横手の生活環境を調べるとき、病院、介護事業所、バス、行政施設、商業施設をそれぞれ地図や一覧で確認することはできる。
ただし、施設が存在することと、必要なときに使えることは同じではない。
家を選ぶ、親の介護を考える、車を手放した後の生活を考える、といった判断では「近くに何があるか」だけでなく「その機能へ実際に届くか」を見る必要がある。
施設数はストック、到達可能性は運用で決まる
病院が市内にある。バスが走っている。介護事業所が登録されている。
これらは重要な事実だが、それだけでは生活可能性を判断できない。
実際の利用には、営業時間、診療時間、予約、待ち時間、乗継、運賃、自宅から乗り場までの移動、冬季の歩行条件などが入る。
横手デマンド交通も、市内の広い範囲を補う重要な仕組みだが、自家用車と同じ自由度を持つわけではない。予約型の乗合交通であり、運行時間や利用条件を含めて評価する必要がある。
したがってこのサイトでは、施設や交通の「存在」を記録するだけでなく、生活機能へ到達するための条件を別に追う。
家族送迎は、見えにくい交通供給でもある
横手市の地域公共交通計画資料にある市民アンケートでは、通勤・通学の交通手段として自分で車を運転する回答が58.8%、家族送迎が13.2%、地域公共交通が11.0%だった。
これは702件の回答による標本調査であり、市民全体の交通分担率として一般化はできない。
それでも、家族送迎が生活移動の一部を担っていることは読み取れる。
ここで重要なのは、家族送迎を無料で無制限に使える交通手段として扱わないことだ。
送る側には時間が必要で、勤務、育児、介護、除雪など他の生活負担と競合する。高齢化や働く世代の減少が進むと、本人が移動できるかだけでなく、送迎する人を確保できるかも生活圏の条件になる。
医療と介護には「行く移動」と「来てもらう移動」がある
横手市の計画では、市立横手病院は急性期医療、市立大森病院は在宅療養支援という役割分担が示されている。
この方針から個別診療科の将来存続を予測することはできないが、医療機能が一つの場所ですべて完結する前提ではないことは分かる。
利用者が病院や通所施設へ行く移動がある一方、在宅医療や訪問介護では専門職が利用者の家へ移動する。
訪問サービスは本人の移動を減らせるが、地理的な移動そのものを消すわけではない。
人口が広く分散したまま担い手が減れば、一人の医師、看護師、介護職、運転手が受け持つ移動距離や時間が増える可能性がある。
したがって「家から病院まで何kmか」だけではなく、「必要な専門職がその地域を供給範囲として維持できるか」も見る必要がある。
高齢化すると、介護需要と移動需要を別問題にしにくくなる
第9期横手市介護保険事業計画に掲載された推計では、85歳以上人口は2025年の7,360人から2040年の8,585人へ増える一方、生産年齢人口は2025年の38,649人から2040年の27,466人へ減る系列になっている。
これは計画上の将来推計であり、2040年の実績ではない。また85歳以上人口から要介護者数を比例計算したり、生産年齢人口をそのまま介護職員数へ変換したりすることもできない。
ただし、総人口が減るから介護や移動の需要も同じ割合で減る、と置くことはできない。
高齢期には通院、通所、買い物、行政手続き、家族送迎、訪問医療・介護など複数の移動が重なる。介護供給と交通供給は別制度でも、生活者から見ると同じ一日の中で競合する。
中心拠点・副拠点は、施設の保証ではなく接続網として読む
横手市の都市構造では、横手地域を中心拠点、十文字地域を副拠点として位置付けている。
これは横手と十文字の個別施設が将来も必ず残るという保証ではなく、他の6地域を放棄するという意味でもない。
重要なのは、人口減少下でも医療、福祉、商業、行政、交通等の生活サービスへ接続しやすい構造をどう維持するかという計画上の方向である。
拠点を見るときも、人口順位だけではなく、その場所へ周辺地域からどう到達するか、拠点から各地域へ訪問サービスをどう出すかまで含めて考える必要がある。
つまり「中心に何があるか」と「周辺から中心へ届くか」は同じ問題ではない。
住宅選びでは、現在の便利さより接続条件を分解する
住宅の長期適性を考えるなら、徒歩圏の施設数だけでなく、少なくとも次を分けて確認した方がいい。
- 自分で運転できる間の到達時間
- 自分が運転できなくなった場合の交通手段
- 家族送迎を使わない場合の代替手段
- 医療・介護の予約時間と交通の組み合わせ
- 訪問医療・訪問介護等の供給範囲
- 冬季の歩行・乗降条件
- 生活機能が再編された場合に接続しやすい拠点
中心部が常に正解という意味ではない。農村部や郊外に住む理由もあり、土地、仕事、家族、農地等の条件はそれぞれ異なる。
必要なのは、その立地がどの移動手段と人的支援へ依存しているかを見える形にすることである。
このサイトでは「届くか」を複数の知識から組み立てる
到達可能性そのものを一つの数字へ乱暴に圧縮しない。
交通制度、病院の役割、介護需要、人口構成、都市構造は、それぞれ別の事実として保持する。その上で、車なし生活、介護供給、居住立地等の考察と課題を意味付きで接続する。
地図側では停留所、運行区域、施設位置、距離や到達時間等を扱い、知識側では制度、時点、出典、利用条件、計画上の位置付けを扱う。
こうしておけば、バス路線が変わった、病院計画が更新された、人口推計が改定された、といったときに記事全文の結論を固定したままにせず、根拠となる事実から読み直せる。
横手で長く暮らせる場所を考えるとき、見るべきなのは施設の点の数ではない。
自分、家族、交通事業者、医療・介護職を含めて、必要な生活機能へどう接続できるかである。