横手へ戻って働くことを考えても、会社の情報が見つからない。
これは単なる感想ではない。
横手市自身が、2026年の「就職支援マッチングサイト」構築業務仕様書で課題として明記している。
市の整理では、大手就職情報サイトに登録している市内企業は限られ、自社採用ページを持たない企業もあり、UIJターン希望者が「企業の魅力や働き方など、求職者が知りたい情報」を十分に得られていない。
そのため市は、既存の横手JOBナビを再構築し、企業データベースと求人掲載だけではなく、求職者との双方向マッチングを促すサイトへ変える事業を進めている。
この問題はかなり大きい。
地方就職では、仕事が存在することと、仕事を発見できることが別だからだ。
406人分の求人があっても、横手管内への内定は63人だった
同仕様書では、2026年3月卒について、横手管内の新規求人登録事業所数108社、求人数406人に対し、横手管内への就職内定者は63人だったとしている。
この数字だけで「343人分の求人が埋まらなかった」とは断定できない。
求人と内定は時点や対象、重複、採用計画変更などがあり、単純差分がそのまま欠員数になるとは限らないからだ。
ただし市が、この乖離を就職支援サイト再構築の背景として挙げていることは重要だ。
人手不足だからといって、若者が自動的に地元企業へ就職するわけではない。
市内に大学がないことは、就職情報の断絶を作りやすい
横手市は市内に大学がなく、多くの若者が東京圏や仙台圏へ進学し、そのまま戻らないことも課題として挙げている。
18歳で市外へ出た人が、22歳で就職活動をするとする。
その人が日常的に見るのは、
- 全国型就職サイト
- 大学のキャリアセンター
- SNS
- 企業採用サイト
- インターン情報
などになる。
そこで横手の会社が見つからなければ、比較対象にすら入らない。
地元企業に求人があっても、求職者の検索画面に存在しなければ、就職市場では存在感がほぼない。
求人票だけでは「50年働ける会社か」を判断できない
ハローワークの求人票は重要だ。
給与、勤務時間、休日、必要資格、雇用形態などを確認できる。
しかし若手が長期就職を判断するには、それだけでは足りない。
知りたいのは、例えば次のようなことだ。
- 20代社員は何人いるか
- 30代でどんな仕事を任されるか
- 5年後の給与モデルはどうなるか
- 資格取得を会社が支援するか
- 異動はあるか
- 管理職になる経路はあるか
- どんな顧客と取引しているか
- 売上は市内だけに依存しているか
- 後継者は決まっているか
- DXや設備投資をしているか
- 10年後も同じ事業を続ける想定なのか
地元就職を人生の選択として考えるなら、求人条件より会社の将来条件の方が重要になる場面もある。
地元企業の「魅力発信」という言葉だけでは弱い
自治体の採用支援では「企業の魅力発信」という言葉がよく使われる。
しかし求職者が欲しいのは、広告的な魅力だけではない。
むしろ判断材料として重要なのは、都合の悪い情報を含む具体性だ。
- 初任給は低いが資格取得後に上がる
- 冬季は繁忙になる
- 夜勤がある
- 転勤はないが職種変更も少ない
- 管理職候補が不足している
- 従業員の年齢が高い
- 公共工事への依存が高い
- 主要取引先が数社に偏る
こうした情報が分かれば、合わない人は応募しない。
それは採用失敗を減らす意味では悪いことではない。
横手市は約1,044万円を上限に新サイトを構築している
2026年の公募型プロポーザルでは、就職支援マッチングサイト構築業務の契約上限額は10,436,800円とされ、履行期間は2027年3月31日までとなっている。
既存の横手JOBナビを単純にリニューアルするだけでなく、市内企業の情報と求職者のマッチングを強化することが目的だ。
また市は別途、採用活動応援補助金を設け、企業の合同説明会参加や求人情報発信なども支援している。
就職面接会・企業説明会も継続している。
つまり行政側も、問題を「求人件数が少ない」だけとは見ていない。
求人情報が届かない、会社を比較できない、接点がないという情報流通の問題に予算を使っている。
地元就職を考える人は、求人が出る前から会社を見る
求人票が出たときだけ会社を調べると、情報が少ない地域では判断材料が足りない。
むしろ横手で働く可能性があるなら、平時から会社を観測した方がいい。
見るものは、
- 会社サイト
- 採用ページ
- ハローワーク求人履歴
- 横手JOBナビ
- こっちゃけ
- 入札結果
- 補助金採択
- 工場増設
- 事業承継
- 求人の職種変化
などになる。
1回の求人条件より、数年間の動きの方が会社の方向を読みやすい。
地場経営者には、情報を出さないこと自体が採用リスクになる
人口が多い時代なら、地元で名前が知られているだけでも応募者が来たかもしれない。
若者が少なく、市外進学が普通になった地域では事情が違う。
求職者は市外からスマートフォンで会社を探す。
そのとき、
- 採用ページがない
- 給与が分からない
- 仕事内容が抽象的
- 社員のキャリアが分からない
- 写真が古い
- 求人情報が更新されていない
という状態は、それだけで比較対象から外れる理由になる。
会社側から見れば、採用広報は広告ではなく労働力調達インフラになっている。
情報公開だけで若者流出は止まらない
ここは切り分ける必要がある。
企業情報を充実させても、
- 希望職種がない
- 給与が合わない
- 大学卒業後に戻る理由がない
- パートナーの仕事がない
- 都市部の方が転職市場が厚い
なら、若者は戻らない。
就職情報サイトは労働市場そのものを作るわけではない。
ただし、存在する仕事が見つからないという摩擦は減らせる。
だから新サイトが成功したかを見るなら、PVだけではなく、
- 掲載企業数
- 求人数
- 求職者登録数
- UIJターン利用者数
- 面談数
- 応募数
- 採用数
- 採用後定着
まで追う必要がある。
50年先では「地域企業の可視性」がもっと重要になる
人口が減るほど、一人の採用の重みは大きくなる。
現在50人いる会社が将来30人で回すとしても、必要な技能を持つ人が1人採れるかどうかで事業継続が変わることがある。
そのとき、地域外にいる人へ会社の仕事を説明できることは重要になる。
地元就職者にとっても、企業情報が公開されていれば、転職可能性を判断しやすい。
このサイトでも、企業を宣伝するのではなく、横手でどんな仕事と会社が存在し、何が公開されていて、何が分からないかを観測対象にする。
Sources
yokote-job-matching-site-spec-r8: 横手市「就職支援マッチングサイト構築業務委託仕様書」yokote-job-matching-proposal-r8: 横手市「就職支援マッチングサイト構築業務委託 公募型プロポーザル」yokote-recruitment-support-r8: 横手市「採用活動応援補助金」yokote-job-fair-r8: 横手市「就職面接会・企業説明会」yokote-weekly-jobs-r8: 横手市「週刊求人情報」