
| 2021年度末 | 776 |
| 2022年度末 | 765 |
| 2023年度末 | 746 |
| 2024年度末 | 738 |
9年間で171施設減った。
ただし、この数字を「171の行政サービスがなくなった」と読むのは間違いである。
建替え、統合、複合化、譲渡、解体などが混ざっている。
学校は26から20、集会施設は123から85
主な分類を見ると減り方には差がある。
| 分類 | 2015年度当初 | 2024年度末 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 消防施設 | 228 | 201 | -27 |
| 学校 | 26 | 20 | -6 |
| 高齢福祉施設 | 19 | 12 | -7 |
| 保育所 | 14 | 2 | -12 |
| 集会施設 | 123 | 85 | -38 |
| スポーツ施設 | 42 | 36 | -6 |
施設数が減る理由は分類ごとに違う。
保育所は民営化や統合、学校は統廃合、集会施設は地域への譲渡や廃止など、単純な解体だけではない。
そのため「施設数が減った=サービスが同じ割合で低下した」とは書かない。
ただ、行政が保有する建物の総量を減らしていること自体は確認できる。
2024年度だけでも統合・解体・譲渡が進んだ
横手市が公表する2024年度の主な動きには、例えば次がある。
- 三重地区交流センターへ複数施設の機能を統合
- 旧西部斎場を解体
- 旧十文字文化センターを解体
- 旧障害者支援施設2施設を譲渡
- 旧ペットボトル等処理センターを譲渡
一方で、横手市生涯学習館Ao-naの取得や天下森スキー場ヒュッテの建替えなど、新しく持つ施設もある。
縮退は「何も新しく作らない」という意味ではない。
古い施設を減らし、必要と判断した機能には新しく投資するという入れ替えになる。
建物は18.8%減ったのに、道路はほとんど減っていない
同じFM計画進捗資料にはインフラ延長も載っている。
2015年度当初から2024年度末までを比べると、
| インフラ | 2015年度当初 | 2024年度末 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 道路 | 2,210km | 2,206km | -0.2% |
| 上水道管路 | 938km | 954km | +1.7% |
| 下水道管路 | 327km | 350km | +7.0% |
建物系公共施設が18.8%減った期間に、道路延長はほぼ変わっていない。
上水道と下水道は延長が増えている。
これは「行政がインフラ縮小をしていないから悪い」という話ではない。
既に住民が暮らし、住宅や事業所が存在する場所では、道路や管路を簡単に廃止できないからだ。
人口減少より物理的なまちの縮小が遅い
2005年度末の横手市人口は105,616人、2025年度末は78,175人で、20年間に約26%減った。
公共施設については2015年度以降にかなり再編が進んでいる。
しかし道路や管路は、人口と同じ割合で短くなっていない。
人口が減っても、住宅が市内の広い範囲に残る限り、
- 道路を補修する
- 雪を除く
- 水を送る
- 排水を流す
- 橋を点検する
必要がある。
人口減少地域の行政コストで重いのは、この「人は減るが地理は残る」部分になる。
移住者は公共施設より、生活圏全体を見る
移住先を探すとき、近くに公民館や体育館があることは現在の利便性になる。
ただ、50年間暮らすなら、その施設が現在存在するかだけでは足りない。
- 代替施設があるか
- 統合されたとき何km移動するか
- 車が必要か
- 冬も行けるか
- 学校や医療など別の生活機能が同じ方向に集約されているか
を見る必要がある。
施設再編が続く地域では、建物単体より「将来も生活機能が集まりやすい場所か」を見る方が長期判断に向いている。
地元就職者には、公共施設再編が仕事の中身にも影響する
公共施設を減らすことは、建設・設備の仕事がなくなることではない。
むしろ、
- 解体
- 改修
- 長寿命化
- 複合化
- 設備更新
- 維持管理
- 跡地活用
へ仕事が移る。
新築中心の需要と、既存ストック再編の需要では必要な技能が違う。
横手で建設・設備分野に長く働くなら、「新しい建物を作る技能」だけでなく「古いものを評価し、直し、統合する技能」が重要になる可能性がある。
地場企業には施設統廃合が市場再編として効く
公共施設関連売上がある会社にとって、施設数減少は単なる市場縮小ではない。
施設が減れば小規模な維持管理件数は減る可能性がある一方、残す施設には大規模改修や長寿命化投資が集中する可能性がある。
さらに解体、移転、複合化、新施設整備が発生する。
会社側では、
- どの施設類型が減っているか
- どこへ機能が集約されているか
- 新築と維持更新の発注比率
- 小規模工事と大型工事の比率
まで見た方がいい。
8地域を今の形で維持する問いにつながる
公共施設再編は、8地域の将来と直接つながる。
横手市内では2005年度末から2025年度末までの人口減少率が、横手地域約17%減に対して山内地域約41%減など、大きく異なる。
人口が減る地域で、地域局、交流施設、学校、スポーツ施設、福祉施設などをどこまで維持するかは、今後も判断が必要になる。
ただし「人口が少ない順に施設が全部消える」とは言えない。
地理、災害、交通、代替施設、地域機能などを考慮する必要がある。
50年先では施設数より「到達時間」を追いたい
施設数だけでは暮らしやすさを測れない。
このサイトでは今後、
- 学校までの距離
- 医療施設までの距離
- 地域局・行政窓口までの距離
- 体育・文化施設までの距離
- 公共交通で到達できるか
- 冬季の移動時間
も見たい。
1施設減っても隣の施設が2km先なら影響は小さいかもしれない。20km先なら意味が変わる。
人口減少社会では、施設数より「残った生活機能へ何分で行けるか」の方が住民にとって重要になる。
Sources
yokote-public-assets-plan: 横手市「横手市財産経営推進計画」yokote-public-assets-actions: 横手市「横手市財産経営推進計画策定後の取り組み」yokote-public-facility-individual-plan: 横手市「横手市公共施設個別施設計画」