横手市の人口が減るなら、横手に本社を置く会社の売上も同じように減るのか。

この問いに答えるには、会社の売上が「どこの顧客から来ているか」を見る必要がある。

横手市内の個人客が中心の会社と、関東・関西の法人から仕事を受ける会社では、横手市人口への依存度が違う。

ところが、非上場の地場企業について、横手市内、県南、秋田県内、県外、海外という地域別売上比率まで公開されている例は多くない。

公開情報で確認できるのは、主要顧客、販売先、EC、県外受注、輸出実績といった「売る経路」であることが多い。

その経路があることと、売上の何割を占めるかは別である。

この違いを消さずに、現在確認できる範囲を並べる。

県外売上の比率まで確認できる企業がある

横手市に本社を置く渡敬情報システムは、2022年に秋田県のインタビューで、売上高で見ると県外の仕事が半分以上を占めると説明している。

同じ資料では、2022年7月末の直近期売上高は6億円で、2010年以降、関東圏・関西圏を中心とする全国の顧客へ事業を広げたとしている。

この事例は、単に「東京の顧客がいる」だけではない。

少なくとも2022年時点では、売上高の過半が秋田県外の仕事だったという地域別売上構成まで確認できる。

一方、現在公開されている企業情報では年商7億6,000万円、主要顧客として秋田県内の民間企業・農協と、首都圏の社会福祉協議会、福祉法人、公益財団法人などが挙げられている。

ここから2026年も県外比率が半分以上だとは決めない。

売上総額と主要顧客は更新されていても、地域別売上比率は別の指標だからである。

秋田県内を主要市場とする会社もある

同じ横手市に本社を置く株式会社渡敬は、主要販売先を「秋田県内官公庁および民間事業所」としている。

本社のほか、大仙、秋田、大館に支店を持つ。

これは、少なくとも同社の主要市場が横手市内だけではなく秋田県内へ広がっていることを示す。

ただし、

  • 横手市内が何割か
  • 県南他市町村が何割か
  • 秋田市・県北が何割か
  • 県外売上が存在するか、その割合はいくらか

までは公開情報から分からない。

「県内に4拠点あるから売上も4地域へ均等に分かれる」とはしない。

食品では全国販売と輸出まで確認できる

十文字町に本社を置く林泉堂は、秋田県の事業者情報で売上8億円と掲載されている。

販路には全国の小売、スーパー、百貨店、生協、商社、卸、外食、ECがあり、一部輸出も行っている。

輸出実績として、アメリカ、フランス、オーストラリア、台湾、香港、韓国が挙げられている。

横手に生産拠点を置きながら、商品が国内外へ出る経路があることは確認できる。

しかし8億円のうち、

  • 横手市内
  • 秋田県内
  • 県外
  • 海外

がそれぞれ何円なのかは分からない。

海外6市場への輸出実績があるからといって、海外売上が大きいとは限らない。

「県内中心だが県外が増えている」という会社もある

横手市の内藤醤油店は、秋田県の事業者情報で売上9,000万円と掲載されている。

同社は出荷先について、主に県内スーパーとしながら、近年は県外出荷も増えていると説明している。

東北全域の大手通信販売事業や、関西圏の大手スーパーでの販売実績もある。

これは、会社を「県内型」か「県外型」かの二択へ固定できない例である。

現在は県内中心でも、販売先の構成は変化する。

その変化を追うには、毎年の地域別売上比率が必要になる。

現時点では「主に県内」を60%、70%、90%などの数字へ変換しない。

ECがあっても県外売上とは限らない

2025年設立の横手食品加工は、秋田県の事業者情報で売上500万円、主要取引先、ECサイトが確認できる。

輸出は欧米を中心に検討中だが、輸出実績はないとされている。

ECサイトは地域外へ売るための経路になり得る。

しかしEC購入者の所在地が公開されていなければ、県外売上の比率は分からない。

「ECをやっている会社=全国売上型」とは扱わない。

初期観測で分かったのは、会社ごとの差が大きいこと

現在確認できる企業を同じ尺度に無理に並べると、次のようになる。

企業公開されている売上規模確認できる売上・販売地域地域別売上比率
渡敬情報システム2022年6億円、現在公開年商7.6億円秋田県内、関東・関西、全国2022年は県外仕事が売上高の半分以上。現在比率は未確認
渡敬未確認主要販売先は秋田県内官公庁・民間事業所未確認
林泉堂8億円全国販売、EC、海外6市場への輸出実績未確認
内藤醤油店9,000万円主に県内、県外出荷増、東北・関西で販売実績未確認
横手食品加工500万円主要取引先、EC、輸出検討未確認

この表から「横手企業の県外売上比率は平均○%」とは言えない。

公開情報が豊富な会社を少数集めただけであり、売上規模も業種も違う。

ただし、横手企業の市場が一律に横手市人口だけで決まっているわけではないことは確認できる。

人口減少への影響を見るなら、売上先と需要ドライバーを分ける

顧客の所在地だけでも足りない。

例えば横手市内の売上でも、需要を決めるものは違う。

住宅修繕なら人口より住宅ストックや築年数が効く場合がある。

除雪なら道路・敷地・降雪が効く。

介護なら要介護者数や年齢構成が効く。

一方、県外向けソフトウェアや製造品なら、横手市人口の減少は顧客数へ直接は効きにくい。

しかし社員を横手周辺で採用するなら、売上は県外でも労働力は地域人口へ依存する。

したがって会社を見るときは、

  1. 顧客はどこにいるか
  2. 何が需要量を決めるか
  3. 仕事をする人はどこから確保するか
  4. 商品・人・設備をどこまで運ぶ必要があるか

を分ける必要がある。

本当に知りたい数字は、会社内部には存在する可能性が高い

請求先住所や顧客マスタがある会社なら、地域別売上は比較的単純に集計できる場合がある。

例えば顧客を、

  • 横手市内個人
  • 横手市内法人
  • 横手市・市内公共
  • 県南他市町村
  • 秋田県内その他
  • 県外
  • 海外

へ分け、年度別に売上金額を集計する。

公開サイトで個別顧客名を出す必要はない。

集計値だけでも、横手市人口への売上依存度を判断しやすくなる。

今の結論は「分からない部分まで見えるようになった」こと

横手の企業には、県内中心の会社も、県外売上が過半を占める会社も、全国販売や海外輸出の経路を持つ会社もある。

一方、公開情報だけで地域別売上比率まで確認できる会社は限られている。

そのため、現時点で横手企業全体の「市内・県南・県外」の比率を一つの数字では示さない。

今後は、地域別売上を明示している企業資料を追加するとともに、公開情報で埋まらない部分は企業アンケートや匿名集計を使えるかを検討する。

人口が減る横手で事業を続けられるかを見るには、会社の所在地だけではなく、売上がどこから入っているかを時系列で追う必要がある。