公共サービスを民間委託すると、「何人分の仕事を減らせたのか」が気になる。
横手市の学校給食でも、2023年度から平鹿・雄物川学校給食センターの調理業務が民間委託へ移り、配送も含む委託体制が続いている。
では、市の職員は何人減ったのか。
今ある公開資料だけで「○人削減」と答えるのは危険だ。
委託前に市側で働いていた調理員・運転手の人数は一部確認できる。一方、委託後に民間事業者が何人配置しているかは同じ資料系列では確認できない。
行政の人数が減ったことと、給食を提供するために必要な総労働量が減ったことは別である。
2020年度には、3センターで少なくとも26人の調理・運転職が確認できる
2020年度予算の既存事業見直し資料には、勤務時間を1日30分短縮する対象者として、センターごとの人数が載っている。
| センター | 運転手兼調理員 | 調理員 | 確認できる合計 |
|---|---|---|---|
| 平鹿 | 1人 | 7人 | 8人 |
| 雄物川 | 2人 | 7人 | 9人 |
| 大森 | — | 9人 | 9人 |
| 合計 | — | — | 26人 |
これは重要な直営時代のスナップショットになる。
ただし26人を「当時の学校給食職員総数」とはしない。
資料に載っているのは、勤務時間短縮の対象として明記された運転手兼調理員・調理員である。栄養教諭、事務職、別の配送人員等をすべて含むとは限らない。
さらに2020年の数字なので、委託直前の2022年度まで同じ人数だったとも限らない。
2020年度は、人数ではなく勤務時間を削る改善も行っていた
同じ資料では、平鹿、雄物川、大森で調理員等の勤務時間を1日30分短縮する見直しが行われている。
行政が人手不足やコスト削減へ対応するとき、選択肢は民間委託だけではない。
- 人数を変える
- 1人あたり勤務時間を変える
- 作業工程を変える
- 設備を更新する
- センターを統合する
- 外部委託する
といった方法がある。
横手の学校給食は、その後このうち複数を組み合わせた。
2022年度に、委託化と3センター再編の準備へ入った
2022年度の学校給食課方針書では、
- 調理業務委託事業者の選定
- 業務委託契約の締結
- 給食センター施設改修
- 調理機器購入
- 2023年4月からの移行準備
が重点項目として置かれている。
年度末の総括では、2023年度から平鹿・雄物川センターの調理業務が民間委託になることも明記されている。
つまり、センター再編と人員の外部化は別々の時期に偶然起きたのではなく、同じ移行計画の中で進められた。
委託後も、給食を作る人は必要である
2026年現在、横手市の案内では、
- 横手: 調理はメフォス、配送はヨコウン
- 平鹿: 調理・配送はメフォス
- 雄物川: 調理・配送はメフォス
となっている。
調理と配送の仕事そのものは残っている。
雇用主が横手市から民間事業者へ移った部分がある、と考える方が正確だ。
ここで行政職員数だけを見て「人手が不要になった」と書くと、委託先で働く人を消してしまう。
現在の学校給食課は5人だが、26人とは比較できない
令和7年度の監査資料では、学校給食課の配置は、
- 管理職 1人
- 学校給食係職員 2人
- 会計年度任用職員 2人
の計5人とされている。令和6年度も同じ配置だった。
一見すると、2020年度に3センターで確認できた26人から、現在5人へ減ったように見える。
しかし、この差し引きはしない。
26人は平鹿・雄物川・大森センターの調理・運転職の一部であり、5人は学校給食課の行政側職員だからだ。
委託後のメフォスやヨコウンの従業員は5人に含まれない。
母集団が違う。
7億円台の契約は、人をゼロにした費用ではない
2025年度の監査資料では、次期「横手市学校給食センター調理及び配送等業務委託」の契約額は727,716千円と確認できる。
複数年契約なので、これを1年分の費用にはしない。
この契約は、調理や配送など、人が実際に行う業務を外部から購入する契約でもある。
自治体側の給与費が減ったとしても、サービス提供の労働コストが消えるわけではない。
直営人件費 → 委託料
へ費目が移る部分がある。
ただし委託料には、人件費だけでなく事業者の管理費、採用、教育、利益、リスク負担等も含み得るため、契約額をそのまま「民間人件費」ともしない。
本当に知りたいのは「市職員が何人減ったか」だけではない
委託化の効果を測るなら、少なくとも次を分けたい。
| 観測項目 | 何が分かるか |
|---|---|
| 市の調理員・運転手人数 | 行政が直接雇用する人数の変化 |
| 市の総労働時間 | 直接投入する労働量の変化 |
| 委託先の配置人数 | 外部へ移った労働量の入口 |
| 委託先の総労働時間 | サービス全体で必要な人手 |
| 市人件費 | 行政会計上の直接人件費 |
| 委託料 | 外部化後の行政支出 |
| 提供食数 | 仕事量の分母 |
| 欠員・募集状況 | 人員確保の難しさ |
| 給食停止・遅延等 | サービス品質・安定性 |
人数だけでなく、1,000食あたり労働時間や費用まで取れれば比較しやすくなる。
省人化と外部化を分ける
例えば、直営10人の仕事を民間10人がそのまま担えば、行政の直接雇用は10人減るが、社会全体の必要人員は減っていない。
直営10人の仕事を設備改善や工程改善によって民間7人で担えるなら、省人化も起きている可能性がある。
逆に、安定運用のため民間側で12人必要になることもあり得る。
現時点の公開資料では、この違いを判定できない。
したがって、このサイトでは学校給食の民間委託を「26人分の省人化」とは書かない。
地場企業にとっては、行政雇用が民間受注へ変わる
民間委託は地域の仕事の消滅とは限らない。
行政が直接雇う仕事が、
- 給食調理会社
- 物流会社
- 設備保守会社
などの受注へ移る。
地場産業を見る場合、行政職員数だけでなく、自治体発注がどの業種へ移ったかも追う必要がある。
給食配送では現在ヨコウンが横手センターの運搬を担っている。
公共施設の再編が物流需要を生む、という別の記事とも接続する。
次に必要なのは、委託先の「人数」と「時間」
現時点で不足しているのは、
- 委託直前2022年度の市側調理・運転人員
- 2023年度以降の委託先調理員数
- 配送員数
- センター別総労働時間
- 市職員から他部署へ異動した人数
- 委託前後の市人件費
である。
これが揃えば、
行政の直接雇用が何人減ったか
だけでなく、
同じ給食を提供するのに地域全体で何人・何時間必要になったか
まで比較できる。
現時点の結論
横手の学校給食では、直営時代に平鹿・雄物川・大森の3センターだけで少なくとも26人の調理・運転職が資料上確認できる。
その後、3センター再編と平鹿・雄物川の民間委託が実施された。
現在の行政側学校給食課は5人だが、委託先人員を含まないため、26人との差を人員削減数とはできない。
行政の人員削減、民間への雇用移転、サービス全体の省人化は別の指標である。
この3つを分けて追う。
Sources
yokote-school-lunch-r2-cost-review: 横手市「令和2年度 標準事業における主な既存事業の見直し状況一覧」yokote-school-lunch-r4-policy: 横手市「令和4年度 教育指導部 学校給食課の方針書」yokote-school-lunch-r7-policy: 横手市「令和7年度 教育指導部 学校給食課の方針書」yokote-school-lunch-r7-audit-staffing: 横手市監査委員「令和7年度 定期監査報告書(第3期)」yokote-school-lunch-centers-r8: 横手市教育委員会「学校給食センター」yokote-school-lunch-r7-audit: 横手市監査委員「令和7年度 定期監査報告書(第3期)」