人口が減ると、学校だけでなく学校を支える施設も再編される。
横手市では学校給食センターがその実例になっている。
横手・平鹿・雄物川・大森の4センター体制から、2023年度に横手・平鹿・雄物川の3センター体制へ再編された。
施設を一つ減らしたから、給食を作る仕事が一つ分なくなったわけではない。
大森地域の児童生徒にも給食は必要だ。そのため調理能力を残るセンターへ寄せ、設備を移し、給食を学校まで運ぶ必要がある。
さらに2023年4月からは、平鹿・雄物川でも調理・配送等の民間委託が始まった。
この案件は、閉じた施設で実際に減った費用、受け皿で増えた処理量、移行投資、外部委託を同じ再編として追えるところまで数字が揃ってきた。
4センターから3センターへ再編した
再編前は、
- 横手学校給食センター
- 平鹿学校給食センター
- 雄物川学校給食センター
- 大森学校給食センター
の4か所だった。
2023年度からは横手・平鹿・雄物川の3センターになった。
旧大森学校給食センターは再編後に遊休施設となり、横手市は利活用事業者を募集している。
行政上の計画だけではなく、実際に大森センターの給食機能が止まったところまで確認できる。
旧大森センターの施設費は、機能停止後に大きく減った
旧大森学校給食センターの施設カルテには、給食機能が残っていた2022年度と、その後の維持管理費が載っている。
| 年度 | 施設維持管理費 | 状態 |
|---|---|---|
| 2022 | 25,405,158円 | 給食機能稼働最終年度 |
| 2023 | 615,604円 | 給食機能停止後 |
| 2024 | 75,448円 | 給食機能停止後 |
2022年度から2023年度では24,789,554円、97.6%減。
2022年度から2024年度では25,329,710円、99.7%減になる。
ここは「施設を止めると、その建物側の支出が減った」という実績として確認できる。
ただし、この99.7%を学校給食再編全体の削減率にはしない。
旧大森センターで作っていた給食は消えておらず、残るセンターで調理して配送する必要があるからだ。
給食機能が止まっても、旧施設の出口処理は別に残る
旧大森学校給食センターは給食機能停止後、利活用事業者の公募対象になった。
ただし、2023年度の行財政改革実績では、同じ記述にある旧睦合小学校については貸付決定まで明記される一方、旧大森学校給食センターについては貸付決定が明記されていない。
ここから「応募がなかった」「契約が不成立だった」とは推定しない。確認できるのは、その資料では貸付決定まで追えないということだけである。
さらに2026年3月31日時点の財産経営推進計画ローリングでも、旧大森学校給食センターは「統合減」の施設として掲載が続いている。
したがって、
給食機能を止める
↓
施設維持費が大きく下がる
ところまでは実績で確認できるが、
売却・貸付・転用・解体などで
資産管理上の出口まで完了する
ことは別の段階である。
公共施設再編では、サービス機能の統合と旧建物の処理を同じ「閉鎖」でまとめない方がよい。
受け皿の雄物川センターは、食数が大きく増えた
再編前後の雄物川学校給食センターを同じ中事業決算で比べる。
| 年度 | センター事業費 | 年間提供食数 | 提供校 |
|---|---|---|---|
| 2022 | 61,667千円 | 100,642食 | 2校 |
| 2023 | 74,392千円 | 170,462食 | 3校 |
| 2024 | 74,448千円 | 167,921食 | 3校 |
2022年度から2023年度で、事業費は12,725千円、約20.6%増えた。
年間食数は69,820食、約69.4%増えている。
大森側の機能を受けるセンターで、処理する給食の量が実際に増えたことが分かる。
ただし「雄物川の費用が12,725千円増えたのは大森統合のせい」とは断定しない。
提供校、児童生徒数、物価、食材費、委託範囲なども変わっている。
移行前に雄物川側へ8,456万円を投じている
2022年度の雄物川学校給食センターでは、再編関連を含む建設・機器更新等として84,560千円が決算されている。
内訳には、
- 調理機器等の移設 866千円
- 受水槽関係の設計等 594千円
- 研修室空調設備工事 1,298千円
- 受水槽更新工事 6,798千円
- 調理機器等備品更新 73,991千円
- 事務室空調設備更新工事 807千円
- 調理室床改修工事 206千円
がある。
当初予算89,683千円だけでなく、実績として84,560千円まで確認できた。
ただし、すべての更新を大森統合だけのための費用とはしない。受水槽や空調等には通常更新の要素もあり得る。
統廃合では「閉じる施設の費用」だけでなく、残す施設を受け皿へ変えるための一時投資がある。
同じく委託化した平鹿は、違う方向に動いた
2023年度から調理・配送等を新たに民間委託したのは雄物川だけではない。平鹿学校給食センターも同じだ。
平鹿は大森センターの給食機能を受け入れたセンターではない。
同じ期間を見ると、
| 年度 | 平鹿センター事業費 | 年間提供食数 |
|---|---|---|
| 2022 | 93,533千円 | 193,711食 |
| 2023 | 80,094千円 | 192,281食 |
| 2024 | 78,988千円 | 181,680食 |
2022年度から2023年度で、平鹿の事業費は約14.4%減、年間食数は約0.7%減だった。
一方、雄物川は事業費約20.6%増、年間食数約69.4%増だった。
この違いから「雄物川の増加分は大森統合の因果効果だ」とまでは言えない。
施設規模、設備、食数、提供校、食材構成は違う。
ただし、少なくとも委託化した全センターが同じ方向に動いたわけではないことは分かる。
平鹿は政策効果を測る厳密な対照群ではなく、同時期の変化を確認する補助系列として使う。
調理と配送の民間委託も同時に広げた
2023年4月から、平鹿・雄物川でも調理・配送等の民間委託が始まった。
2026年時点の市の案内では、
- 横手: 調理はメフォス、運搬はヨコウン
- 平鹿: 調理・配送はメフォス
- 雄物川: 調理・配送はメフォス
となっている。
給食センターの数を減らすだけでなく、直営で持つ業務の範囲も変えている。
市全体では、総事業費が減る一方で委託費が増えた
行政評価の同じ系列で2022年度から2024年度を見る。
| 年度 | 学校給食事業費 | 調理等業務委託費 | 状態 |
|---|---|---|---|
| 2022 | 576,152千円 | 143,810千円 | 決算 |
| 2023 | 490,631千円 | 230,654千円 | 決算 |
| 2024 | 435,684千円 | 234,289千円 | 決算 |
| 2025 | 456,292千円 | 239,654千円 | 計画 |
| 2026 | 439,959千円 | 235,389千円 | 計画 |
3センター再編と同時期に、市全体の学校給食事業費は減った。
一方、調理等業務委託費は増えた。
2024年度の調理等業務委託費234,289千円のうち、217,990千円は債務負担で契約された調理・運搬等の業務だった。
ここから、再編後の給食提供が外部委託を含む運営構造として定着していることは確認できる。
しかし、市全体事業費の減少を再編・委託化だけの成果とはしない。
食材費、人件費、設備更新、提供食数、給食費の会計処理など複数条件が動いている。
次期契約も複数年・億単位で続く
2025年度の監査資料では、「横手市学校給食センター調理及び配送等業務委託」の契約額727,716千円が確認できる。
2026年度予算の債務負担行為では、2026年度から2028年度までの同業務に757,076千円の限度額が設定されている。
さらに「横手学校給食センター配送等業務」には同期間128,231千円の別枠がある。
これらは状態を分ける。
- 727,716千円: 契約額
- 757,076千円: 債務負担行為限度額
- 128,231千円: 別の債務負担行為限度額
契約総額を3で割って単年度実績にはしない。
また、限度額を実際の支払額とはしない。
施設を一つ減らした後も、給食を作り、運ぶ仕事は複数年契約として残る。
2026年の3センターは5,227食を提供している
2026年4月1日時点の提供食数は、
- 横手 3,493食
- 平鹿 911食
- 雄物川 823食
で、計5,227食になる。
調理能力は、
- 横手 4,500食
- 平鹿 1,400食
- 雄物川 1,200食
である。
能力値と現在食数に余裕があるからといって、さらに統合できるとは言えない。
給食には、
- 学校ごとの配送時間
- 調理終了から喫食までの時間
- アレルギー対応
- 災害・設備故障時のバックアップ
- 配送車両
- 冬季道路条件
といった制約がある。
給食センター統合は物流再編でもある
学校が市内の広い範囲に残る限り、給食を各校へ届ける配送網は必要になる。
調理拠点を減らすほど、施設配置の議論は物流の議論へ近づく。
分散調理施設
↓ 集約
少数の調理拠点
+
配送・回収
+
車両
+
冬季道路
地図側では配送先と道路・到達性を扱える。
記事・知識側では契約額、提供食数、センター別費用、施設費を持つ。
座標やルートを記事データへ二重保持しない。
地場企業から見ると、公共施設再編は仕事の種類を変える
旧センター側では、
- 設備保守
- 修繕
- 清掃
- 日常運転
などの需要が減る可能性がある。
一方、残るセンターでは、
- 改修
- 調理機器更新
- 設備保守
- 調理委託
- 配送
が必要になる。
旧施設についても、解体、売却、貸付、維持管理、利活用という仕事が残る。
公共施設再編は公共需要を単純に消すのではなく、仕事の発生場所と業種を変える。
ここまでで「減った側」と「移った側」がかなり見える
| 層 | 確認できたこと |
|---|---|
| 閉鎖施設 | 旧大森の維持管理費25.4百万円→0.62百万円→0.08百万円 |
| 受け皿 | 雄物川の年間食数100,642→170,462→167,921食 |
| 受け皿費用 | 雄物川のセンター別事業費61.7→74.4→74.4百万円 |
| 移行投資 | 雄物川の建設・機器更新等84.56百万円 |
| 比較系列 | 平鹿は2022→2023で事業費-14.4%、食数-0.7% |
| 委託 | 2024年度の調理・運搬等債務負担分217.99百万円 |
| 次期契約 | 調理・配送等契約727.716百万円 |
| 旧施設の出口 | 2026年3月末時点でも「統合減」として施設一覧への掲載が継続 |
それでも再編全体の純削減額はまだ出さない。
特に不足しているのは、
- 大森地域分だけの配送距離・車両・費用
- 雄物川側の光熱・燃料・修繕費の費目別増分
- 市職員配置・人件費の再編前後
- 旧大森施設の最終処分・利活用費
である。
現時点の結論
旧大森学校給食センターを閉じたことで、その建物側の維持管理費が大きく減ったことは実績で確認できる。
同時に、受け皿の雄物川センターでは提供食数とセンター別事業費が増え、再編前に設備移設・更新投資が行われ、調理・配送の外部委託も拡大した。
さらに、給食機能を止めても旧施設の資産処理が同時に完了するわけではなく、2026年3月末時点でも追跡対象として残っている。
したがって、
「施設を閉じたから99.7%安くなった」でも、「外注費が増えたから再編は失敗した」でもない。
閉鎖施設、受け皿施設、移行投資、委託、配送、旧施設の出口を同じ案件として追って初めて、統廃合の純費用を評価できる。
Sources
yokote-school-lunch-centers-r8: 横手市教育委員会「学校給食センター」yokote-school-lunch-reorganization-r5-mayor: 横手市「令和5年6月横手市議会定例会 市長所信説明」yokote-school-lunch-r4-budget: 横手市「令和4年度当初予算の概要」yokote-school-lunch-four-centers-public-assets: 横手市「財産経営推進計画見直し資料 その他教育施設」yokote-school-lunch-old-omori-reuse: 横手市「旧大森学校給食センターの利活用事業者を募集します」yokote-administrative-evaluation-r6-school-lunch: 横手市「行政評価結果(施策評価・評価対象令和6年度)」yokote-school-lunch-r6-results: 横手市「令和6年度における主要な施策の成果を説明する書類」yokote-school-lunch-r7-audit: 横手市監査委員「令和7年度 定期監査報告書(第3期)」yokote-school-lunch-r8-debt-obligation: 横手市「令和8年度 横手市一般会計予算(債務負担行為)」yokote-old-omori-school-lunch-facility-card-r7: 横手市「施設カルテ 旧大森学校給食センター」yokote-school-lunch-r4-results: 横手市「令和4年度における主要な施策の成果を説明する書類」yokote-school-lunch-r5-results: 横手市「令和5年度における主要な施策の成果を説明する書類」yokote-school-lunch-r6-center-results: 横手市「令和6年度における主要な施策の成果を説明する書類(給食センター別実績)」yokote-old-omori-reuse-call-2024: 横手市「旧大森学校給食センターの利活用事業者を募集します」yokote-administrative-reform-r6-result-assets: 横手市「行財政改革実績(公共資産等)」yokote-public-assets-rolling-r7: 横手市「財産経営推進計画ローリング」