横手の人口が減ると、住宅を使う人、農業をする人、地域で作業を担う人も減っていく。

しかし、人が減った瞬間に家や土地や森林が消えるわけではない。

空き家は残る。建物を壊しても土地は残る。農家が離農しても農地は残る。森林所有者が市外に移っても森林は残る。

そのため、人口減少後の横手では「何人住むか」だけではなく、残った土地と建物を誰が管理するかが大きな論点になる。

空き家は「住宅在庫」だけではなく管理対象でもある

横手市が把握する空き家は、2025年3月末時点で1,500棟を超える。

一方、2023年住宅・土地統計調査では横手市の空き家は4,590戸とされる。

この二つは定義と把握方法が異なるため、単純比較や合算はできない。

ただし共通しているのは、空き家が例外的な少数ではなく、地域管理の対象として無視できない規模になっていることだ。

空き家には、売る、貸す、使う、管理を続ける、解体するという複数の状態がある。

そして解体しても問題が完全に消えるわけではない。

2026年9月2日時点で、市が空家等除却補助後の公共利用可能地点として掲載している跡地は23地点ある。

これは市内すべての解体跡地ではないが、建物が消えた後にも土地利用と管理が続くことを分かりやすく示している。

雪押し場、駐車場、地域の憩いの場などに使うなら、その土地には次の管理主体が必要になる。

つまり、

建物を除却することと、管理責任がなくなることは別だ。

農家が減っても、農地は同じ速度では消えない

2020年の横手市では、自営農業に主として従事した世帯員数は7,026人だった。

このうち60歳以上は5,334人で、約76%を占める。

これは「近いうちに5,334人全員が離農する」という意味ではない。

ただし、農業の現場を高い年齢層が大きく支えていることは確認できる。

ここで重要なのは、農業者数と農地管理を分けて考えることだ。

農業を辞める人が出ても、その田畑は自動では消えない。

誰かが引き受ける、貸す、集約する、作業だけ受託する、共同で水路や農道を管理する、あるいは別用途への変更を検討する必要がある。

農地では収穫作業だけでなく、草刈り、水路、農道、畦畔などの管理もある。

経営面積を大規模経営体へ集めても、土地が飛び地のままなら移動時間が残る可能性がある。

そのため、単に「一経営体あたり面積が増えた」だけでは、地域全体の管理が効率化したとは判断できない。

森林はさらに「所有」と「作業」が離れやすい

横手市の森林面積は2023年度末等で37,623ha。そのうち私有林は29,442haである。

私有林のうち、市外所有者分の面積割合は28.5%とされる。

市外に住んでいるから管理していない、という意味ではない。

ただ、所有者の住所と森林の場所が離れるほど、所有者本人が日常的に現地を確認することは難しくなりやすい。

一方、同じ資料に掲載される林業関係従事者は92人、作業員は76人である。

もちろん、この76人だけで横手市内すべての森林を管理しているわけではない。

森林所有者、森林組合や事業者、市、その他の関係者がそれぞれ役割を持つ。

だから森林では、少なくとも次を分けて見る必要がある。

  • 誰が所有しているか
  • 誰が境界や状態を把握しているか
  • 誰が施業計画を立てるか
  • 誰が現地作業をするか
  • 誰が費用を負担するか
  • 所有者が管理できない場合に誰へ役割が移るか

2024年度には森林経営管理事業の決算額として62,185,000円が記録されている。

人口減少下の森林管理は、民間の林業だけでなく、制度を通じた管理主体の再編も含めて追う必要がある。

鳥獣対策は「土地管理」と接点を持つが、単純な因果ではない

鳥獣対策も担い手の問題を抱える。

横手市鳥獣被害対策実施隊は、2014年4月の161人から2025年1月末には113人になっている。

48人、約29.8%の減少だ。

現行計画でも新規隊員の確保が取組に位置付けられている。

ただし、「実施隊員が減ったから鳥獣被害が増えた」とは言えない。

鳥獣被害は動物の個体数、餌、気象、農作物、土地利用、人の活動など複数の条件に左右される。

同様に、「空き家や耕作放棄地が増えたからクマが出る」と直接結論することもできない。

それでも土地管理と鳥獣対策には接点がある。

対策は捕獲だけではなく、巡回、放任果樹等の誘引物除去、緩衝帯管理、電気柵の設置・維持など、現地で人が動く作業を含むからだ。

つまり鳥獣対策でも、問題は単純な「動物の数」ではなく、誰がどの土地で何の作業をするかへ広がる。

四つの分野で共通するのは「管理主体の移動」

空き家、農地、森林、鳥獣対策は制度も作業もまったく異なる。

これらを一つの管理市場や作業量として合算することはできない。

それでも、人口減少下では共通する問いが出てくる。

対象利用・所有実際の管理管理主体が変わる例
空き家所有者点検、除雪、草木、修繕、除却管理業者、支援法人、行政制度
農地所有者・耕作者耕作、草刈り、水路、農道担い手農家、法人、共同管理、作業受託
森林所有者調査、境界、施業、巡回林業事業者、森林経営管理制度、市等
鳥獣対策地域・農業者等捕獲、巡回、防除、誘引物管理実施隊、資格者、地域、行政、事業者

共通しているのは、所有している人と、実際に管理する人が同じとは限らなくなることだ。

人口が多かった時代には、所有者本人、家族、近隣住民が暗黙に担っていた作業が、人口減少と高齢化によって続けにくくなる。

そのとき管理は、

  • 大規模な担い手へ集約する
  • 作業だけ外部へ委託する
  • 法人・地域組織で共同化する
  • 行政制度を通じて管理権を移す
  • 建物を除却する
  • 土地利用そのものを変える

といった形へ移っていく。

重要なのは、管理対象が減ったかだけでなく、管理主体がどこへ移ったかを追うことである。

「管理する人がいない」を全部行政へ戻すこともできない

管理主体が減れば、行政が介入する場面は増えうる。

しかし、だからといって空き家、農地、森林を行政が直接すべて管理することは現実的ではない。

行政自身も人口減少下で人員・財源の制約を受ける。

そのため必要になるのは、行政が直接作業するかどうかではなく、

  • 所有者へ管理を促す
  • 市場へ流通させる
  • 管理を受託する事業者を育てる
  • 地域共同管理を支える
  • 権利関係を整理する
  • 管理権を集約する制度を使う
  • 危険度や公共性に応じて行政介入を優先する

といった仕組みの設計になる。

2026年には横手市で空家等管理活用支援法人が指定されている。

これも、行政がすべて直接管理するのではなく、管理・活用を担う主体を増やす方向の一例として読むことができる。

ただし、法人を指定したこと自体を空き家問題の解消実績とはみなせない。実際にどの業務を何件担ったのかは別に観測する必要がある。

これから重要なのは「対象数」より「管理可能性」

人口減少を考えるとき、空き家戸数、農家数、森林面積、実施隊員数といった数字は重要だ。

しかし、それだけでは将来の維持可能性は分からない。

次に見るべきなのは、管理可能性だ。

  • 管理対象がどこにあるか
  • 所有者は誰か
  • 実際の作業者は誰か
  • 一人・一事業者が何件・何ha・何地域を担えるか
  • 移動時間はどれくらいか
  • 共同化や集約が可能か
  • 委託市場が成立するか
  • デジタル化で減らせる作業と現場に残る作業は何か
  • 管理できなくなった場合、どの状態を許容し、どこから介入するか

この観測がないまま「人口が減れば管理対象も自然に減る」と置くと、将来の地域維持負担を過小評価する。

逆に「今ある土地や建物を全部同じ形で維持する」と置けば、人口減少後の再編余地を見失う。

横手で必要なのは、全部維持か全部放棄かという二択ではない。

誰が、何を、どこまで管理するかを、土地・建物ごとに組み替えていくことである。