横手の除雪問題を考えるとき、雪が何cm降るかに目が行きやすい。
しかし人口減少下では、もっと手前の問題がある。
除雪車を運転する人が残っているか。
令和7年度の横手市除雪基本計画では、機械除雪の対象延長は合計1,181.8km。
除雪車両は直営135台、委託260台という体制が示されている。
人口が減っても、雪は市民一人ひとりの頭上だけに降るわけではない。
道路が供用され、住宅が広い範囲に残る限り、除雪する距離も必要になる。
だから2050年の横手で重要なのは、人口が何人減ったかだけではない。
その時点で1,000kmを超える雪道を維持できる人と会社が何人残っているかになる。
オペレーター不足は将来の仮説ではなく、以前から行政課題だった
横手市の第3期総合雪対策基本計画のアクションプログラムでは、「深刻な除雪オペレーター不足」を背景に、直営除雪路線の外部委託化を進める方針が明記されていた。
しかも受託先は建設事業者だけに限定せず、新たな事業者や団体へ働きかけるとしている。
これは重要だ。
除雪需要があるのに、それを担う側が足りないという問題は、人口3万人になる2070年に初めて出るものではない。
すでに行政が計画へ書くほどの問題だった。
「市直営を減らして民間委託すればいい」でも終わらない
行政職員のオペレーターが足りないなら、民間へ委託する方法がある。
しかし委託先の会社も同じ地域の労働市場から人を採る。
人口減少と高齢化の影響から逃れられるわけではない。
委託化で変わるのは、
- 誰が雇用するか
- 誰が車両を持つか
- 誰が待機するか
- 誰が教育するか
であって、運転者そのものが不要になるわけではない。
受託企業が減れば、1社あたりが担当する距離が長くなる可能性もある。
2026年度の予算審査でも「確保には処遇改善が必須」と答弁している
2026年度当初予算の予算決算委員会産業建設分科会長報告では、除雪オペレーターの処遇改善が質疑になった。
市側は、処遇改善で一番の課題は賃金だとし、季節雇用と通年雇用のバランスなど簡単には解決できない問題が多いと説明している。
そのうえで、オペレーター確保には処遇改善が必須と捉え、検討を続けるとしている。
ここから分かるのは、除雪が単なる機械保有の問題ではないことだ。
車両を買っても、早朝に雪が降った日に運転する人がいなければ道路は開かない。
除雪は「冬だけ働く」という雇用構造が難しい
除雪は需要が季節に偏る。
大雪なら仕事量が増える。少雪なら減る。
それでも冬に備えて、
- オペレーターを確保する
- 車両を整備する
- 待機体制を作る
- 出動判断をする
必要がある。
企業側から見ると、冬だけのために技能者を雇用するのは簡単ではない。
通年雇用するなら、春から秋にも仕事を確保する必要がある。
建設、道路維持、農業、設備、運送など別業務と組み合わせる企業でなければ、人員を抱えにくい場合もある。
だから賃金だけ上げれば終わる問題でもない。
一人乗車化は、省人化の実例でもある
旧雪対策計画では、安全装備を備えた車両から一人乗車へ移行し、除雪経費削減と人材確保を進める方針も置かれていた。
人口減少地域のDX・省人化というと、AIや事務自動化を想像しやすい。
除雪ではもっと物理的だ。
2人必要だった工程
↓
安全装備・運用変更
↓
1人で実施可能にする
必要な人数を減らすこと自体が、サービス維持策になる。
ただし、安全を犠牲にした単純な人減らしでは意味がない。
バックモニターなどの安全装備、操作技能、運用条件が前提になる。
2026年度も除雪機械へ1.73億円を投じている
2026年度当初予算では、除雪機械購入事業に173,023千円が計上されている。
人口減少が進んでいても、除雪設備への投資は続く。
これは不思議ではない。
車両は老朽化するし、安全装備も必要になる。
問題は、機械更新と人材確保を別々に考えられないことだ。
今後は、
- 車両台数
- 車両年齢
- オペレーター人数
- 応募人数
- 委託事業者数
- 委託延長
- 一人乗車化率
を同時に追う必要がある。
住宅の雪は、道路除雪とは別に人手が必要になる
市道が除雪されても、家の間口、敷地、屋根の雪が自動的に消えるわけではない。
横手市は高齢者世帯等に対し、住宅の除排雪や雪下ろしを依頼した費用を支援する制度を持っている。
依頼先は事業者に限らず、一定の個人や共助組合等も対象になる。
この制度が存在すること自体、雪処理が個人の体力だけでは維持できない世帯があることを示す。
2050年、2070年に高齢者世帯の割合が高くなれば、道路だけでなく住宅雪処理の担い手も問題になる。
人口が減れば、除雪する道路も自然に減るのか
長期的には減らせる道路も出るかもしれない。
しかし住宅が点在して残る限り、人口と同じ割合で除雪延長を減らすことは難しい。
例えば人口が半分になっても、住民が現在の市域へ薄く残れば、生活道路はかなりの範囲を維持する必要がある。
逆に居住が地域拠点へ集まれば、除雪路線を減らせる余地が出る。
だから除雪費の将来は人口総数だけでなく、居住密度に強く左右される。
2050年に49歳の地元就職者にとっては、仕事にも生活にも関係する
2026年に25歳なら2050年に49歳。
除雪を担う会社で働いていなくても影響は受ける。
- 出勤できるか
- 子どもや親を送迎できるか
- 会社の物流が動くか
- 顧客訪問できるか
- 自宅の雪処理を誰へ頼めるか
冬の道路維持は、地域経済全体の基盤になる。
一方、建設・道路維持分野で働く人には、除雪技能が長期的な需要へつながる可能性がある。
ただし早朝勤務、季節性、身体負担、責任に見合う処遇がなければ、需要があっても人は残らない。
地場経営者には「除雪を受注できるか」より、人を通年でどう抱えるかが効く
除雪委託を受ける会社にとって、冬の売上だけ見ても持続性は分からない。
重要なのは、
- オペレーターを通年雇用できる仕事構成
- 資格取得
- 若手育成
- 車両更新
- 燃料費
- 故障時の代替車
- 他社との分担
になる。
人口減少で建設会社自体が減れば、市が委託先を選べる余地も小さくなる。
競争入札の問題から、供給能力確保の問題へ重心が移る可能性がある。
自動運転が全部解決するとは置かない
2050年なら自動運転除雪車が普及しているかもしれない。
しかし、この記事ではそれを前提にしない。
雪道には、
- 路上駐車
- 歩行者
- 狭路
- 雪壁
- 障害物
- 吹雪
- 日ごとに変わる路面
がある。
技術的に可能になることと、横手市の全路線で実運用できることは別だ。
自動化を評価するなら、実際に何台導入され、何人分の作業を減らし、事故率やコストがどう変わったかを見る。
2070年まで追うべき数字
このサイトでは今後、除雪について次を観測したい。
- 機械除雪延長
- 直営延長・委託延長
- 直営車両・委託車両
- 除雪費
- 除雪機械購入費
- 直営オペレーター募集人数・採用人数
- 委託事業者数
- オペレーター年齢構成
- 一人乗車化
- 高齢者等雪処理支援の利用件数
- 地域別人口・世帯数
人口が減っているのに除雪延長があまり変わらなければ、一人あたりの維持負担は重くなる。
委託業者が減っていれば、事業者集約も進む。
逆に路線の再編や居住集約が進めば、維持範囲を縮められる可能性がある。
現時点の結論
横手の除雪は、雪国だから必要というだけではない。
人口減少下では、必要な道路延長と、それを維持できる労働力の差が問題になる。
行政は以前からオペレーター不足を認識し、委託化、一人乗車化、雇用環境改善、新たな受託者確保を検討してきた。
2026年度の予算審査でも、人材確保には処遇改善が必須という認識が示されている。
2050年の問いは、
雪は今より多いか少ないか
だけではない。
約1,200kmの道路を、誰が、何台で、いくらで除雪できるのか
になる。
横手で暮らし続けるなら、これは行政の内部問題ではなく、仕事、住宅、通勤、老後を左右する生活条件そのものである。
Sources
yokote-snow-plan-r7: 横手市「令和7年度除雪基本計画」yokote-snow-action-program-3rd: 横手市「第3期総合雪対策基本計画 アクションプログラム」yokote-budget-committee-r8-snow-workforce: 横手市議会「令和8年度当初予算 産業建設分科会長報告」yokote-council-r7-12-snow-operator: 横手市議会「令和7年12月定例会 一般質問要旨」yokote-snow-support-r7-r8: 横手市「高齢者世帯等の除排雪・雪下ろし支援」yokote-budget-r8-snow-machines: 横手市「令和8年度予算」yokote-population-vision: 横手市「人口ビジョン」