人口が減るなら、下水道も人口と同じ割合で小さくすればいい。
実際の横手市では、そう単純には進んでいない。
市は人口減少や施設老朽化を前提に、生活排水処理を少なくとも三つの方法で組み替えている。
- 小さな処理場を止め、大きな処理系へ接続する
- 公共下水道の未整備区域では、なお管路整備を進める
- 集合処理が経済的でない区域では、合併処理浄化槽による個別処理を使う
つまり、横手の下水道の未来は「全部を縮める」でも「全部を下水道につなぐ」でもない。
地域ごとに処理方式を選び直しながら、処理拠点は集約する。
この再編はすでに始まっている。
2016年時点で、人口減少を前提に統合が検討されていた
横手市は2016年の生活排水処理構想で、将来人口、整備費、維持管理費、施設更新、地理条件などを踏まえ、集合処理と個別処理を比較している。
長期計画では、大森、十文字、山内など複数の処理区について、既存処理場を維持する場合と、別の処理区・流域下水道へ接続する場合を比較した。
これは「人口が減ったから最近になって慌てて統合を考え始めた」という話ではない。
少なくとも2010年代から、複数の小規模処理施設を長期間維持し続けることが合理的かを検討してきた。
ただし、2016年の構想は現在の完成状況そのものではない。
計画と実績は分けて見る必要がある。
山内では、実際に処理場を一つ止めた
統合が完了した例が山内相野々処理区だ。
横手市の2023年12月定例会市政方針では、相野々処理区を横手処理区へ接続する工事が完成し、2023年10月1日から流域関連公共下水道への流入を開始したとしている。
これに伴い、山内浄化センターは稼働を停止した。
ここでは、人口減少下のインフラ再編がかなり分かりやすい形で実行されている。
小規模な独立処理場を維持
↓
接続管路を整備
↓
より大きな処理系へ流す
↓
旧処理場を停止
処理場を一つ減らしても、生活排水処理サービス自体をなくしたわけではない。
処理する場所を集約した。
人口減少地域で今後増える可能性があるのは、このタイプの縮退だ。
市の経営戦略も、処理場数を減らす方向を置いている
2023年改定の横手市下水道事業経営戦略では、処理場維持管理費を抑えるため、14あった処理区・処理場を2025年度末までに11、2035年度末までに10へ統合する目標を置いている。
山内の接続も、この流れの中にある。
処理施設には、利用者が減っても必要になる固定的な費用がある。
- 電気
- 機械設備
- 点検
- 修繕
- 汚泥処理
- 更新工事
- 運転管理
人口が減り、処理水量や使用料収入が減っても、処理場を1施設維持するための費用が同じ割合で減るわけではない。
だから、小規模施設をいくつも持つより、接続可能な地域では処理拠点を減らす方が合理的になる場合がある。
ただし、統合は「決めれば終わる」わけではない
大森地区では、その難しさが実際に表面化している。
大森、十日町、本郷の3処理区を新大森浄化センターへ統合する計画では、2023年度の上下水道部総括で統合施設の整備工事完了と、翌年度の切替予定まで示されていた。
しかし2024年度総括では、補修工事後も新施設を供用開始できず、既存施設を引き続き稼働していることが確認できる。
工事をめぐっては、市議会に調査特別委員会が設置され、2023年から2025年にかけて工事瑕疵、補修、契約、検査などが調査対象となった。
2025年9月には、大森・十日町・本郷の旧3浄化センターを廃止して新施設へ統合するための条例改正案が提出されたが、市議会だよりでは本会議で否決されたことが確認できる。
さらに2026年3月にも、大森浄化センターの地質調査業務委託が発注されている。
これは人口減少下のインフラ再編を考えるうえで重要な事例だ。
統合すると理論上安くなることと、統合工事を予定どおり完了できることは別問題になる。
新施設の設計、施工、地盤、検査、議会、追加工事が絡めば、統合そのものにも大きなコストとリスクがある。
施設を減らす一方で、公共下水道区域はまだ広げている
横手市は、下水処理場を減らすだけではない。
2026年2月の公共下水道事業計画変更では、流域関連公共下水道横手処理区の汚水区域面積を2,076.4haから2,090.3haへ変更し、事業計画期間を2031年3月31日まで延長している。
人口が減っている自治体でも、下水道整備が完全に終了したわけではない。
既存の小規模処理場は集約しながら、一定の市街地では公共下水道の区域を広げる。
一見すると逆向きの政策に見えるが、目的が違う。
- 処理場統合: 処理拠点を減らし、維持管理を効率化する
- 管路整備: 集合処理が合理的な区域の未普及を解消する
「人口減少だから新しいインフラ工事はもうしない」という状態ではない。
そして、全部を公共下水道にはしない
横手市の生活排水処理は公共下水道だけではない。
集落排水施設があり、さらに集合処理区域外では合併処理浄化槽による個別処理が使われる。
市は生活排水処理構想で、集合処理と個別処理をライフサイクルコスト等から比較する考え方を採っている。
住宅が広く点在する地域で、すべての家まで長い管路を延ばせば合理的とは限らない。
人口密度がさらに下がれば、この問題はより大きくなる。
管路は一度造れば終わりではなく、将来交換する必要がある。
利用者が少ない地域ほど、1世帯あたりに対応する管路延長が長くなる可能性がある。
そのため横手の50年後を考えるときは、
下水道区域か、浄化槽区域か
という現在の区分だけでなく、
この場所を2070年まで集合処理で維持する合理性があるか
まで見た方がいい。
地元就職者には、住宅選びの問題でもある
25歳で横手へ就職し、その後住宅を取得するなら、排水方式は地味だが長期コストに関係する。
確認したいのは次のような項目だ。
- 公共下水道区域か
- 接続可能時期はいつか
- 集落排水か
- 浄化槽か
- 浄化槽なら維持管理・清掃・法定検査が必要か
- 将来、処理区域再編の対象になり得るか
- 使用料や維持管理費が人口減少でどう変わるか
住宅価格だけ比較しても、この違いは見えない。
50年間住むなら、家の設備だけでなく、その家を支える地域インフラの方式まで見た方がいい。
地場企業には「建設需要がなくなる」ではなく、仕事の中身が変わる
人口が減る地域でも、下水道・浄化槽関連の仕事がそのまま消えるとは限らない。
むしろ再編では、別の仕事が発生する。
- 接続管路工事
- 処理施設統合
- 旧施設撤去・転用
- 管路更新
- 機械電気設備更新
- 浄化槽設置
- 保守点検
- 清掃
- 法定検査
- 汚泥運搬・処理
新規整備中心から、維持管理、更新、集約、個別処理へ比重が移る可能性がある。
地場の建設・設備・環境関連企業にとっては、「人口が減るから仕事量が減るか」だけではなく、発注される工程が何へ変わるかを見る必要がある。
50年先は、管路と処理場を別々に見る
2026年に25歳なら、2070年には69歳になる。
その間に人口は大きく減る公的推計がある。
しかし、下水道施設は人口と同じ速度では縮められない。
処理場は統合できても、居住が残る場所への管路は必要になる。
逆に、住宅密度が極端に低くなる区域では、長い管路を更新し続けるより個別処理へ寄せる方が合理的になる可能性もある。
このサイトでは今後、次を継続して追う。
- 処理場数
- 各処理場の統合状況
- 公共下水道区域面積
- 管路延長
- 水洗化人口・接続率
- 使用料収入
- 維持管理費
- 更新投資
- 浄化槽設置数
- 地域別人口
これらが揃えば、「人口が減る横手で、生活排水処理1人あたりの負担がどう変わるか」をより具体的に見られる。
現時点で断定しないこと
2016年の長期計画に書かれた統合案を、すべて現在完了済みとは扱わない。
特に大森は、計画、工事完成、補修、議会審議、地質調査が別時点に存在するため、最新の供用状態を継続確認する必要がある。
また、処理場統合が必ず財政負担を下げるとも断定しない。接続管路、新施設整備、補修、撤去などの初期費用を含めた評価が必要になる。
人口減少地域のインフラ再編は、単なる撤退ではない。
残すサービスを、より少ない人口と担い手でどう維持するかという実装問題である。
Sources
yokote-wastewater-concept-2016: 横手市「生活排水処理構想」yokote-wastewater-longterm-2016: 横手市「生活排水処理構想 長期計画」yokote-sewer-strategy-2023: 横手市「下水道事業経営戦略」yokote-sannai-connection-2023: 横手市「令和5年12月定例会 市政方針」yokote-sewer-r5-department-summary: 横手市「令和5年度 上下水道部下水道課 方針書総括」yokote-sewer-r6-department-summary: 横手市「令和6年度 上下水道部 方針書総括」yokote-omori-special-committee-r5-r7: 横手市議会「大森浄化センター整備事業に関する調査特別委員会」yokote-omori-ordinance-r7: 横手市「横手市集落排水施設条例の一部改正案」yokote-council-news-85-omori: 横手市議会「市議会だよりNo.85」yokote-omori-geotech-r8: 横手市「大森浄化センター地質調査業務委託」yokote-public-sewer-plan-change-r8: 横手市「公共下水道事業計画の変更」