横手の農業人口は減っている。

それでも、水路、農道、法面、ため池、農地周辺の草は残る。

農業者が減れば農村の維持作業も同じ割合で消えるわけではない。

横手市の多面的機能支払交付金では、農地法面の草刈り、水路の泥上げ、農道の路面維持、施設の軽微な補修などを地域共同活動として支援している。

制度上、農業者だけでなく農業者以外の地域住民や団体も活動組織の構成員になれる。

ここに、人口減少下の農村で起きる問題がよく表れている。

農地を耕す仕事と、地域を維持する仕事は別

農業というと、田植え、稲刈り、果樹栽培などの生産作業を想像しやすい。

しかし農村では、それとは別に共同で維持される設備や土地がある。

横手市が多面的機能支払の対象として挙げているのは、例えば次のような作業だ。

  • 農地法面の草刈り
  • 水路の泥上げ
  • 農道路面の維持
  • 水路・農道・ため池の軽微な補修
  • 遊休農地の有効活用
  • 地域住民による直営施工

これらは特定の一枚の田んぼだけの問題ではない。

水路や農道は複数の農地・住民が共有して使う地域インフラである。

そのため、一軒の農家が廃業しても管理作業がゼロになるとは限らない。

2025年度も28協定、500人が中山間農地維持へ参加している

横手市の2025年度中山間地域等直接支払事業では、横手、増田、雄物川、大森、山内の5地域で28協定があり、参加者は合計500人だった。

交付対象面積は3,131,812平方メートル、交付金額は26,261,400円。

この数字だけで市内農村全体の維持作業量を示すことはできない。

制度対象外の地域や、別制度、個人管理もあるからだ。

ただし、少なくとも現在も数百人単位の地域共同活動が制度として存在していることは分かる。

農業委員会は「隣の農家が代わりに管理せざるを得ない」状況も指摘している

横手市農業委員会の意見書では、条件不利農地や遊休農地について、制度だけでは対応できない場合があると指摘している。

その結果、隣接する優良農地で営農する法人や農業者が、所有者に代わって、

  • 小用排水路の泥上げ
  • 草刈り
  • 病害虫に感染した樹木の伐採

などをせざるを得ない状況があるとしている。

これは重要な点だ。

農地の利用者が減ると、残った担い手に生産面積だけでなく周辺管理まで集中する場合がある。

農地集約が進めば経営面積は大きくできても、管理対象が地理的に分散していれば移動と維持作業は重くなる。

「担い手へ集約すれば解決」でもない

横手市の人・農地プランの説明では、担い手側も分散した農地を無秩序に集積してきた結果、新たな借受けが難しくなりつつあるとされている。

規模拡大には限界がある。

一人の農業者や一法人が、

  • 離れた田んぼ
  • 水路
  • 農道
  • 法面
  • 周辺の遊休農地

まで際限なく管理できるわけではない。

人口減少下の農地政策では、面積を誰かへ移すだけでなく、管理しやすいまとまりへ再編できるかが重要になる。

地元就職者にも関係する

農業を本業にしない人でも、農村部に住めば地域共同活動に関わる可能性がある。

多面的機能支払の活動組織には非農業者の地域住民も参加できる。

地域によっては、会社員が休日に草刈りや水路清掃などへ参加することもあり得る。

参加の頻度や実態は地域ごとに違うため、「農村部へ住めば必ず何時間作業する」と一般化はしない。

ただし、住宅価格や通勤時間だけでなく、地域インフラを住民がどこまで共同管理しているかは移住・住宅選びの材料になる。

地場企業にも影響する

農地・水路・農道の維持は、農業法人だけの市場ではない。

作業を住民だけで担えなくなれば、

  • 草刈り
  • 浚渫
  • 小規模土木
  • 水路補修
  • 道路補修
  • 樹木伐採
  • 遠隔監視

などを外部事業者へ移す可能性がある。

人口減少は地域作業を消すのではなく、「住民共同作業から有償サービスへ変える」こともあり得る。

これは地場建設、造園、農業支援、設備、DX事業者にとっては市場再編になる。

50年先に残す農地と管理できない農地を分ける必要が出る

すべての農地を現在と同じ密度で維持できるとは限らない。

すでに果樹では、作業条件の悪い園地と維持する園地を分ける方向が計画に出ている。

水田や中山間農地でも、担い手・アクセス・水管理・災害リスク・集約性によって維持可能性は変わる。

2050年、2070年に向けて見るべきなのは、農地面積だけではない。

  • 管理主体
  • 共同活動参加者数
  • 水路・農道の維持延長
  • 担い手一人あたりの管理面積
  • 管理できず遊休化した農地
  • 外部委託された作業量

を追う必要がある。

横手の縮退は「人が減る」より「残った人に仕事が寄る」形でも起きる

道路、除雪、消防団、町内会、農地管理には共通点がある。

利用者や住民が減っても、対象となる地理や設備がすぐには縮まない。

その結果、残った人へ仕事が寄る。

このサイトでは人口減少を人口グラフだけで追わない。

誰が、どの作業を、何人で維持するのかまで見る。

Sources

  • yokote-multifunctional-payment-r8: 横手市「多面的機能支払交付金」
  • yokote-hilly-payment-r7-result: 横手市「令和7年度中山間地域等直接支払事業の実施状況」
  • yokote-agriculture-committee-opinion-r8: 横手市農業委員会「令和8年度施策に向けた意見書」
  • yokote-agriculture-plan-r8-r17-current-state: 横手市「第3次横手市農業振興計画」