人口が減り、採用が難しくなる地域では、DXや自動化は避けて通れない。

ただし、「デジタル化すれば人がいらなくなる」と考えると、横手の仕事の構造を読み違える。

手書き、転記、集計、選別、画像判定、記録は機械やソフトウェアで大きく減らせることがある。

一方、除雪車を走らせる、ごみを積む、森林へ入る、鳥獣対策をする、壊れた設備を直す、といった仕事は、情報処理を自動化しても物理的な作業が残る。

省人化で重要なのは、仕事を丸ごと「自動化できる・できない」に分けることではない。

一つの仕事を工程へ分け、どこから人の時間を外せるかを見ることだ。

横手の企業では、すでに「情報と判断」の省人化が進んでいる

横手の企業DX事例では、省人化の形がいくつか確認できる。

楽器の店カネキでは、手書きや転記を含む業務が、導入後には1日約1〜2時間まで縮小したとされる。

みずほライスのAI選果では、初心者が1個4〜5秒かかる選別に対し、AI選果機は1個1秒とされる。

大橋鉄工秋田ではAI画像検査とロボット化によってカチオン塗装工程を全自動化し、作業量や残業削減への寄与が示されている。

日の丸醸造では、複数箇所へ記入していた帳簿をクラウド記録へ統合している。

対象は違うが、共通するのは、

  • 人が書き写す
  • 人が同じ情報を何度も確認する
  • 人が一件ずつ判定する
  • 人が定型的な動作を繰り返す

といった工程を減らしていることだ。

ここは人口減少下で大きな意味を持つ。

人が足りないなら、採用する前に、そもそも人がやる必要のない工程を減らせるからだ。

しかし除雪は「記録を自動化したら終わり」ではない

2025年度の横手市では、機械除雪対象として車道1,065.6km、歩道92.0kmなどが計画されている。

配車、位置管理、気象情報、作業記録、路面状況の把握をデジタル化すれば、判断や事務処理を速くできる可能性はある。

GPSで車両位置を把握できれば、電話確認を減らせるかもしれない。

センサーやカメラで積雪状況を把握できれば、現地確認の一部を減らせるかもしれない。

しかし、雪そのものを除ける作業は別だ。

現状の機械除雪では、車両が道路へ行き、雪を処理しなければならない。

つまり除雪を工程に分けると、

  1. 気象・路面情報を集める
  2. 出動を判断する
  3. 車両・人員を配置する
  4. 現地へ移動する
  5. 除雪する
  6. 作業を記録する
  7. 苦情・未処理・故障へ対応する

となる。

このうち1、2、3、6はデジタル化の余地が大きい。

4、5、7には現地性が強く残る。

省人化の成果を測るなら、「除雪DXを導入した」ではなく、どの工程で何時間・何移動を減らしたのかを見る必要がある。

ごみ収集も、配車と収集は別工程である

2026年度の横手市では、家庭系の燃やすごみはステーション方式で週2回収集され、委託収集が中心、一部直営という体制である。

ここでもデジタル化できる部分はある。

  • 収集ルートの最適化
  • 車両位置の把握
  • 収集漏れの記録
  • 集積所情報の管理
  • 問い合わせ受付
  • 契約・実績集計

などだ。

しかし、ごみを物理的に回収する工程は残る。

人口が減ってごみ量が減っても、住民が広い地域に残る限り、車両が到達する必要のある場所は同じ速度では減らない可能性がある。

だからごみ収集で見るべきなのは、単なる処理量だけではない。

デジタル化によって、

  • 走行距離が減ったか
  • 無駄な往復が減ったか
  • 収集漏れが減ったか
  • 配車担当者の時間が減ったか
  • 現地作業者一人あたりの負担がどう変わったか

まで見る必要がある。

森林や土地管理では「現地へ行く回数」を減らせるかが重要になる

森林管理でも、所有者情報、地図、境界情報、施業履歴などのデータ整備は大きな省力化要素になる。

衛星画像、航空写真、GIS、センサー等を使えば、すべての場所を同じ頻度で人が歩いて確認する必要は減らせるかもしれない。

しかし、森林施業そのもの、境界確認、倒木処理、設備保守などは現地作業が残る。

横手市の資料では2023年度の林業関係作業員は76人とされる。

この76人が市内森林全体を管理しているという意味ではないが、現地作業能力が無限ではないことは明らかだ。

土地管理では、DXの価値を「管理を完全無人化したか」ではなく、

限られた現地作業者を、本当に行く必要がある場所へ集中できたか

で評価する方が実態に近い。

鳥獣対策でも、監視と捕獲は同じ仕事ではない

横手市鳥獣被害対策実施隊は2025年1月末で113人である。

鳥獣対策にICTを使えば、センサーやカメラ、通知機能等によって見回りや確認の一部を減らせる可能性がある。

だが、通知が来た後の対応まで自動で終わるとは限らない。

現地確認、捕獲、防除設備の設置、誘引物除去、安全管理など、人が現場へ出る工程がある。

したがって、「ICT機器を何台入れたか」だけでは担い手不足への効果は測れない。

見るべきなのは、

  • 見回りが何回減ったか
  • 移動距離がどれだけ減ったか
  • 一件の対応に必要な人時がどう変わったか
  • 誤検知や故障対応がどれだけ発生したか
  • 空いた時間を別の現地対応へ回せたか

である。

市役所も「職員を減らす」より「人を残す工程を選ぶ」段階に近い

横手市の定員適正化計画対象職員は、2006年度1,381人から2025年度840人へ減った。

約39%の減少である。

しかし2026年度から2030年度の目標は、840人から835人への5人減にとどまる。

ここから「行政は効率化をやめた」とは読めない。

人口が減っても、法令、福祉、災害、インフラ、地域局、調達などの仕事は人口と同じ割合では消えない。

今後の行政DXで重要なのは、職員数を機械的に減らすことではなく、

  • 申請受付
  • 転記
  • 照合
  • 定型通知
  • 集計
  • 予約
  • 内部照会

のような工程から人時を外し、

  • 災害対応
  • 現地確認
  • 複雑な相談
  • 制度判断
  • 施設・インフラ管理
  • 地域調整

のような、人が残る工程へ再配分できるかを見ることになる。

省人化は「人を減らした数」ではなく「残る仕事を維持できたか」で見る

人口減少地域では、省人化を単純な人員削減として評価すると危うい。

人を1人減らしたとしても、業務が別の職員、委託事業者、住民へ移っただけなら、地域全体の必要労働量は減っていない可能性がある。

逆に職員数が変わらなくても、1日2時間の転記作業をなくし、その時間を現地確認や相談対応へ回せたなら、実行能力は上がっている可能性がある。

そのため、省人化では少なくとも次を分けて測る必要がある。

指標見ること
処理人時事務・判断に何時間必要か
移動現地訪問回数、走行距離、移動時間
現地作業実作業時間、必要資格、必要人数
例外処理AI・自動化から人へ戻る案件
保守機器・システムの故障対応、教育
委託直営から外部へ移った作業量と費用
再配分省けた時間を何へ使ったか
結果未処理、待ち時間、品質、安全性がどう変わったか

DXの導入件数は、この表の入口にすぎない。

横手で必要なのは「現場をなくすDX」より「現場へ人を残すDX」

雪、ごみ、道路、森林、土地、福祉、災害。

横手の生活を支える仕事には、地理と現場から逃れにくいものが多い。

だから、すべてを無人化することを前提にする必要はない。

むしろ、情報収集、転記、集計、定型判断、移動前の確認をできるだけ軽くし、限られた人を現場へ残すことが重要になる。

人口が減った後も地域機能を維持するには、

人がやらなくてよい工程を減らし、人にしか残せない工程へ人時を寄せる。

省人化の成果は、その再配分まで追って初めて見える。