横手市には空き家が多い。

市の公式ページでは、2025年3月末時点で1,500棟を超える空き家があり、今後も増え続けると予想している。

第3期横手市空家等対策計画では、総務省の2023年住宅・土地統計調査で4,590戸の空き家が確認され、5年前より490戸増えたとしている。

数字が二つあるが、単純な矛盾とは扱わない。

行政が把握する空き家と、標本調査から推計する住宅・土地統計調査では定義・把握方法が異なるためだ。

重要なのは、どちらの資料でも空き家が小さな例外ではなく、人口減少下の住宅問題として扱われていることだ。

空き家が多いことと、移住者が買える家が多いことは別

「空き家4,590戸」と聞くと、中古住宅が大量に市場へ出ていて安く買えるように見える。

しかし空き家は、そのまま売却可能物件を意味しない。

例えば次のような状態があり得る。

  • 所有者が売る意思を持っていない
  • 相続関係が整理されていない
  • 家財が残っている
  • 修繕費が大きい
  • 接道や土地条件に制約がある
  • 雪処理を含む維持負担が大きい
  • 解体した方が合理的な状態まで老朽化している

横手市が空き家バンク、片付け、改修、除却など複数の施策を持っていること自体、空き家を「余っている住宅」だけでは説明できないことを示している。

移住者にとって見るべき数字は、市全体の空き家総数ではなく、実際に流通している住宅の数と状態になる。

「安く買える」と「安く住み続けられる」も別

住宅価格は一度支払う費用だが、家はその後も維持する必要がある。

特に横手では雪がある。

道路除雪は市が行う範囲があるが、除雪基本計画では玄関前の雪など各家庭で処理する部分も明記されている。

中古住宅を買う場合は、物件価格と同時に次を見る必要がある。

  • 屋根、外壁、基礎の状態
  • 断熱・暖房
  • 屋根雪の処理方法
  • 敷地内の雪を置く場所
  • 前面道路の除雪状況
  • 上下水道か浄化槽か
  • 車を何台維持する必要があるか
  • 10年、20年単位の修繕費

250万円の住宅が、900万円の住宅より生涯コストで安いとは限らない。

価格だけではなく、50年維持できる物件かを見る必要がある。

地元就職者には「実家を継ぐ」問題として来る

空き家は移住者向け物件の話だけではない。

横手で働いている人にとっては、親世代の住宅をどうするかという問題になる。

2026年に25歳なら、2040年代、2050年代には親の住宅を相続・管理する可能性が高くなる。

自分が横手に家を建てた後で実家も残れば、二つの住宅をどう扱うかという問題になることもある。

  • 自分で住む
  • 売る
  • 貸す
  • 空き家として管理する
  • 解体する

どれにも費用と手間がある。

市は空き家を私有財産として、所有者や管理者が適切に管理する責任を負うべきものと説明している。

「使わないからそのまま置いておく」は、管理が不要になることを意味しない。

雪国では空き家が周辺の問題にもなる

横手市の過去の雪対策計画でも、豪雪時の老朽危険空き家の倒壊や落雪を安全上の課題として扱ってきた。

人が住んでいる住宅なら、異常に気づいて雪下ろしや修繕を行える。

空き家では日常的に確認する人がいない。

人口が減り、空き家が点在して増えると、住宅所有者だけでなく近隣や行政にも管理コストが発生する可能性がある。

したがって将来の住宅政策では、「新しい住民を呼んで全部使う」だけでなく、使わない住宅を安全に減らすことも必要になる。

地場企業には、住宅新築の減少と別の市場が生まれる

人口減少地域では、新築住宅の需要は長期的に厳しくなる可能性がある。

一方で、既存住宅については別の仕事が残る。

  • 住宅診断
  • 改修
  • 断熱
  • 雪対策
  • 家財片付け
  • 廃棄物処理
  • 不動産仲介
  • 建物管理
  • 解体
  • 跡地管理

空き家が増える地域では、住宅産業が「建てる」だけでなく「直す・流通させる・管理する・壊す」方向へ比重を変える可能性がある。

地場経営者が50年先を見るなら、人口増加期と同じ住宅需要を前提にしない方がいい。

住宅を買う場所は、周辺が20年後どうなるかまで見る

1軒の住宅状態が良くても、周辺の住宅が急速に空き家化すれば生活条件は変わる。

見るべきなのは物件単体だけではない。

  • 地域別人口
  • 世帯数
  • 空き家の分布
  • 学校・商店・医療の配置
  • 道路と除雪
  • 公共交通
  • 上下水道等の方式

市全体の人口が減っても、中心部と周辺部が同じ速度で減るとは限らない。

このサイトでは今後、行政区別人口と施設配置を重ね、どの地域で住宅維持条件が変わっているかを見る。

2070年までに必要なのは「空き家率を当てること」ではない

社人研推計では2070年の横手市人口は28,508人。

だからといって、現在の空き家増加率をそのまま延長して2070年の空き家数を計算することはしない。

住宅は解体される。世帯構成も変わる。集合住宅への移動、地域集約、相続制度、住宅市場も変わる可能性がある。

追うべきなのは次の変数だ。

  • 総住宅数
  • 世帯数
  • 空き家数・空き家率
  • 危険空き家数
  • 除却数
  • 空き家バンク登録・成約
  • 中古住宅価格
  • 新築着工
  • 地域別人口

これを数年ごとに更新すれば、住宅余剰がどこまで進んでいるかを確認できる。

現時点で分からないこと

市が示す「1,500棟超」と住宅・土地統計調査の「4,590戸」は同じ定義の数字ではない。この記事では両者を足したり直接比較したりしない。

また、空き家総数から売却可能物件数、危険空き家数、市場価格を推測しない。

次に必要なのは、第3期空家等対策計画の定義別集計、空き家バンクの登録・成約実績、地域別分布、除却実績である。

Sources

  • yokote-vacant-house-plan-r8: 横手市「空き家に関する計画・条例/第3期横手市空家等対策計画」
  • yokote-population-vision: 横手市「横手市人口ビジョン」
  • yokote-snow-plan-r7: 横手市「令和7年度横手市除雪基本計画」