横手市の人口は減っている。
しかし冬に雪が降る道路の長さは、人口と同じ割合では減らない。
2026年9月時点で横手市が公開している最新の除雪基本計画は令和7年度版で、市管理道路などの機械除雪延長を合計1,181.8kmとしている。
内訳は車道1,065.6km、歩道92.0km、認定外道路24.2km。
この距離を、直営135台、委託260台、合計395台の除雪車で対応する計画だった。
人口減少地域の雪対策で重要なのは、「住民が減れば除雪も同じだけ減る」とは限らないことだ。
除雪対象は1,181.8km
令和7年度除雪基本計画では、市管理道路の機械除雪について次の規模を示している。
| 対象 | 延長 |
|---|---|
| 車道 | 1,065.6km |
| 歩道 | 92.0km |
| 認定外道路 | 24.2km |
| 合計 | 1,181.8km |
市道の一部は県が除雪し、交換路線として県道の一部を市が除雪するため、行政上の道路区分と実際の作業範囲は完全には一致しない。
それでも、横手市が冬期交通を維持するために1000kmを大きく超える道路網へ対応していることは変わらない。
人口が半分になっても、道路を半分にはできない
横手市人口ビジョンに掲載された社人研推計では、市人口は2050年に47,879人、2070年に28,508人まで減る。
しかし住民が減った地域でも、住宅や事業所が点在して残れば道路は必要になる。
救急車、消防車、通勤車両、スクールバス、宅配、ごみ収集なども道路を使う。
人口が集中した地域なら道路網を効率化しやすいが、広い市域に居住地が分散したまま人口だけが減ると、一人あたりが支える道路延長は相対的に増える可能性がある。
横手市は東西約45km、南北約35kmに広がる市である。
「人口3万人の自治体」という数字だけでは、冬の維持負担は分からない。
市域の広さと集落配置を一緒に見る必要がある。
除雪は機械だけでなく人が必要
令和7年度計画の除雪車両は直営135台、委託260台。
委託車両の方が多い。
つまり市役所だけで除雪しているわけではなく、地域の民間事業者と作業員が道路交通を支えている。
計画では除雪従事者向けの技術講習や安全対策も重点項目に入っている。
人口減少下では、除雪費だけでなくオペレーターを確保できるかが問題になる。
今後追うべきなのは、例えば次だ。
- 委託業者数
- 除雪オペレーターの年齢構成
- 1台あたりの担当距離
- 委託単価
- 車両更新費
- 豪雪年の追加費用
- 担い手不足で維持できない路線が出ていないか
現時点の資料だけから「将来は除雪できなくなる」とは言えない。
ただし、機械395台分の運用を支える人員が必要だという現実は残る。
2026年度予算では除雪機械購入に1億7302万3千円
2026年度の横手市当初予算概要では、普通建設事業として除雪機械購入事業1億7,302万3千円が計上されている。
これは年度全体の除雪費ではない。除雪機械の購入に関する事業費であり、委託費、燃料費、人件費、排雪費などを全部含む金額ではない。
それでも、雪対策が車両という大型資産を継続的に更新する必要のある行政サービスであることは分かる。
人口減少で利用者が減っても、機械は老朽化する。
水道管や橋と同じで、「住民が減るまで更新を待てる」とは限らない。
地元就職では、雪は通勤時間だけの問題ではない
横手で働く人に雪が関係するのは、冬の朝に早く家を出ることだけではない。
住宅を持てば、自宅敷地の除雪、屋根雪、除雪機、融雪設備、業者への依頼などが生活費と時間に入る。
年齢が上がるほど、自分でできる作業量も変わる。
2026年に25歳なら、2060年に59歳、2070年に69歳になる。
若い時に「自分で雪かきできる」住宅でも、その条件が40年間続くとは限らない。
地元就職から定住まで考えるなら、給与と住宅価格だけでなく、冬の維持方法まで生活コストとして考える必要がある。
移住者は住宅の価格より雪処理の方式を見る
中古住宅や空き家が安くても、敷地が広い、屋根雪処理が必要、除雪車が入った後の間口処理が大きい、といった条件があれば毎冬の負担になる。
市の除雪基本計画でも、玄関前の雪は各家庭で処理することなど、市民側の役割を明記している。
移住先を見るときは、少なくとも次を確認したい。
- 前面道路は市の除雪路線か
- 除雪後に間口へどの程度雪が残るか
- 敷地内の雪をどこへ置くか
- 屋根雪処理が必要な構造か
- 流雪溝・融雪設備を使えるか
- 高齢になった後、民間へ依頼できるか
「雪が多い地域です」という観光的な説明では、生活設計には足りない。
地場企業には、人口減少でも残る地域需要になる
建設会社、運送・機械関連、設備会社などにとって、除雪は人口減少でも地域から消えにくい需要の一つだ。
ただし、需要が残ることと事業として収益を出しやすいことは別である。
早朝勤務、安全管理、機械投資、修繕、燃料、人員確保などが必要になる。
担い手が減れば、1社あたりの担当範囲が広がる可能性もある。
地場経営者が事業拡大を考えるなら、除雪関連は「成長市場」ではなく、地域の縮退に伴って集約される維持市場として見る方が近い。
50年先で問題になるのは、雪の量より支える密度
2070年の積雪量を現在から予測することはこの記事の目的ではない。
気候変動によって降雪の量やパターン自体も変化する可能性があり、単純に現在と同じ雪が降り続けるとは置かない。
それでも、道路網、居住地、除雪車、人員、費用という構造は継続観測できる。
50年先を見るなら、毎年または数年ごとに次を更新する。
- 除雪延長
- 車両数
- 委託業者数
- オペレーター数・年齢
- 除雪関連予算・決算
- 豪雪時の追加費用
- 居住地域の集約状況
- 公共交通・スクールバス路線
人口の減少率と除雪対象の減少率を比べれば、地域維持の難しさがより具体的に見える。
現時点で分からないこと
2026年9月時点では令和8年度版の除雪基本計画はまだこのSource Registryに登録していない。記事の道路延長・車両数は令和7年度計画の値である。
また、除雪関連費用の総額、委託業者数、オペレーターの年齢構成についてはこの記事では確認できていない。
次は予算・決算と入札・契約資料、議会資料を使って、人と費用の時系列を追う。
Sources
yokote-snow-plan-r7: 横手市「令和7年度横手市除雪基本計画」yokote-budget-r8-snow-machines: 横手市「令和8年度横手市一般会計予算の主な普通建設事業」yokote-population-vision: 横手市「横手市人口ビジョン」