2026年に25歳で横手市の会社へ就職したとする。

2070年には69歳になる。

横手市人口ビジョンが掲載する国立社会保障・人口問題研究所の推計では、横手市の人口は2025年の78,876人から、2070年には28,508人まで減る。

2070年は、今の若者にとって歴史の教科書に出てくるような遠い未来ではない。横手で働き続ければ、自分が退職し、高齢期に入る頃の話だ。

この記事では、「横手市は消滅する」といった話はしない。

人口がこの推計に近い形で減った場合、今から横手で働く人が10年、20年、30年、40年以上先に何を確認しておく必要があるのかを整理する。

まず人口の基準線を見る

横手市人口ビジョンに掲載された社人研推計は次のとおり。

社人研推計人口2026年に25歳の人の年齢
202578,876人24歳前後
203072,129人29歳
204059,712人39歳
205047,879人49歳
206037,453人59歳
207028,508人69歳

2025年から2070年までで約64%減る計算になる。

一方、横手市が公表する2026年8月末の住民基本台帳人口は77,653人である。

この77,653人と上の推計値は、統計の定義と基準時点が異なるため、そのまま一本の実績・予測系列として扱わない。ここでは「今の人口」と「公的な長期推計」を別の資料として読む。

2030年、29歳。就職先そのものより、次の選択肢を見る

2030年の推計人口は72,129人。

今から4年程度なので、街の姿が完全に別物になるとは考えにくい。それでも地元就職を考える人にとって重要なのは、最初の会社だけではない。

20代で確認したいのは、例えば次のようなことだ。

  • 同じ職種で転職できる企業が地域内に複数あるか
  • 勤務先が縮小・撤退した場合、市外へ通勤できるか
  • その仕事で身につく技能が横手市外でも使えるか
  • 給与が上がらない場合に、地域内で別の選択肢を持てるか
  • 配偶者も働く場合、二人分の仕事を地域内で確保できるか

人口が減る地域で「求人がある」は、「長いキャリアを選べる」と同じ意味ではない。

若いうちは、一社への就職可能性だけでなく、地域内の労働市場全体を見る必要がある。

2040年、39歳。人口6万人前後の市で子育てと管理職期を迎える

社人研推計では2040年に59,712人となる。

2020年の85,555人から見れば約2万6千人少ない。

39歳前後なら、子どもがいる人は学校や通学、住宅を購入した人は地域の維持、会社では中堅や管理職になっている可能性がある。

この時期に重要になるのは、単純な人口総数よりも「どこに人が残るか」だ。

市全体で6万人いても、自宅周辺の人口、学校、商店、医療、公共交通が同じ割合で残るとは限らない。

地元企業側から見れば、採用対象となる若年人口も重要になる。

横手市の商工業振興計画は、既に若年者の市外流出や就業者の高齢化、人手不足を課題として扱っている。

今後の記事では、市全体ではなく地域別人口と学校・交通・商業施設の配置を重ねて確認する必要がある。

2050年、49歳。人口は5万人を下回る推計

2050年の推計は47,879人。

現在25歳の人が49歳になる頃だ。

会社員であれば組織の中核、経営者や後継者であれば事業承継の当事者になっていてもおかしくない。

この段階では、「人が減るから仕事も同じ割合で減る」とは限らない。

人口減少では需要と供給の両方が変わる。

例えば、地域住民向けの小売やサービスは顧客人口減少の影響を受けやすい。一方で、建設、除雪、廃棄物、医療、介護、インフラ保守のように、人口が減っても地域を維持する限り一定の仕事が残る分野もある。

ただし、需要が残っても働く人が確保できるとは限らない。

逆に人手不足が強くなれば、仕事そのものはあっても、一人あたりの負担、担当範囲、必要な技能が増える可能性がある。

地元就職の長期判断では「その産業が残るか」だけでなく、「どんな人数で残るか」を見る必要がある。

2060年、59歳。自分自身が地域サービスを使う側へ近づく

2060年の推計は37,453人。

59歳なら、仕事だけでなく医療、交通、住宅管理を自分自身の問題として考える年齢に近づく。

若い時には「車があるから公共交通はいらない」と考えられても、40年後に同じ移動手段を使える保証はない。

雪国では住宅の除雪や雪下ろしも同じだ。

若い時に自分で処理できることと、高齢期にも維持できることは別問題になる。

したがって移住や住宅購入では、現在の利便性だけでなく、将来その場所で生活を維持するために何を外部へ依頼することになるかを見る必要がある。

2070年、69歳。推計人口28,508人

社人研推計では2070年の人口は28,508人。横手市人口ビジョンは、この時点で65歳以上が総人口の約55%になる推計も示している。

2026年の若手社員が69歳になる頃、市全体の人口規模は現在とは大きく異なる可能性がある。

ここで重要なのは「横手市がなくなるか」ではない。

人口3万人弱の市として、何を維持し、何を集約し、どの地域まで同じサービスを提供するかである。

考えるべき対象はかなり具体的だ。

  • 病院・診療所までの距離
  • 買い物手段
  • 運転できなくなった後の移動
  • 除雪を依頼できる事業者
  • 上下水道や道路などの維持
  • 介護人材
  • 空き家が増えた地域の居住環境
  • 地域コミュニティの担い手

これらが今と同じ形で残るとは限らない。

一方で、施設統合、自動化、遠隔サービス、事業者の広域化などによって、人口が減っても維持できるサービスもあるかもしれない。

どこまで代替できるかは、技術の期待ではなく実際の導入状況を追う必要がある。

市は別の人口シナリオも置いている

横手市人口ビジョンは社人研推計だけを掲載しているわけではない。

出生や人口移動が改善すると仮定した市独自シミュレーションでは、2070年に40,272人を目標としている。

したがって、このサイトでも28,508人だけを「確定した未来」として扱わない。

少なくとも二つの線がある。

  • 社人研推計に近い人口減少が進むケース
  • 市が置く改善条件に近づき、減少幅が小さくなるケース

さらに実際の仕事や生活では、人口総数と同じ速度で全分野が変わるわけではない。

このため今後は、人口、就業者、財政、公共施設、学校、交通、医療、上下水道、除雪を別々に観測する。

地元就職で本当に見たいのは「50年間同じ会社があるか」ではない

50年後に現在の会社が存在するかを当てることはできない。

それより重要なのは、変化したときに選択肢を持てるかだ。

  • 別の会社へ移れるか
  • 市外へ通勤できるか
  • 在宅や広域雇用を使えるか
  • 他地域でも通用する技能があるか
  • 家を持った後でも移動できるか
  • 親の介護や子どもの進学と仕事を両立できるか

横手で働くこと自体を良いとも悪いとも決めない。

ただ、2026年に就職する人のキャリアは、横手市の人口が8万人弱から3〜4万人台へ向かう可能性のある時代と重なる。

その前提を知らずに地元就職を選ぶのと、知った上で選ぶのは違う。

次に確認すること

人口推計だけでは地元就職の可否は判断できない。

次に必要なのは、実際の労働市場だ。

  • 横手市の就業者は何人減ったか
  • 若い就業者はどの程度残っているか
  • どの産業が雇用を吸収しているか
  • 求人数と求職者数はどう変わっているか
  • 市外から横手へ働きに来る人はどのくらいいるか
  • 地元企業の事業所数は減っているか

これらを別の記事で確認する。

Sources

  • yokote-population-r8: 横手市「横手市の人口(令和8年度)」
  • yokote-population-vision: 横手市「横手市人口ビジョン」
  • yokote-commerce-industry-plan-r8-r12: 横手市「第2次横手市商工業振興計画」